第149話 スタンピード決着

 ここで終りか。

 終わりなのか。

 このドラゴンを倒せばスタンピードは収まるのに。

 だが、これを外に出すと、どれだけ被害が出るか想像がつかない。

 考えろ。

 倒す方法を考えろ。


「おう、俺達もいるんだぜ」


 後ろを見ると、上溝うえみぞさんや御嶽みたけ青年、それにどらにゃんの尻尾や灼熱の剣の面々もいる。


「先輩、みんなの力を合わせましょうよ。先輩のネットワークライイングってそういう力だと思います」


 力を合わせる。

 そうか、やったことはないが、魔石に魔力を充填するのはやった。

 全員の魔力や、祈りの像をの魔力を込めればきっと届く。


「【ネットワークライイング】、魔力凝縮弾」


 みんなから魔力が流れてくるのが感じられる。

 祈りの像からも大量に魔力が流れ込んで来る。

 魔石弾が太陽かと思われるほどの光を放つ。


 ライフルに装填。

 発砲した。

 その弾はレーザーみたいな軌跡を描いてドラゴンに突き刺さった。

 ドラゴンの体表から閃光が迸る。

 俺達は伏せた。

 大きな爆発音。

 やったのか。

 顔を上げるとドラゴンの腹に大穴が開いていた。


 やった。

 勝てた。


 Sランクダンジョンのスタンピードを乗り切った。

 テレビを点けると、寒川さむかわが非常事態宣言をしていた。

 今、首都圏は戦場状態であり全ての権限は私にあります。

 そう言っている。


 きな臭い物を感じる。

 知り合いのダンジョンオーナーからメールを貰った。

 スタンピードが起こる前に、ダンジョンにゴミが大量に持ち込まれたらしい。

 そうかリサイクルすると言ってゴミを集めたのはこの為か。

 魔石が大量に持ち込まれたのも見ているらしい。

 人工スタンピードを起こしたな。


 魔石とゴミが大量にあればスタンピードが起こせるんだな。

 たしかに理論的だ。

 時間が経つとダンジョン内でモンスターが死んでいく。

 死骸と魔石をダンジョンが吸収する。

 それで、スタンピードのカウンターが進むのだな。

 解決するにはモンスターを殺して、死骸を外に持ち出さないといけない。


 だが、未踏破階層のモンスターは老衰や病気などで一定数死んでいく。

 根本的に解決するにはダンジョンコアをリフォームするしかない。


 俺のダンジョンがスタンピードを起こしたのは、ダンジョンは地下で繋がっていると思われる。

 余波が来たんだ。

 ただその余波が小規模だったんで、うちのダンジョンのスタンピードはそれほどじゃなかった。

 寒川さむかわ内閣の不信任決議案が出された。

 それは可決されたが、非常事態宣言下ということで突っぱねているらしい。

 やりやがったな。

 この隙に全てをうやむやにするつもりらしい。


 俺が賄賂の証拠を送った週刊誌とかには警察の手が入ってる。

 俺の出来ることはスタンピードの後始末をすることだ。

 俺は魔石コーティング弾をフル稼働で作った。


 これでCランクぐらいのモンスターはわけなく倒せるだろう。

 生産活動の合間にテレビを見ていたら、自衛隊の一部がクーデターを起こしたらしい。

 なんでも寒川さむかわがスタンピードを起こす手伝いをさせた部隊のようだ。

 国民の命をないがしろにする寒川さむかわは許せないと言っている。


 これに野党も乗っかった。

 不信任決議が出ているから、寒川さむかわを逮捕しろと首相官邸に押し寄せた。


 なんとなく喜劇のような様相を表してきた。

 寒川さむかわはなんと逃げたらしい。

 どこに?


 俺にはピントきた。

 殺された門沢かどさわさんが呼び出された別荘だ。

 そこは寒川さむかわの愛人の名義になっているらしい。

 そこは誰も知らないと門沢かどさわさんの霊は言っていた。


 よし、そこへ乗り込むぞ。

 幸い、魔石コーティング弾の活躍もあって、スタンピードの後片付けはほぼ終わっている。


 俺と藤沢ふじさわは別荘に車を走らせた。

 別荘はやまあいにあった。

 別荘の駐車スペースに車を停める。

 俺達の車以外にもう一台ある。

 黒塗りの高級外車だ。


 きっと寒川さむかわの車だな。

 玄関の扉に手を掛けると軋みなく扉は開いた。

 中の照明が点いていることから人がいるはずだ。


 間違いだったら詫びよう。

 声を掛けずに土足で室内に入っていく。


「【マッピング】。人間は一人です。一番奥の部屋にいます」


 よし、突入だ。

 奥の暖炉のある部屋は吹き抜けになっていて天井が高い。

 だからこの部屋だったのだろう。

 3メートルはあるパワードスーツが鎮座していた。

 戦闘用だと思われる。

 モンスターに対抗するために開発してた物に違いない。


「くはは、飛んで火にいる夏の虫とはお前の事だ」


 パワードスーツが立ち上がる。

 オーガと常に戦闘している俺を舐めるなよ。

 こんなの大したことがないんだよ。


「【リフォーム】、床ツルツル」


 立ち上がったパワードスーツは転がった。

 寒川さむかわは気絶したのか沈黙した。

 3メートルある脚立に登ってて転がったら、そりゃ気絶ぐらいすることもある。


 警察に電話した。

 野党の息の掛った警察幹部が部下をつれて逮捕にやってきた。

 逮捕状が出たんだな。

 なんの罪状か分からないが、寒川さむかわは逮捕されていった。


 あれだけやらかせば、そうなるよな。

 あっけなく方がついた。


 そして、数日後、区議会議員選挙が行われた。

 ダンジョンの危険性を訴えるダンジョン党は大勝利。

 躍進を遂げた。

 次は国政に出るらしい。


 今日も俺達はダンジョンで討伐してる。

 日本から、いいや世界中からダンジョンの無くなる日まで、その歩みは止まらないだろう。

――――――――――――――――――――――――

あとがき

 これで終りです。

 目指せ300話でしたけど、もう良いかなと思ってしまって。

 この作品に関してはもっと反応が良ければとか不思議にそういうことは思わなかったです。

 でも、今現在、☆の数で自作品3位です。

 だから、大健闘の部類なのでしょうね。


 もう少し、分譲の部分を前面に出せば良かったかな。

 農業とか養蜂のネタはあったんですが。

 もしかしたら、改訂版を書いて続きを書くかもしれません。

 アルファポリスのコンテストには絶対に出したいので、来年の夏ごろ改訂する予定です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る