第78話 ネクロマンシー

 2階層の通路を制覇したので、今日の討伐は休みだ。

 明日からザコ部屋の討伐となる。


 事務所でくつろいでいたら、御嶽みたけ青年がやってきた。


「セカンドスキルが芽生えました。ネクロマンシーです。死体に霊を憑依させて命令したりできます」

「戦闘スキルには違いないな。素材が良かったりすると強そうだ」

「オークの骨を解体業者から分けて貰いました」

「そうか、もう試したんだな。で、どうだった?」

「久しぶりに家族団らんができました」


 そんなことを聞いているんじゃないが、まあいいか。


「良かったな」

「はい、少し生きる希望が湧いてきました。今の家族の状態は骨ですけど、いずれ肉体も復活させるつもりです。ドールメイクスキルの方に仕事を頼みたいのですが、スケジュールが一杯で」

「家族の体をモンスターの肉と骨で作ってもらうのか?」

「ええ、いけませんか」


 腐るだろというツッコミはなしかな。


「じゃあ頑張って最高のモンスター素材を集めないとな」

「はい」


 スケルトン軍団がパーティに加わるのか。

 上溝うえみぞさんのスキルコピーが役に立ちそうだ。

 スケルトンの魔力は御嶽みたけ青年の物なんだろうな。

 となるとコピーしたスキルで消費が激しいのは駄目だな。


 藤沢ふじさわのマッピングスキルぐらいかな。

 あれっ、上溝うえみぞさんのインフィニティタンクを付けたらスケルトンの魔力の上限がなくなるな。


「スケルトンに上溝うえみぞさんのインフィニティタンクスキルを付けてみたいんだが」

「それは良いですね。魔力が無限に溜められたら活動限界が伸びます。武装は銃があることですし」

「スケルトンが死ぬとどうなる?」

「憑依が解けるだけです。霊は浄化されたりしなければ、消えません」

「オークプリーストとかいたら天敵だな」

「ええ、その場合は家族の霊は戦闘範囲外に逃がします」

「弱点がない奴はいないから、それは許可しよう」

「ありがとうございます」


「ちなみに家族の肉体は何から作るつもりなんだ?」

「肉は植物由来のモンスターとかを考えています。骨はドラゴンが良いですね。皮はオークでも良いかと考えています。髪の毛は黒い毛であればどんなモンスターでも構いません。目は鉱物系のモンスターですね」


 腐ったりしないものを考えているのだな。

 どうやら、もう設計図が頭にあるようだ。


「そのうち、素材が集まるさ。でもその設計にはひとつ抜けているぞ。声の要素がない」

「それは必死に考えたのですが。思いつかなくて」

「俺も思いつかないが、そのうち解決策が出るだろう。楽しみだな」

「ええ、楽しみです」


 御嶽みたけ青年がにっこりと笑った。

 どうやら生きる希望がかなり湧いたらしい。


 くず鉄回収部屋に視察に行くことにした。

 部屋に近づくと微かにザシュっという音が聞こえてきた。


 ノックして部屋を開ける。

 作業員がトラップのスイッチを踏んでは鉄槍を回収していた。


「鉄がよく尽きないものだな」

「知ってますか。ダンジョンは毎年何千万トンの鉄を飲み込んでます」

「それが出てきているわけか」

「そう考えられています」


 そりゃ尽きないわけだ。

 宝石とかもっと一杯出して欲しいものだが、回収する量が宝石は少ないのだろうな。


 貴金属とかはどうなのだろう。

 図書館に行って調べてみるか。


 ダンジョンで採れる貴金属。

 ゴーレムというモンスターには金が使われているらしい。

 どうやら生体ロボットみたいなのだが、神経が金だ。

 贅沢な配線だな。

 といっても下級のゴーレムは鉄とか銅が神経らしいが。


 高い電子部品は金が使われている。

 現代製品と一緒だな。


 そのうちゴーレムも出てくるだろう。

 今から楽しみだ。


 ちなみに金属系スライムはいない。

 だよな。

 水銀みたいなのじゃないと、金属は個体だ。

 酸とかで溶かして液体にできるけど、それじゃ金属イオンを含んだスライムだ。

 金属の特徴など微塵もない。

 硬くて早い金属系スライムはおとぎ話だ。


 金属を食うモンスターはいる。

 これは別に驚くことじゃない。

 カタツムリだってカルシウムが含まれるコンクリートを食べる。


 金属の鱗とかを作るのは驚くべきことだが、理屈に合わないこともないだろう。

 貴金属を好んで食べるモンスターはいない。

 普通の酸じゃ溶けないからね。

 まとうのは大抵が鉄だ。

 一攫千金は夢だな。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               26,652万円

上級ポーション2個             604万円

彫像10体                  10万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 27,264万円 27,264万円



ファンド収支メモ


俺の出資1200口       120億円

客の出資867口        86億7千万円


              支出       収入        収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               44,249万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

オーガ96体              5,280万円

くず鉄25トンほど             251万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計               0円 59,096万円 59,096万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -64億円

出資金          120億円


 御嶽みたけ青年は素晴らしいスキルだな。

 契約金の上積みを申し出たら、断られた。

 何でもみんなに申し訳ないからだそうだ。

 兵力の増員は嬉しいのだけどな。

 まあ良いか。

 貢献という意味では俺が一番だ。

 拝島はいじまさん辺りのスキルもかなり役に立っている。

 チーム仲間の優劣をつけても仕方ない。

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