『拡散疲労法』

やましん(テンパー)

『拡散疲労法』

 

『これも、壮大な、フィクションであり、ジョークであります。』



        



 それは、『だじゃれ禁止法』のどさくさに紛れて成立した、もうひとつの法律だった。


 正式には『国民間の精神的肉体的経済的な疲労を拡散させ、国民生活をさらに安定させる法律』である。


 むかしの、アニメの武器をイメージして、『拡散疲労法』という、略称が広まったらしい。『疲労拡散法』が、正規の略称である。


 ま、なんとなく、良さそうな法律だったが、実はかなり恐ろしいものだった。


 つまり、国民の精神的肉体的な、さらに、経済的な疲労を、広く行き渡らせ、中央政府に反抗できないくらいに、広く疲労をなだらかに積み上げるのが、目的であった。つまり、むかしの参勤交代みたいなものである。


 ただし、だから、当然抜け道があり、富豪などは、結局、すり抜けられるようになっている。


 使い方による『だじゃれ禁止法』より、もっと過激なのだが、そちらに注目が集まるなかで、なぜか出来てしまったのである。


 一番の目玉は、『疲労公正税』であった。


 国民から、広く税として徴収し、さらに、足りないところに振り分ける。


 この、振り分け方が、よくわからないことになっていた。


 『疲労公正配分独立企業体』とかいうのが、配分を行うことになっていた。


 社長さんは、未知の人物である。



    😉😆😄😊😋😁😂😘😍😚

   

 

 それから、300年。


 国内の人類は、二分割されていた。


 沢山の疲労と、リスクを一手に引き受ける代わりに、富と豊かな生活をする、ごく少数の、ハイソサエチー。


 憲法に守られて、必要最低限以上の生活は必ず維持できるが、原則的に、いつまでもそのままの、アンダーソサエチー。


 それをつなぐのが、高度AIさんであった。


 かれらは、大概の事業を取り仕切っていて、人間の必要性は、もはや、なかったのである。


 ハイソサエチーは、一部の代官以外は、みな、ニュートウキョウに住む。


 ニュートウキョウの周囲には、美しい自然が広がる大緩衝地帯がある。


 じつは、富士山の大噴火により、廃墟になった地域に、新しいテクノロジーで作ったのだ。


 ニュートウキョウは、常に全体が半分空中に浮いていて、地震などの影響は受けない。


 エネルギーは、太陽と海から得ている。 


 また富士山の大噴火があっても、影響は最低になるようにされている。


 いざとなれば、房総半島を超えて、太平洋側に移動も出来る。


 290年前の、2回に渡る大震災と大噴火で、旧トウキョウは壊滅したのである。


 ニュートウキョウは、その廃墟の上に成り立っていた。


 


    😫😭😢😠😡😜😝😪😤😷


 

 しかし、それらも、夢のように過ぎ去り、現在は、何も残っていない。


 列島は、引き裂かれながら、また、大陸に吸収されそうになっていた。


 人類は残っていなかった。


 宇宙に移住することも、結果的には、出来なかったようである。


 月や火星に、小さな移住地はできたが、長くは残らなかった。


 

 必ずや生き残るだろうと言われていたごき属は、人類滅亡のしばらくあと、一部地域を除き、絶滅した。


 あまりに、人類に依存していたことが、大きな理由になったみたいである。


 しかし、少数の子孫が、生き残っているのは、さすがである。


 まあ、1億年もたてば、そうなるさ。


 この先、超巨大大陸が完成したら、どうなるかは、まだわからない。


 で、今を盛りに活躍しているのは、ハダカデバネズミの子孫たちである。

 

 ちょっとした、高度文明を築いていたのである。


 かれらは、いま、まさに、かつて、人類というのがいたことに、気がついたのであった。



           

     👦👧👨👩👯👰👸👱👲


 

 ハダカデバネズミさんの特技は、穴堀である。


 文明を持ってからも、そこらあたりは、変わらなかった。


 そうして、はるかな地下から掘り出した。


 それは、1億年も眠っていた、冬眠人間ふたりだったのである。


 ハダカデバネズミさんたちは、ふたりを起こす方法は発見したが、起こすべきかどうか、激しく議論したあげく、結局、また地下に戻してしまったのである。



     😒😅😓😥😰😞😔😖



 それから、また、1億年。


 超巨大大陸が完成した。


 ハダカデバネズミさんたちの姿もすでになく、超巨大大陸は、大型の生物が住める環境ではなかった。


 しかし、いたのである。


 それは、系統不明の、知的生命体だったが、体長は5ミリほど。


 おそらくは、外宇宙から飛来したのだろう。


 どのような場所にも入り込んで、とことん、調べあげるのだ。


 成分、質量、構成、固さ、柔らかさ。なんでも、調べる。


 それだけだが。

 

 当然、ふたたび、あのふたりを見つけた。


 この知的生命体には、迷いとかはないから、その場所で、ふたりを蘇らせたのである。


 このふたりこそ、あの、拡散疲労法の、発案者だった。


 パーフェクト型人工冬眠の完成者でもあった。


 

 『やあ、おはよう。』


 ひとりが言った。


 『おはよう。』


 もうひとりが、答えた。


 『もとの場所だね。何年経ってるかな。』


 『調べましょう。お、約3億年です。いや、ちがうな。誤差が大きいな。たぶん、200000000年くらいですね。』


 『目標は、10億年だった。まあ、せっかくだから、外を見てみよう。だれかが、起こしてくれたんだろう。』


 知的生命体は、じっと観察をしていた。


 なんと、これこそが、人類と、外宇宙知的生命体の、めでたい初接触だったのである。



     💩✊✌✋👊👍👎👆



 ふたりは、知的生命体と懇意になり、数人の子供を残して、また、冬眠に入った。

    

 子供たちは、その知的生命体と、さらに良い関係を作り出し、拡散疲労法も伝えた。


 知的生命体は、やがてそれを、純粋に知識として、さらに、他の外宇宙知的生命体に伝達したのである。


 それは、広く、銀河に広まったのであった。



 で、ふたりがどうなったのか、子供たちや、人類がどうなったのか、知的生命体の行く末や、さらに、もうひとり、違う場所に冬眠していたのだが、そちらが、どうなったのか。




 この先は、作者は知らない。

 


 ただ、やがて、地球が、膨張した太陽に飲まれるすれすれになり、結局は、崩壊したという話しは、木星の衛星にいた知的生命体から、宇宙に発信されたらしいです。



 お疲れ様です。




    ✨✴⭐🌟🌠❇🎵🎶💐🎉



 

 

 


 




 


 

 

 


 

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『拡散疲労法』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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