第31話 槍ドリル

『31号室、応援頼む』


 最近どれか1つのチームから応援要請が掛かる。

 大船おおぶねさんからはないのはさすがだ。

 今日は灼熱の剣からだった。


「状況は?」


 見ると全員が黒いオーガと格闘戦している。


「武器や装備を破壊するスキルを持ったオーガだ。とにかく硬いんだ」


 武器破壊は小説やゲームなどによくある能力だ。


「皆さん、オーガが避けられないようにけん制お願いします」

「おう」

「やってやるぜ」

「あとで一杯奢れよ」

「為せば成る」


 灼熱の剣が無手で立ち向かっていく。

 パンチやキックを浴びせて痛みに顔をしかめている。

 攻撃の合間にポーションを飲む事も忘れない。


 オーガのキックに灼熱の剣のメンバーが吹っ飛ばされて壁に叩きつけられた。

 今だ、キックの体制なら飛び退けない。


「ダンジョンに勝てる硬さかな。【リフォーム】、槍」


 槍は刺さらなかった。

 くっ、強敵だ。


「みなさん、いましばらく持ちこたえて下さい」

「おう」

「今度はやられない」

「がってんだ」

「了解」


 灼熱の剣が勝算のない戦いに身を投じる。

 くそう、逆転の一手は。

 封印するしかないのか。

 このオーガが増えて封印を破ったら。

 リスポーンをなんとか潰して封印か。

 駄目だ。

 勝算のない先送りは逃げだ。

 二度と逃げないと誓った。


「先輩、ねじり込んでみたら」


 ナイス、藤沢ふじさわ

 愛していると口に出そうになった。

 危ない危ない。


「【リフォーム】、槍ドリル」


 今度の槍はオーガの肉を削ぎ取った。


「止めだ。【リフォーム】、槍ドリル」


 見事胴体を刺し貫いて終わった。

 槍ドリルは考えてなかったな。

 考えてみたら、そっちの方が貫通力がある。


 藤沢ふじさわの助言に感謝だ。

 それと足止めしてくれた灼熱の剣に感謝。


 こんな強敵に攻撃を避けられたら、もうどうにもならない。

 やはり前衛は必要だな。

 素人をSランクダンジョンの討伐には勧誘できない。

 頭の痛いところだ。


 かといって、Aランク冒険者を社員として雇うと給料が凄いんだろうな。

 もちろん部屋がバンバン売れれば払える金額ではあるが。


「もし、私達が灼熱の剣と雇用契約を結びたいって言ったらどうします」

「済まないが、拒否させてもらう。人間関係がどうのと言っているわけじゃない」

「じゃあ、何でですか」

「仕事内容がきつすぎる。今回の仕事もそろそろ手を引こうと思う。Sランクダンジョンの2層目は俺達には無理だ。1層目もヘルプがあるから、やれているが、そろそろきつくなってきた。実力を過信する奴は長生きできない」


 簡単に討伐できる部屋から、やっているので残ったのは強敵や難敵が多い。

 仕方ないことだ。


 全員が討伐を終えたので、どらにゃんの尻尾と大船おおぶねさんに声を掛けた。


「社員としてみなさんを雇いたいのですがどうです」

「すいません、どらにゃんの尻尾はお断りさせて頂きます」

「すまんな、俺も宮仕えはちょっとな。フリーでやりたい」


 やっぱりだめか。


「良いんです。みなさんの都合は尊重したいですから」

「先輩、落ち込まないで下さい。私は最後までお供します」

「ありがとう」


 さあ気持ちを切り替えて、攻めの姿勢だ。

 部屋をバンバン売るための何かを考えるぞ。


 スタンピードの補填を無くせば、普通に売れるだろう。

 だが、それでは何時までたっても俺の肩の荷が下ろせない。

 みんなでダンジョンを支えてやっていきたいんだ。


 部屋の機能性は高めた。

 自分で住んでても快適だ。

 気候による環境変化がないからな。


 解放した部屋数30。

 住んでいる部屋数7。

 空き部屋23。


 そうだ。

 テレビCMをやってみるか。

 でもなテレビCMっていうのはある程度本数を打たないと効果がない。

 単発じゃだめだ。

 番組のスポンサーになるぐらいじゃないと。


 冒険者ギルドの全支部にポスターを貼ってもらうか。

 いや、効果は薄いだろう。

 引っ越ししてまで来てくれる人は少ない。

 とにかく、近隣の30支部ぐらいから試してみるか。


 社員募集と分譲ダンジョンの事を書いたポスターを作った。

 誰かの目に留まると嬉しいのだが。


 配信の現状をチェックする。

 まだチャンネル登録者数は1128人。

 ここんところ順調に増えている。

 モンスター24時間ライブ配信の成果だ。

 とにかく収益化はなった。

 だけど雀の涙しか儲からない。


「配信の利益は全部、藤沢ふじさわにやる」

「もともと俺はほとんどタッチしてないからな」

「いいんですか」

「たまにメッセージとかの動画を渡すから、それを配信してさえもらえれば構わない」

「分かりました。立派に管理してみせます」


 なんかバズるようなことがないかな。

 そういうのがあるとメッセージも広く伝わって、やる気が出るんだが。


――――――――――――――――――――――――

俺の収支メモ

              支出       収入       収支

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繰り越し               16,321万円

依頼金          300万円

上級ポーション               304万円

広告費          300万円

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

計            600万円 16,625万円 16,025万円


相続税        2,000万円


遺産(不動産)         0円

ダンジョン        -88億円



 本日はポーションが2個出たのだが、1個は自分用に確保した。

 上級ポーションが必要な強敵には出会いたくないが、そろそろそうも言ってられないだろう。

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