第140話 捜査

 討伐の仕事だ。

 1メートルはある蜂のモンスターがブンブン飛び回っている。

 戦車があって良かったと今日ほど思ったことはない。


 だが、ライフルの弾は当たらない。

 こんな時のために殺虫剤の噴霧機能を搭載してある。

 ブシューとな。

 蜂のモンスターはポトリと落ちた。


 だが、少しまだるっこしいな。

 あみの方が良いかもな。


 まあ、地道にやるさ。


「これは凄い」


 補給に戻った砦の奴に蜂のモンスターの死骸を見せたらそう言われた。


「おお。こんなのに刺されたら一発であの世行きだ。戦車があってありがたいよ。殺虫剤の補給を頼む」

「はい、すぐにやります」


 殺虫剤の補給を見ながら、ジュースを飲んで一服する。


 あみの射出は何回もは無理だろうな。

 何か良い方法はないだろうか。

 紫外線で虫をおびき寄せるのがあったな。

 殺虫灯だったっけ。


 魔石発電してるから紫外線も電気ショックも搭載できる。

 後で改善報告書を出しておこう。

 さて行くか。


 装備が備蓄してある砦と何回か往復して、殺虫剤を補給。

 蜂のモンスターの数を徐々に減らした。

 討伐が終わるまで戦車には何度も針が突き立てられたが、装甲を破る程ではなかった。


 この蜂のモンスターは巣を作らないタイプらしい。

 何を守っていたかと言えば、1メートルほどの大きさを持った花弁がある真っ赤な花だ。

 蝋細工のように透き通って、物凄い綺麗な花だ。

 これを人工栽培できたら、ひと財産かも知れない。


 特別な効果がある花かな。

 ひとつ採取しておこう。


 討伐を終え、ダンジョンから出て花を分析に回す。

 と言っても香川かがわさん頼みだ。


 すぐに結果は出た。

 蜜には劣化エリクサーほどの効果があるらしい。

 この花は保護しないといけないな。

 蜂のモンスターの討伐とそのリスポーン地点潰しは最後にしよう。

 でないと他のモンスターが花を全滅させてしまうかも知れない。


 あの花の群生地は第3階層の観光スポットになるかもな。

 保護する方向で行きたい。


 俺は門沢かどさわさんが泊まっているホテルに押し掛けた。

 鍵を探すためだ。


 藤沢ふじさわ門沢かどさわさんの衣服を調べる。

 俺はその間、鞄や靴を調べた。

 おかしな所はないな。


 藤沢ふじさわが来て首を横に振った。

 そっちも空振りか。


 歯ブラシも調べたし、化粧品も調べて、文房具も調べた。

 あと調べてないのは何だ。


 彼女のスマホは藤沢ふじさわが調べた。

 もっとも、ロックが掛ったスマホに父親がアクセスしたとは考えづらい。


 ふむ、こうなると、何かヒントは会話の中にあったという可能性しかない。

 だが、彼女は心当たりがないと言っている。


 うん、鍵はなかった。

 そう考えるのは楽だ。

 だが最悪を想定するなら、まだ鍵はこちらの手にあると考えた方が良い。

 襲撃は今後もあると。


 ああ、そうだ。

 お墓があった。

 墓地に財産を隠したというのを小説で読んだ事がある。

 ありえそうな話だ。


「菩提寺はどこですか?」

「案内します」


 郊外のお寺に行った。


 門沢かどさわ家のお墓に行くと、墓石や石灯篭が無残に倒されてた。


「酷い」

「幸い石は欠けてない。石屋を頼んで組み立てて貰おう」


 俺は石屋の手配をした。

 ここにも奴らが来たということはまだ鍵は手に入れてないということだ。


 捜査が行き詰った。

 だが、何か忘れている気がする。

 何だ。

 あー、もどかしい。

 名探偵が頭を掻きむしってフケをまき散らした場面が思い出された。

 まさに俺の心境はそうだ。


 駄目だ、今は何に引っ掛かったのか思い出せない。

 さて、次はどこに捜査に行く。

 亡くなった門沢かどさわさんの職場の机とかは奴らの手のうちだ。

 真っ先に調べたに違いない。

 この線はないな。


 門沢かどさわさんの家に初めて行った時に、あるはずの物が何かなかったと頭に浮かんだ。

 おかしな物があったんじゃなくてなかった。

 えっと何がだ。

 駄目だ思い出せん。


 これが思い出されたら一挙に解決するような気がする。

 もどかしいが仕方ない。

 切り替えて行こう。

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