第98話 課税法案

 今回の討伐はオークキング2匹だった。

 オークキングは楽でいい。

 素早さがなくてパワーだけだからな。

 サクッと倒して、ポーションの試験管という宝物を得た。

 魔力を注ぐと最下級ポーションができるらしい。

 要らないからファンドに売却だな。


 次の部屋はランドオクトパス。

 頼むから蛸が陸で暮らすなよ。


 まあ銃の敵ではなかった。

 ランドオクトパスは美味いとのこと。

 蛸ということか。


 宝物は拘束の鎖。

 魔力で鎖を操れるらしい。

 要らんな。

 売りに出そう。


 事務所に帰りテレビを点けると西府にしふが映ってた。


「ダンジョン業者にも課税を」

「法案は通りそうですか?」

「通るに決まっている。第一ダンジョン業者が無課税なのはスタンピードに備える為。だが、実際はスタンピードが起こっているではないか。損害を補填するなら国がすべきで、ダンジョン業者にも課税するべきだ」


 うん、そうしてくれたら俺も嬉しいが、スタンピードを防ぐための討伐がちゃんと行われるかが疑問だ。

 国のずさんさは良く知っている。

 課税して、討伐がお茶を濁しただけというのでは、付近の住人が堪らない。


「そう西府にしふ議員は仰っているわけですが、実際はどうですか」


 スタジオの司会がコメンテーターに話を振る。


「ダンジョン協会や冒険者協会が反対に回ると思いますよ」

「では法案は通らない」

「そうですね、十中八九通らない」


 そうか通らないのか。

 じゃあなんであんな法案を提出したかと言えば、たぶん献金目的だろうな。


 ダンジョン協会と冒険者協会が献金すると思われる。

 殺処分ファンドの決裁書類があってみると献金と書いてある。

 やっぱりな。

 払うのは業腹だが、払わないと業界でハブられる。

 どっちもごめんだな。


 何か策はないか。

 ダンジョン協会と冒険者協会に寄付しよう。

 我ながら詭弁だが、献金でなければ、心理的に嫌じゃない。

 二つの協会にはお世話になっていることだし。


 パラダイスサイバーのネット工作は続いている。

 賢明な奴はパラダイスサイバーができないように無償バージョンアップを受けていた。

 バージョンアップの割合は9割を超えた。

 だが問題は残りの1割だ。

 めんどくさがってバージョンアップをやってない奴もいるが、パラダイスサイバー中毒者が一定数いると思われる。


「先輩、ここのところ働きすぎです」


 心配そうな藤沢ふじさわの声。


「そうは言っても考えたり対処しないといけないことが山とある」

「私が思うにパラダイスサイバーの使用者は魔石との繋がりを強制的に断ったら良いと思います」

「それも一つの手だな。でもそれをするには本人と会わないいけない。どこに住んでいるかの名簿が手に入っても、全国を飛び回らないといけない」

「先輩がますます忙しくなりますね。さっき言ったことは忘れて下さい」


 警察が片っ端から、パラダイスサイバー中毒者を捕まえれば、問題ないんだよな。

 でもそういうわけにはいかない。


「もしもし、辻堂つじどうにやって欲しい事がある。パラダイスサイバーの顧客名簿あるだろ」

『はい、横流しですか』

「いいや毎日バックアップを取ってほしい。証拠隠滅されないように」

『それなら楽勝です』

「パラダイスサイバーが違法になったら、それを俺が警察に持って行く」


 身隠しのマントがあれば忍び込むのも容易だ。

 そうすれば、辻堂つじどうは泥を被る必要はない。

 ばれたら俺は窃盗で前科1犯が付くが構うものか。

 それが、魔石とのネットワークシステムを作った俺の罪滅ぼしだ。


 少し、休もう。

 番田ばんださんの部屋に行って猫と戯れるか。

 部屋に行くと番田ばんださんは少し沈んだ様子だった。

 討伐の時は普段と変わりがなかったのにな。

 上溝うえみぞさんの家族を説得するいいアイデアがないんだろう。

 過激な奴なら出来ちゃった結婚しろよとか言うんだろうな。

 孫を連れていけば許してくれるさとか言ってな。

 小説じゃないんだから、そんなに上手くはいかない。


 すり寄ってきた猫を挨拶代わりに撫でる。

 番田ばんださんにアドバイスしてやりたいが、こういう経験は俺にはない。

 モンスター討伐みたいに簡単にいけばいいのにな。


「よしよし、ここが良いのか。ええのんか」

「俺はどうしたら良いんだ!」

「そんなに大きな声を出さなくても聞こえてるよ。俺が思うに、この人は娘を大切にして愛してくれるだろうかと親なら思っているはずだ」

「そんなに頼りないかな」

「さあな。上溝うえみぞさんの親が何を基準にしてるかは分からない。優しい心なのか、財力なのか、気概なのか。色々と試してみるしかないだろ」

「試行錯誤しろってことか。じゃあまずは10億貯めてみせる。これだけ裕福なんだって見せつけてやるよ。駄目だったらまた考えるさ」

「そのぐらい気楽に行く方が良いだろな」


 さて、呪術師でもあたってみるか。

 尻手しって専務には責任を取って貰わないとな。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               48,450万円

上級ポーション2個             608万円

彫像10体                  10万円

弾丸製造                  500万円

耐衝の胸当て                300万円

幻影のネックレス              300万円

協会に寄付      1,000万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計          1,000万円 50,168万円 49,168万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               26,877万円

オークキング2体              134万円

ランドオクトパス1体            115万円

ポーションの試験管          20,000万円

弾丸60発          6万円

弾丸用魔石        150万円

付与魔法依頼        50万円

魔力買い         119万円

耐衝の胸当て       300万円

幻影のネックレス     300万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            925万円 47,454万円 46,529万円



ファンド収支メモ


俺の出資1250口       125億円

客の出資4651口       465億1千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               137,643万円

カイザーウルフ60体           4,500万円

ドッペルオーク12体             600万円

シャーマンオーク12体            720万円

エンペラータランチュラ12体       1,056万円

メイズスパイダー12体          1,020万円

エレファントスレイヤー12体       1,440万円

オーガ96体               5,280万円

弾丸製造                   500万円

酒                       12万円

転移輸送                   801万円

ポーションの試験管 20,000万円

最下級ポーション               536万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計         20,000万円 154,108万円 153,108万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -48億円

出資金          125億円


 ポーションのゴブレットは儲けた。

 ファンドの財産になったが、ポーションを製造すれば元は取れる。

 アルバイトに1回五千円払って最下級ポーションを作ってもらう。

 一日に4回はできるから、日給2万円のバイトだ。

 割が良いので、すぐに人が集まるに違いない。

 くず鉄に代わる稼ぎになると思う。


 俺達の装備は。

俺 追憶のペンダント 不眠の冑 剛力の籠手 モノクル 身代わり人形

藤沢ふじさわ 巧みの手 俊足のブーツ 力の腕輪

上溝うえみぞ 巧みの手 俊足のブーツ

番田ばんだ 不動の盾

拝島はいじま 祈りの像

御嶽みたけ 幻影のネックレス 耐衝の胸当て


キープ 亜空間収納 千里眼の目隠し 身隠しのマント 変装の仮面 スキル鑑定の杖


 耐衝の胸当ては衝撃を和らげるようだ。

 幻影のネックレスは自分の位置を誤魔化す。

 御嶽みたけ青年に何かあるとスケルトン軍団が、機能しないからな。

 彼の重要度は高い。

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