世界の理(前編)

サザンカが下界の創造をしてから数分後。


四人はベロニカの造った噴水広場に来ていた。

その噴水広場には庭用のテーブルと椅子が造られており、その椅子に四人は腰かけていた。


「「「……。」」」


「……。」


「…サザンカちゃん…何か言い残した事はあるかしら…。」


「ベロニカ姉様…それを言うなら、思い残す事はないかしら…よ。」


「二人とも…それではサザンカが絶命するみたいではないか…。

責めるつもりはないのだから、そぅいじってやるでない…。」


「はぁ…まぁ、いいわ。

サザンカちゃん…力を使うのがへたっぴさんだったのね…。」


「それは違うわ、姉様…。

愚直ぐちょくなだけよ。」


「…すみませんでした…。」


「……サザンカ…創造をするのは大いに構わんが…もう少し力の使い方を会得せねばな…。

怒っていると言う訳ではないが…。


まぁ、力を使い始めてまだ間もないからな…今回は致し方ない。

この星やそなた達のエネルギーが回復するまで、しばし休息としよう。」


「そうですわね…。


でも、アマノ様…休息もいいですが、一つ大切な事を先にしてしまいましょう。


世界のことわり…まだ決めていませんわ。


私達の力…おそらく、まだ用途など性質が変化しますわ。」


「うむ…さすがマツリカ…。

気付いていたか…。」


「??

なになに、どういう事?マツリカちゃん、アマノん。」


先程の力の配分を誤った件で肩を落とし反省しているサザンカをよそに、マツリカとアマノミコトは話を進め始めた。


その話の中で、マツリカの言葉に身を乗り出し、耳を傾けるベロニカ。


「姉様…説明しますので、落ち着いてください。


サザンカも…ちゃんと聞くのよ。


私達の力は、正直…予想以上に強い力だわ。

決めたのは私達だけど…それでも…強すぎる…。


創造…それは、思い描いた物すべてを造れるわ。」


「??

人以外造れると言うのは、確認済でしょ?」


「それだけじゃないわ…姉様。


先程の姉様がいい例ですわ。」


「「???」」


マツリカの説明が始まると、肩を落としていたサザンカは顔を上げ、説明を聞く姿勢を見せた。


そうして皆の視線を集めながらも説明を進めるマツリカ。


説明がいまだピンと来ていないベロニカとサザンカは、言葉の意味を理解しようと、先程までの自分達の行動を思い返した。


考え込む二人を前に、マツリカは一つ小さくため息を吐き、話を再開した。


「ベロニカ姉様の力は…火、水、風を生み出し、なおかつ創造も出来る。


『それだけ』だったはずなのに、いざ力を使い始めた姉様は、自分で生み出した火や風の温度を『操れた』と言ったわ。


自分達の考え方、使い方次第でどんな風にも創造が働く。


今は出来ないけど…『自然まで操れるようになるかもしれない』という事ですわ。

望めば他の事も…何でも出来てしまう…。


それはつまり、神の領域…いえ、そもそも女神なのだから、当然と言えば、当然ですが…私達の一存で秩序が乱れるという事…。


せっかくこの世に生まれ、楽しく生活できる基盤を作り始めたのに、それを自らの手で破滅へと導いてしまう…。


そうなれば…世界の終焉しゅうえんよ。

誰も望まない…誰も楽しくない…絶望の世界…。


そんな世界の何がいいの…。」


「なるほど…強い力のせいで…見守ろうとしている万物の生活をおびやかし、破滅する…。


それは…嫌な事ね…。


いくら強い力を持っていても、誇示こじしたり、非道に使いたい訳じゃないわ…。

ただ、自分達も楽しく生きて、見守る万物も楽しく生きる…そんな明るい世界にしたいだけなのに…。」


マツリカの事細かな説明を聞き、アマノミコトは誇らしげな顔で何度も頷き、ベロニカは再び力について考え込む様子を見せた。


そんな中一人だけ、一瞬俯き考えたのだが、すぐに目を輝かせながら顔を上げた人物がいた。


「……ん~…たしかに嫌です…。


あ!!それなら!!


私の創造で、姉様二人にスキル『上限』付与!!

設定条件は、創造を発動した者にのみあり!女神に二言はなし!!!」


「「「…はーー?!」」」


「いやいやいや、話聞いてた?!


サザンカちゃん、そういうとこ!!

今まさに力の使い方について話し合っているの!!


勝手にスキル付与しないで!

それに、エネルギー空っぽなはずでしょ?!

なんで力使えているのよ!!」


「サザンカ…いい加減になさい。


今のは愚直ぐちょくでは済まないわ。」


「サザンカよ…今のは擁護ようごできぬ。」


「う…すみません…スキル取り消します…。


………あ、あれ?」


サザンカは先の事を深く考えずに、姉二人に手をかざし『上限』と言うスキルを付与してしまったのだった。


その事にはさすがの姉二人はいら立ちを覚え、アマノミコトは手に負えないと言ったような呆れた表情を浮かべた。


サザンカはまたも顔面が蒼白そうはくになり、姉二人に付与したスキルを取り消そうと慌てた様子で手をかざすのだが、何も起きる気配がない。


「「ま、まさか…。」」


「スキル…取り消せないです…。」


「「…はぁ~…ですよねぇ…。」」


「エネルギー不足ゆえか?

いや…この様子は、サザンカが付与したスキルは本人含め、我でも取り消せない仕様のようだな。


エネルギーは少しばかり回復しておる。

それでスキル付与が出来たのであろう…。


…やってしまったのはもぅ仕方ない…。

サザンカ…二人に付与したスキル…『上限』は、何の上限にするのだ?


『設定条件は、創造を発動した者にのみあり!』なのであろう?」


「サザンカ…お願い…お願いだから、ちゃんと考えてから決めてちょうだい。」


「(マツリカちゃんが二回もお願いを言ったわ…。)

そ、そうよ、サザンカちゃん、マシなの!せめてマシなのを!!」


姉二人の必死な懇願の様子にサザンカは、いつもより深く考え込んだ。


「う~~ん…上限…上限…。


力の…と思ったのですが…あ!!持てるスキルの上限!


皆等しくスキルを持てるとして、最大5つのスキルを持てると言うのにします!

さらに、『能力確認』スキル付与!!」


サザンカがそう発言すると、姉二人が光り輝いた。

その光はすぐに収まったが、姉二人は納得のいかない表情を浮かべていた。


「「だから!!そう簡単に何個もスキルを付与しないの!!

もっとちゃんと考えなさい!!」」


「ご、ごめんなさい~~~。」


「(…先が思いやられる。)

…はぁ。」


サザンカの行動に呆れ、うな垂れる三人。

こうして世界のことわりを決める会議は、まだまだ続くのだった。

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