第64話 比重を増やせ

 今日も通路のモンスターリスポーン潰しだ。

 銃の扱いにも慣れてきた。


 ただ、急所を狙わないと即死しないのがな。

 オークの脂肪は分厚い。

 ライフルの威力だとその脂肪を撃ち抜けない。


 それに魔力が詰まった魔石は硬いが、鉛より軽い。

 威力が落ちるわけだ。

 モンスターがまとってる魔力のバリアを貫けるのは良いんだがな。

 魔石と何か重い金属を合成できれば良いが。

 劣化ウランとかが重いんだろうけどな。

 食肉にするのだから使えないし、そもそも合成ができない。

 リフォームもさすがに物質を混ぜたりは出来ない。


「先輩、戦闘中に考え事は危険ですよ」

「ごめん、銃があまりにも使えないから」

「そうですか。確かに血がドバっと出ませんね」

「まあな」


「威力は比重が重くなると増す。石の比重は約3で、鉛は11.36です」


 拝島はいじまさんがそうレクチャーしてくれた。

 そりゃ、威力が出ないよな。


 おっと、オークメイジが歩いて来る。

 撃ちまくったが、大ダメージにはならない。

 動脈とかが分かればな。


 誰かの撃った球が眼球を貫いて脳まで達した。

 拝島はいじまさんか俺がスキルを使わないと、かなり危険だ、

 危ういなと思う。


 弾の比重か、弾薬の火薬量かのどちらかに、工夫が必要だ。


「休憩しよう。どうやら俺達の装備では心もとないようだ」


 比重を上げるには付与魔法だな。

 そういうのがあると聞いた。

 パーティメンバーの剣とかにも掛けられると聞いているから、弾丸にも掛かるはずだ。

 俺達が出来ないことは出来る人に頼めば良い。


 さっそく冒険者協会で依頼を出して、付与魔法を掛けて貰った。

 弾丸がずっしりきたのが分かる。


 今度こそ。

 2階層の通路に入る。


 オークナイトがやってきた。


「よし、新魔石弾をぶち込んでやれ」


 みんながオークナイトを撃つ。

 弾丸は鉄鎧を貫通した。


 オークナイトは絶叫を上げた。

 誰かの弾が心臓に当たったみたいで、オークナイトは血を吹き出して死んだ。


 素材の換金を考えると、新魔石弾はちょっとだな。

 安全をとるか、金を取るかだ。

 もちろん、俺は安全を取る。


 金なら、殺処分ロッカーで湧いて出てくる。

 安全を取ることになんの疑問があろう。


 それと、銃身が駄目になった。

 魔石弾が硬いせいだ。

 弾丸が銃身を削ってしまうようだ。

 弾が逸れて当たらない、これ以上使うと暴発の危険がある。

 銃は毎日取り換えるべきだろう。


 金で解決することだが、魔石より硬い素材の銃身が欲しい。

 これは今後の課題だ。

 とりあえずは銃を何丁も持ち歩くことにする。

 自走カートがあるからな。

 これに積んどけば問題ない。


 今日は通路のオーク18体を仕留めて終わった。

 ペースが上がっている。

 付与魔法の新魔石弾のおかげだ。


 金が貯まったので第2弾の給付金を実施することにする。

 橋本はしもとさんにそう申し出た。

 それで打ち合わせとなったわけだ。


「給付金自体の事務手続きは問題ありません。ですが区長から提案がありました。デモ行為を行わないという同意書に判を押さないと給付金を払わないことにしてはどうかと」

「うわっ、悪い奴みたいですね」

「ですが、デモが再燃するとそれはそれで厄介ですよ」


 うーん、確かに出ていけと言われても、ダンジョンは無くならない。

 給付金だって、俺の善意みたいなものだ。

 文句を言う人にはあげないと言うぐらい良いんじゃないか。

 だよな。

 でも行政の闇のひとつをみた気がする。

 こうやって切り崩されていくのだな。


「分かりました。同意書を取る方向でお願いします」

「ではそのように致します」


「第三セクターの話はどうなっています?」

「着々と準備は進んでます。ただ議会に通したり、いろいろと手続きがありまして」

「まあ、そんなものですよね。魔石弾というのを開発しまして、魔石で弾を作れるのですよ。これも第三セクターで販売しませんか」

「えっ、モンスターに銃弾が効くのですか?」

「そうなんですよ。スタンピード被害を少なくするために、警察や自衛隊に配備してほしいですね」

「それは画期的ですね」

「でも作れるのが俺しかいないのですよ。クラフト系スキルホルダーとかいませんかね。変形スキルとかあったら一発なのに」

「クラフト系は稀なんですよ。0.01%もいないと思います」


 上手くはいかないな。

 そんな奴がいたら、魔石弾をとっくに作っているに違いない。


「残念ですね」

「魔石弾は計画に付け加えておきます」


 魔石弾の販売を俺の会社では行わない。

 許可を取るのがめんどくさかったからだ。

 でも売らないという手はない。

 彫像を作るより弾丸の方が儲かりそうだからな。

 空いた時間の内職だ。

――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               50,373万円

上級ポーション2個             610万円

彫像10体                  10万円

カイザーウルフ60体          4,500万円

ドッペルオーク12体            600万円

シャーマンオーク12体           720万円

エンペラータランチュラ12体      1,056万円

メイズスパイダー12体         1,020万円

エレファントスレイヤー12体      1,440万円

寄付        13,070万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計         13,070万円 60,329万円 47,259万円


パーティ収支メモ


              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し                4,041万円

オーク18体                975万円

ライフル6丁       462万円

弾丸200発        20万円

自走カート         20万円

弾丸用魔石        500万円

付与魔法依頼        50万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計          1,052万円  5,211万円  4,159万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -64億円

スタンピード積み立て金  110億円


 パーティの収支が赤字ギリギリだ。

 銃身がいかれたのは計算外だった。

 でも仕方ない。


 その代わりに付与魔法のおかげで銃弾の消費が半分で済む。

 弾丸用の魔石が半分になるのは嬉しい。


 もし、パーティの資金が尽きたら、補充するつもりだ。

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