第59話 ボス攻略

 さて、1階層のボスの攻略の募集を掛けたが、3日待っても人が集まらない。

 依頼金一人あたり1千万円なのにだ。


 そうだよな、誰も命は惜しいものな。

 仕方ない、俺一人で行くか。


「先輩、ボスに一人で挑むつもりですね」


 藤沢ふじさわに看破された。


「あら、お邪魔だったでしょうか」


 香川かがわさんも訪ねてきた。


「ちょっと待って下さい。すぐ終わりますから。藤沢ふじさわ、これは俺の戦いだ。後には引けないんだよ」

「私もついていきます」

「駄目だ。許可できない」


「あのボス討伐に行くのですよね。私も参加します」


 香川かがわさんもか。

 全く命を何だと思っている。


香川かがわさんはどうしてですか」

「ボス部屋の扉の前まで行ってみました。あの先には濃い魔力が渦巻いてます。研究したいですね。確か貨しがひとつあったはずです」


 どうしたものか。

 二人とも戦闘スキルではない。

 もし仮にそんなスキルがあったとしても、熟練の冒険者が嫌がる依頼だぞ。


「先輩は俺の戦いで後には引けないと言いました。これは私の戦いでもあるんです。後には引けません」

「同じくですね。私も研究に命を掛けています」


 どうやら決意は固いようだ。


「仕方ない。絶対に前には出るなよ」

「了解です」

「分かりました」


 いざ鎌倉。

 ボス部屋の前に立った。


「おう、間に合ったか。水くせぇじゃないか」


 大船おおぶねさんが来てくれた。


「ありがとうございます」

「よし、気を引き締めていくぞ」


 ボス部屋の扉を開ける中にいたのは、象よりも三回りは大きい牛みたいなモンスター。


「ベヒモスですね」


 香川かがわさんは博識だ。

 モンスターの種類まで知っているとは。


「だな」


 大船おおぶねさんが相槌を打つ。

 いま、俺のクールタイムは一時間。

 とてもじゃないが、この戦闘でフルパワーで2発は撃てない。


大船おおぶねさん、何とか動きを止めて下さい。フルパワーでぶち込みます」

「分かった長くは持たないぞ【ストレングスアップ】」


「【マジックアイ】。不味いわ。ブレスを吐くつもりよ」


 分かっていれば回避できる。

 全力でベヒモスの前から逃げた。


「【マッピング】」


 藤沢ふじさわがスキルを使う。

 ブレスが脇を通過した。

 みんな避けたみたいだ。


 大船おおぶねさんがベヒモスの足に斬りかかる。

 だが、剣は弾かれ、ベヒモスは大船おおぶねさん軽く蹴った。


 大船おおぶねさんは何回もバウンドして転がる。

 痛そうにしているが、すぐに起き上がった。

 良かった、致命傷じゃない。

 大船おおぶねさんはポーションを飲んでいる。


 ベヒモスが走り始めた。

 くそっ、これじゃどうにもならない。


 香川かがわさんが何をしているかと見たら、区役所で見たスキル鑑定の道具を使っている。


「やっぱりだわ。この部屋の濃厚な魔力が最後の一押しになったのよ。戸塚とつかさん、あなたスキルが芽生えている。ネットワークライイング。ネットワークを作る能力よ」

「とにかくやってみるか。【ネットワークライイング】」


 俺は藤沢ふじさわと、香川かがわさんと、大船おおぶねさんと繋がった。

 藤沢ふじさわのスキルでベヒモスの位置が分かる。

 香川かがわさんのスキルでベヒモスの魔力の流れが分かる。

 あの魔力が集まっているのが心臓部だろう。


 大船おおぶねさんからは闘志が流れ込んできた。


「【リフォーム】槍ドリル」


 俺のフルパワーの一撃は、ベヒモスの心臓部を見事に貫いた。


「【ストレングスアップ】【シャープエッジ】。どっしゃらぁぁ【スラッシュ】」


 ジャンプ一閃。

 大船おおぶねさんの一撃はベヒモスの首の動脈を斬り裂いた。


 大量の血の雨が降り、ベヒモスは倒れた。


「作戦と違ったな。お前さんが止めだったはずだ」

「仕方ないですよ。強敵でしたからね」


 とにかくボスを討伐できた。

 やったぞ。

 戦いに勝てた。


 宝箱が出てきたので、開けてみると紫色で虹色の光が輝くポーションがあった。


「エリクサーね。買取価格1億円。末期癌も治るという奇跡のポーションよ。これでまた一部屋買う時期が早まったわ」


 ひとり頭、2千5百万円か。

 命の値段としては安い。

 だが、この戦いは必要だった。

 これで2階層のリフォームを始められる。


――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

繰り越し               41,926万円

依頼金        2,000万円

藤沢ボーナス     1,000万円

上級ポーション8個           2,440万円

彫像30体                  30万円

カイザーウルフ180体        13,500万円

ドッペルオーク36体          1,800万円

シャーマンオーク36体         2,160万円

エンペラータランチュラ36体      3,168万円

メイズスパイダー36体         3,060万円

エレファントスレイヤー36体      4,320万円

スタンピード積み立て金    5億円

部屋代                   200万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計         53,000万円 72,604万円 19,604万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -74億円

スタンピード積み立て金  110億円


 カイザーウルフの買取額がまた下がった。

 一体につき毛皮だけで25万円だ。

 オーガに比べればまだ高いから、十分商売にはなる。

 魔石もあることだし。


 スタンピード積み立て金も良い具合に増えていく。

 そろそろ運用を考えないと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る