第41話 第三セクター
今日の討伐は休みだ。
第三セクターの話をする予定。
区役所の会議室に入って待つ。
ほどなくして、
選挙で散々見たからな。
「初めまして
「初めまして、私のことはよく知っているでしょう」
「ええ」
「知らないとか言われたらショックで寝込むところです。講演で学校などに行くと知らないなんて言われることもあるんですよ」
「そういった場合はどうされます」
「是非覚えて帰ってほしい。区民の知り合いがいたら、私に投票して下さいって言って笑います。こんなことで寝込むようでは政治家はやっていけません。さっきのは冗談です」
「そろそろ、本題に入っていいですか」
「では始めたまえ」
第三セクターの概要を説明し始める。
5部屋だからひと月に3000万の利益が上がると言うと区長は身を乗り出して頷いた。
好感触なのかな。
「いかがでしょうか」
「君、5部屋なんてけち臭いことを言わずに、30部屋ぐらいどうかね」
「補填のデメリットは大丈夫なんですか?」
「本来ならスタンピードの賠償金は自治体が補填すべきものだ。と建前は言っておく。本音は言えないな。まあ、察したまえ」
「自分の懐じゃないからですか」
「そうあけすけに言うものじゃないよ」
ちょっと、どうかと思う。
だけどポーションを懐に入れる奴らよりましなんだろうな。
「国も飛びつきますかね?」
「飛びつくだろうね。断言しても良い。ポストが湧いて出るんだよ。スタンピードが起こったら自治体で補填すべしと言えばいい。たぶん世論も納得するはずだ。もともと何割かは補填しているからね」
どう考えるべきだろう。
俺は少し考えた。
「
「依願退職を申し出たが、退職などさせるものか。横領未遂で、懲罰解雇した。私は愛される区長だからね」
この人を少し信用してみよう。
「政党を立ち上げませんか」
「ほう」
「ポーションの利権を握れるなら、政党を作るのも容易いはずです」
「私は表向きは無所属だから、構わないと言えば構わない。だが、政党の推薦を受けている。色々としがらみがあるんだよ」
「利権を独占せず、おこぼれを分け与えれば、しがらみもなんとかなるんじゃないですか」
「なんとかなるかと言えばなんとかなる」
「スタンピード根絶党を立ち上げて下さい。お願いします」
「よろしい。まずは区議会からなんとかしてみましょう」
第三セクターのダンジョンの物件は俺の物だ。
貸しているだけだからな。
契約はいつでも切れる。
問題が出たら契約破棄したら良い。
今のところただで貸しても問題ない。
金は十分にある。
スタンピードの補填をしてくれるのだから、こんなにありがたいことはない。
双方にとって得のある話だと思う。
「上手くいきましたね」
「ええ。天下り先を用意してやったようで、少し引っ掛かりますが、しょうがないですね。腐敗が起こったら、俺は戦いますよ」
「区長は頭が良い方ですから、ポーションの横流しとかはしないでしょう。ただ親戚を何人か第三セクターに送り込むだけです」
「そういうのはしょうがない。スタンピード根絶党をなんとか牛耳ってやるさ。部屋の所有権は俺が持っているのだからな。かなりの影響力を発揮できるはずだ」
それなりに成果を出して帰ってきた。
ちょっと肩の荷が下りた。
いるかな。
インターホンを鳴らす。
「はーい」
女の人の声がした。
どっかで聞いた事が。
ああ、
扉が開いて答えが合っていたことが分かった。
「お邪魔します。部屋の調子はどうですか?」
「快適ですよ。壁がボロボロにならないのが良い」
「可愛いですねぇ。撫でてほしいんですか」
「彼女はよく来るの」
「ええ」
「毎日来てます。猫ちゃんの癒しがない生活なんて考えられません」
猫が可愛いと思っていることにしよう。
「お邪魔虫は消えるよ」
「お邪魔虫だなんて」
美女と野獣カップルだが、上手くいくと良い。
二人とも病気で外で過ごすのはつらい。
そういう意味でも案外お似合いのカップルかもな。
ただ、
機会があったら、それとなく話を聞いてみよう。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 21,125万円
上級ポーション2個 610万円
彫像10体 10万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 0円 21,745万円 21,745万円
相続税 2,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -84億円
第3セクターができるのが待ち遠しい。
ポーションの養殖部屋が減るが、そんなのは構わない。
スタンピードの補填さえできれば良いんだ。
議会の承認はなかなか下りないのだろうな。
一ヶ月以上はみておいた方が良さそうだ。
果たしてスタンピードに間に合うか。
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