第15話 ギルマス ~視点①~

レインがレンと採取に行ってからどれくらいたったのだろうか?


事務作業も今日の分は終わったが、あの子のことが気になって気になって仕方がない。


俺の子になるんだから守ってやらないと。


「早く帰って来てほしいんだがな」


木の根に足を引っ掛けて転んでねぇか心配だ。それに、またサラマンダーに出くわしてたら……だが、サラマンダーみてぇな上級モンスターは稀にしか出現しないはず。


まあ、この前のことは出現記録には記入したが、何も起こらなければいいんだが。


そうこうしている間にギルド内で「レイン」という言葉が聞こえ、俺は急いで部屋からドタドタと大きな足音を立てて出たが、そこにはレンに抱っこされたレインの姿があった。


「レインは疲れて寝ちまったのか。


可愛い寝顔をしやがって」


だが、レンの表情が少し曇っていたことが気になった。まさか、採取の時に何かあったんだろうか?


「レン、採取の最中に何があった?」


暖かい毛布にレインを包み、赤子のように横抱きにしてレンは椅子に腰をかけた。


「なあ、これを見てくれ」


少し古びてはいるが、ダガーナイフ全体に特殊な模様や魔力が込められているが、気になるのはダガーナイフに着いている血だ。


「こ、この血はなんだ!


それにレインの手にも血がついてるじゃねぇか!」


「それはレインが……魔物を刺した時の血痕だ。


刺した感触が手に残っていたんだろう、そのダガーナイフと手に付着した血を震えながら見ていた」


こんな小さな幼子なんだ、刺した恐怖は凄まじいだろうに。


やはり森に行かせるべきではなかった、無理にでも止めていれば……。


「レインは驚いた拍子に刺してしまったんだろう。


レン、この子を守ってくれて感謝する。ありがとう!」


レンは眠るレインの寝顔を見ながら「護衛は増やすべきだ!」と、真顔で言い切った後、今回の採取だけで魔物に何度も出くわしたことを報告した。


「今日の採取だが、レインが行く場所で何度も魔物に出くわした。


3匹のツノブラックラビット、6匹のラット、10匹のウルフの群れにだ。まだ初級モンスターだったが、これが上級のモンスターで俺1人で戦うだけなら倒せるだろうが、レインを無傷で守りながらだと、俺でも少し苦戦するだろう」


魔物の報告とこれからのことを考えての意見を伝えたレンは、眠るレインの頭をソッと優しく撫でていた。




武器・防具屋のアドルフは、そのダガーナイフを食い入るように見つめていると、この小さなダガーナイフに神獣の魔力が込められていることが分かったようだ。


「こ、これは【神獣剣】ではないか!


まさか、レンが見つけたのか?」


真剣な顔でレンを見るアドルフは、レンの言葉を待っているようだ。


「……見つけたのは……レインだ」


「なん...だと、レインが見つけたのか?」


「あぁ、レインだ」


アドルフはテオルの方を向き、今まで見たことのない真剣な顔と声色で言葉を発した。


「【神獣剣】を見つけられるのは神獣の主だけだ。


この言葉の意味が分かるな?


これからはレインの護衛が必要になると言うことだ!」


俺は椅子に座りレインを見て言った。


「レインが神獣様の……」


「なに辛気臭い顔をしてるのよ!


ギルマスはレインの父親になるんでしょ?


だったら、しっかりしなさいっっ!!」


と言って『バシンっっ!!』と背中をぶっ叩いたライラ、それを見たローランは笑っていた。


仲間からのカツで気持ちが固まった。


(俺はレインを養女にし、何不自由ない生活をさせると決めたんだ!)


そう心の中で誓い「レインを寝かせて来る」と言って、レンからソっと優しくレインを抱きかかえ、部屋へと移動し寝かせた。

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