星物語。ーからす座と乙女座のスピカー

森宮 宙彦(もりみや そらひこ)

第1話

星物語。

ーからす座と乙女座のスピカー


「なぁ、スピカ、おれと一緒に出かけないか」


からす座は目立たない星です

対してお隣の位置に居る乙女座のスピカは、とっても眩しい御星さまですから

いつも堂々とした振る舞いをします


「いやよ。誰があなたなんかと出かけるものですか」

「そうは言わずにさぁ、騙されたと思っておれと出かけようぜ、案外楽しいかもしれねぇよ?」

「いやです。そんな暇があったら、来るべく日の為に髪を美しくとかしています」


スピカは銀色の御髪を肩に乗せ、緩やかに手櫛をひきました。

まるでハープの弦の様に、大切そうに銀色に指を滑らす彼女は、誰がどう見たって美しいのです。

からす座はスピカの銀色を見て、ほぅ、と恍惚としたような表情をした後、息を吐きました


「どうして、おまえはそんなに美しいんだい」

「私は限界を知らない星で在りたいのです。だから、地上に足をつけた人間が、ふと空を見上げたとき、美しい、と、乙女座は今日も眩く熱く輝いているのだと、言われたいのです」

「それは建前かい」

「あなたに関係はありません」

「いや、あるね、だっておれはからす座だ。乙女座の一等美しい星の隣を飛んでいる、自由な星さまだからな」


からす座は南の方角を走り回る、とっても見つけづらい星です。

だからこそ、乙女座のスピカの涙が時折見えてしまうのです。

「スピカ、おまえは美しいよ、だから偶には遊びにでも誘わせておくれ」

「随分と下手な口説き文句ですね」

からす座は目立たない星です

でも、自由の御星さまなのです


今宵もお月様に照らされて、ふたりは偶にお話をします。

今日も御星様は美しく輝いています。


END

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星物語。ーからす座と乙女座のスピカー 森宮 宙彦(もりみや そらひこ) @so_nora9210

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