神々の住居(前編)

一行がアマノミコトの住居を目指して歩いていると、ひらけていた風景から次第に通路を挟むように、両側が竹林と竹で出来た柵が立ち並ぶ場所へと移り変わり、そこを抜けた先に住居であろう建物がそびえ立っていた。


立派に並ぶ竹林の通路を、キョロキョロと驚きつつも興味津々に見ていた三人の女神だったが、住居らしき建物を見た途端、そのたたずまいにあっけにとられ、言葉を失った。


「これが我の住居だ。

ベロニカの、『大きくドドーンと住居を構えちゃいなさい』と言う言葉を参考に創造してみた。」


「これは…お寺なの?お城なの?

立派は立派だけど…二階建てなのか三階建てなのか怪しいし、横にも広いし…。

なんと言うか…すごい物を建てたわね…。


今通って来た通路も圧巻だけど、この建物も負けてないわ.....。」


「建物は二階建てだ。

瓦屋根が大きいから3階建てに見えるのだ。

あと、そう見えるように建ててみた。


あとは部屋数も多いし、会議室なり数多あまたの部屋がある。

よって、このように大きい建物になった。

一応、地球の建物を参考にしての創造だ。


ちなみに裏庭もあるぞ。」


「そ、そうなのですね…。

…その裏庭はどういう設計なのかしら。」


女神達が目の前の豪勢な建物に呆然と立ち尽くす中、アマノミコトはマツリカの言葉に応える為、皆を裏庭へと案内した。


「ここが裏庭だ。」


「これはまた…すごいわ。」


「えぇ…先程の通路や住居、そしてこの裏庭...地球の建物を参考にと言っていましたが、日の本ひのもとと呼ばれる国を参考にしたのですわね。

圧巻ですわ……。」


「すっごーーい!!大きな滝に、泉!


それに、あっちには池があって綺麗です!!

あの赤い橋や、石も素敵です!


一見、無造作に並んでいるようで、実は考えられて並んでいるんですよね!

わびさびと言うものですね!!」


「よく知っておるな、サザンカ。

まさにその通りだ。」


「アマノん…ほんと、すごいわね…。

創造神として威厳がある建物だわ…。」


「お見事でございます、アマノ様。」


「そう褒められると照れるではないか。

今後は、話し合いをする時などはこの場所に集まるとよい。


そうだな…我の城の名前は、蓬泉殿ほうせんでんとしよう。」


「いい名前ね!!

それじゃ、アマノんの住居も見た事だし、次行きましょう!!


次は私、ベロニカ姉様の紫焔殿しえんでんよ!」


ベロニカの意気揚々とした掛け声とともに、一行は蓬泉殿ほうせんでんを後にした。


ベロニカの後をついて行く形で皆がしばらく歩くと、蓬泉殿ほうせんでんの風景とはうって変わった風景に包まれ始めた。


「…ベロニカお姉様の住居…に向かっているのですわよね…。


なんだか暖かいですわ…。


まるで南の大陸にいるみたい…。」


「ふふっ、もう少しで着くって事よ。

そう言っている間に、ほら!


まずは、通路にとぉ~ちゃ~く!!」


ベロニカの住まいに向かう途中、こちらも通路を通るのだが、なんと、通路を挟むように人の背丈くらいの松明たいまつが規則的に立ち並んでいた。


ベロニカは再び奥に向かいながら歩き、皆もその後ろをついて行く。


「ねぇ、ベロニカお姉様、こんなにいっぱいの火があるのに、熱くないのはどうして?」


「いいところに気が付いたわね、サザンカちゃん。


創造をしている時に発見したのだけど、なんと私!少しだけなら火の温度や風の温度を操れるみたいなのよ。


そこで、風の温度を低くして、冷たい風をおこして、水を使ったら、びっくりな事に水が冷たく固まったの!


その固まった水を風で浮遊させているの。


小さすぎて見えないのだけど、この辺にも浮いているわよ。

それが肌について熱さをあまり感じないのよ。」


「……。

(生み出した風や水、火は操れずとも、温度は操れる…。

これは…今後、本人次第で少量の力でも、生み出した自然すら操れるようになるやも…。)」


「アマノん、どうかしたの?

難しい顔をして。」


「…いや、なんでもない。」


「そう?

じゃぁ、先へ進みましょう!!


いよいよお披露目!

ようこそ、私の紫焔殿しえんでんへ!!」


ベロニカ達が話しながら奥へ歩いていると、どうやら到着したらしく、そのたたずまいにまたも、サザンカやマツリカは唖然とした。


一方、アマノミコトは少し興味深そうに目を輝かせていた。


「……これは…私には理解できない造りですわ…。


なんと言いますか…男性が喜びそうな…風景ですわね。」


「なぁに言っているのよ、マツリカちゃん!!


私好みで、私なりの可愛いを詰め込んだのよ!!


風が爽やかに吹き、住居は岩づくりのゴツゴツした質感。

いかにも登山できます!みたいな作りよ。


その住居を囲むように左側には火山!!右側には清涼感漂う滝!!


滝は...アマノんと重なっちゃったけど...。


でも、ちょっと違うのは火山のふもとと、滝の河口は家の後ろで繋がっているの!

いわば、天然温泉ね!!


火山で暑い!と思った時には冷たい滝つぼにダイビング!!

あ、もちろん、滝つぼはちゃんと安全面を考えた上での設計よ。


ダイビングして、体が冷えたって思った時は温泉に浸かる!

なんて贅沢なのかしら!!」


「素晴らしいな…。

ぜひ、その天然温泉…我も入ってみたい。」


「はいはーい!!私は滝つぼで泳ぎたいでーす!!


ベロニカお姉様のお住まいは、最初見た時、アマノ様の所に負けないくらいの迫力があるなと思ったけど、すごく楽しそう!!

山登りとかダイビングしたいでーす!!」


「いいわよ、いつでも遊びにいらっしゃいな。」


「…アマノ様も、サザンカも気にしてないようですが…可愛いとはいったい…。


もはや活発系男子の発想では…。」


「はい!そこ、男子とか言わない!!」


「そうは言いますが…家の作りやその周りの風景…いかついですわよ。


可愛いと言うより…カッコイイ…に入りますわ。」


「そ、そんな…私の渾身の可愛いを詰め込んだのに…カッコイイだなんて...。


でも、個人的に大満足の出来だから、このままでいくわよ!

さ、お次はマツリカちゃんのお家ね!」


ベロニカは一喜一憂はするものの、さほど気にする様子はなく、次の住まいを見たいが為に、皆の背中を強引に、けれども力は入れずに押し歩き、紫焔殿しえんでんを後にするのだった。

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