第100話 魔王育成計画

 部屋の討伐はオークキングとオーククイーンだった

 オークプリンスは生まれてなかった。

 楽でいい。

 サクッとやった。


 宝物は反射の盾。

 魔法を跳ね返す。

 キープだな。

 魔法が手に負えないモンスターがいたら使おう。


 もう一部屋の討伐は、エレファントスレイヤーだった。

 象ほどある巨大な蜘蛛というやつだ。

 だが銃の敵ではない。

 サクッと片付けた。


 宝物は無限の糸紡ぎ。

 魔力を注ぐと糸が出てくる。

 ぶっちゃけ要らない。

 糸なんか有り余っている。

 異世界なら宝物に相応しいのだろうけど。


 指名依頼が入った。

 拒否できるが、冒険者協会の顔も立てないと。

 依頼はカイザーウルフ捕獲依頼だった。

 テイムする為に捕まえたことがあるから楽勝だ。


 問題はタイミング。

 殺処分ロッカーを窒息死するまでに開けないといけない。

 失敗しても2時間後には次のチャンスがある。

 気楽なものだ。


 テイムして、魔力を吸い取って落ち着かせ、研究所に引き渡す。

 なんの研究か聞いたら、魔石と魔力の動きを調べるのだそうだ。

 魔力の可視化はスキルじゃないと出来ないが、そういうスキル持ちを集めるらしい。


「先輩、今日はもう仕事を終わりませんか」

「そうだな。休むか」

「カイザーウルフの親子に会いたいです」

「そうだな、行ってみるか」


 研究所に行くと、子供のカイザーウルフはかなり大きくなっていた。

 母親より二回りぐらい小さいだけだ。


「何か面白い生態が分かりましたか?」


 俺は研究員に尋ねた。


「彼らの生態は犬や狼と似ています。決定的に違うのは強さの優劣が、魔力の大きさで決まるということです」

「となると、上溝うえみぞさんが魔力を溜めまくれば、すで従えられるかもな」

「魔王ですね」


 全てのモンスターが上溝うえみぞさんに従う日がくるのか。

 それはそれで豪快だな。

 インフィニティタンク恐るべし。


 彼女の後継者を作るべきかな。

 魔力欠損症の患者を取り込むべきだろう。

 俺は香川かがわさんに電話を掛けた。


「もしもし、魔力欠損症の患者がモンスター災害の解決の糸口になるかも知れない」

『金の匂いがしますね』


 俺は推測を話した。

 スキル覚醒塾でデータを取ってみると言って、香川かがわさんは電話を切った。


「先輩、めっですよ。仕事しないはずですよね」

「ごめん、モンスター災害が減らせられると思ったらさ」

「魔王育成計画は私も面白いと思いますけど、今は駄目です」

「分かったよ、降参、降参」


 カイザーウルフの子供で癒された。

 仕事が忙しくなければペット飼うのにな。

 ちょっとそんなことを思った。


 ダンジョンを制覇したら、事業を雇われ社長に全部任せて、隠居しよう。

 そしてペットを飼うんだ。

 庭付きプール付きの一軒家で。

 隣には藤沢ふじさわがいて、今晩のおかずとか聞いてくる。

 うへへっ。


「先輩、いい顔になりましたね。楽しい事でも想像しましたか」

「ああ、飛び切りのな」


 ペットは何が良いかな。

 プチウルフとか良さそうだ。

 猫系も捨てがたいな。

 ウサギも良いな。

 ホーンラビットも可愛い。

 角の先を丸く削れば危険性はぐっと減るだろう。

 テイムが必須なのはもちろんだが。


 意表をついてクマなんかも良い。

 小熊のモンスターもたしかいたはずだ。

 リトルベアーだった。

 爪を切ると攻撃力は無くなるというモンスターだ。

 テイムしないと人には慣れないがな。


「帰りに動物園に寄っていきませんか」

「いいね。いまそんな気分だ」


 その時、研究所に警報が響き渡った。


「オーガベアが暴れています。危険ですのでシェルターに避難して下さい」


 オーガベアーなら知っている。

 オーガを思わせる赤い毛皮と二本の角。

 立ち上がるとオーガも超えるモンスターだ。


藤沢ふじさわはシェルターに行け。俺はオーガベアを大人しくさせてくる」

「気を付けて」


 俺はオーガベアの飼育施設に足を踏み入れた。

 オーガベアの飼育小屋の金属の扉は滅茶苦茶に壊されている。

 住宅地に出すと犠牲者が出る。


 俺はオーガベアの声を追った。

 いた。


 俺も無策できたわけじゃない。


「【リフォーム】。魔石よ糸になりオーガベアを拘束しろ」


 ダンジョンの壁並の硬さの魔石が糸になり蠢く。

 オーガベアの手足は糸に拘束された。


「ガァァァァ」


 オーガベアが吠えて手足を動かす。

 馬鹿な奴だ。

 オーガベアの手足は糸により切り落とされた。

 オーガベアは出血多量で死んだ。

 殺してしまったが、この場面では仕方ないだろう。


 なんとなく悲しくなった。

 モンスターと分かり合える日が来るといいな。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               50,580万円

上級ポーション2個             614万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

堅固の胴鎧                 300万円

足捌きの脛あて               300万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 52,304万円 52,304万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               45,810万円

オーク2体                 134万円

エレファントスレイヤー           120万円

無限の糸紡ぎ                 35万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

魔力買い         115万円

堅固の胴鎧        300万円

足捌きの脛あて      300万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            921万円 46,099万円 45,178万円


ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資5022口       502億2千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               150,599万円

カイザーウルフ60体           4,500万円

ドッペルオーク12体             600万円

シャーマンオーク12体            720万円

エンペラータランチュラ12体       1,056万円

メイズスパイダー12体          1,020万円

エレファントスレイヤー12体       1,440万円

オーガ96体               5,280万円

弾丸製造                   500万円

酒                       12万円

転移輸送                   826万円

最下級ポーション               553万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 167,106万円 167,106万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 酒の製造は不採算部門だな。

 安酒なので仕方ないといえば仕方ないが、とんだ見込み違いだ。

 酒のために魔力を使うなら最下級ポーションを出した方が良い。


 俺達の装備は。

俺 追憶のペンダント 不眠の冑 剛力の籠手 モノクル 身代わり人形

藤沢ふじさわ 巧みの手 俊足のブーツ 力の腕輪

上溝うえみぞ 巧みの手 俊足のブーツ

番田ばんだ 不動の盾 猫の爪 堅固の胴鎧

拝島はいじま 祈りの像 足捌きの脛あて

御嶽みたけ 幻影のネックレス 耐衝の胸当て カモシカの足


キープ 亜空間収納 千里眼の目隠し 身隠しのマント 変装の仮面 スキル鑑定の杖 反射の盾


 堅固の胴鎧は魔力を注ぐと硬くなるというだけ。

 面白みはないが、案外とこういうアイテムが命を救うかも知れない。


 足捌きの脛あては巧みの手の足版だ。

 足捌きが器用になる。

 前衛ならそれなりに使えるアイテムだ。

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