退屈姫、ダイナマイトプリンセスにジョブチェンジする
@yuzukarin2022
第1話 退屈姫は死んだ!
VRMMOは楽しい。
VRMMOは楽しいぞ。
こんな私でもゲームの中でお姫様になれたからな!
しかし、実際にゲームの中で暮らすとなると話は別だ。
私は、ゲームのアバターで転生していた。
ゲームの世界の王国の姫君。長女である。
私は本当のお姫様になったのだ。
最初、私は狂喜した。だが、お姫様は大変だった。
まず、何も自由にさせてもらえない。
こんなもんかと思っていたが、それは弟妹が生まれて違ったのだと分かった。
まず、母親が違う。教育が違う。自由度が違う。
愚かであれ。浪費家であれ。我儘であれ。そんな教育だったのだ。
一応、恥になるからとマナーはきちんと学ばされているが、それだけである。
意図はわかる。つまり、正妃の子である私を愚かに育て、側室の子に継がせたいのだ。下手に動いたら暗殺あるなこれ。
しかし、娯楽も発達してない世界で勉強すらダメというのは地獄である。
しかも、ファッションもセンス的にあれだった。料理もまずい。
頑張って出したアイデアが鼻で笑われた挙句、妹のドレスや弟の料理に使われた事を知って、私はなんの恩恵も得られないのかと肩を落とした。
廃嫡に有利な勉強ならさせてもらえるだろうかと、かのお転婆姫の如く冒険者の真似事を夢見たりもしたが、ダンジョンアタックなど隙をついて暗殺されるだろう。
せいぜい、兵士の訓練を眺めて部屋で見取り稽古するぐらいだ。
プライバシーもない上に蹴落とす気満々だから、部屋でこっそり創作を、なんて真似も出来ない。
なんで私のアイデアノートにしか書いてないものが弟派閥で次々実用化されてんのよ。しかも私は恩恵に預かれないと。
一度、「恵んで」もらえそうな時があったが、流石にその時は罵倒してしまった。
多少マシなだけで改悪された盗品か、オリジナルのゴミか。
結局、少しでもマシなパンとサラダだけ食べる日々よ。
あ、公務の時は全部口をつけて定型文で褒めますよ?
仕事ですから。
退屈だ、が口癖だから、退屈姫と呼ばれるようになってしまった。
さて、私には婚約者が出来ない。
表向きは女王候補だが、裏向きは違うので、難しいのだ。
しかも、国王の血は正妃より薄いので、このへんも微妙な力関係が生じていた。
何せ、正妃様は先王弟と皇族の姫の血を色濃く受け継いだハイブリッドだ。
先王は亡くなり、臣下に降りた先王弟は国王になれず、先先代の妾の子を引っ張ってきた経緯があるので、私の方が血が濃いまである。
国王の独断で私は下ろせないということだ。ただし、正妃が亡くなってるので完全に私が強いわけでもない。
私が辞退する形が一番いい。
故に低い身分のもののハニトラは来るのだが、ゴミを見る目でやり過ごしている。
婚約者を決められそうになっても私の答えは決まって「こんな退屈な男はノー」「私を相手にするには身分が低いんじゃなくって?」。
ある日、苦言を呈してきたお父様に、私はブチ切れた。
「陛下が私を何も知らないお人形さんにして、弟に国王を継がせたいのは知っています。でもね、私は本当の人形じゃないのよ。毎日毎日、お部屋に飾られてるだけの生活なんかさせられて、よくも発狂せずに済んだものだわ。あれもダメ、これもダメ、国政に関係のない勉強すらさせるのが怖いみたいね。許されたのは庭で素振りをすることくらい。おまけに与えられる物はいかにもお金だけ掛けました、長女のバカ姫はこんなに愚かで浪費家ですよーって贅沢アピールのものばかり。それで私が国を継げないぐらい身分の低い婚約者を選ぶのはまあ、わかるわ。でもね。一国の姫の相手なのよ? もうちょっとまともな相手がいないものなの? 陛下の選ぶ男は、身分以外に取り柄がない男ばかり。その唯一の取り柄の身分だって、私には不釣り合いなものばかり。こんな相手しかいないなら、一生独身でいた方がまだマシよ」
陛下は私の反抗に顔を強張らせた。私は、あまり怒らせるのもまずいと思い、付け加えた。
「勘違いしないで欲しいのだけど、弟を国王に推してもいいのよ。暗殺されたくないもの。玉座をあげるから、それに相応しい娯楽を寄越せってだけ。そんなにいけないことかしら?」
「神にでもなったつもりか。何を与えてもつまらないつまらない。お前の取り柄こそ、その身に流れる血だけだ。贅沢アピールのものばかりというのなら、もうそれらは要らぬだろう」
「押し付けはいらないけれど、私の衣装代や遊興費は私の完全な裁量で使えるようにして欲しいわ。私、今まで銅貨一枚だって自由に出来るお金がなかったのよ。表向き贅沢ってなってるけど、私の意思で買ったものって一個もないの。これって異常だと思わない? 完全に人を意思のない人形と思ってなければ出来ない所業だわ。そうそう、弟や妹のお小遣いはおいくらでしたっけ? どこぞの小娘から盗んだアイデアノートで大儲けしたようですが」
「……訳のわからぬことを」
「わからないならいいわ」
こうして、結局私は陛下と争う事になってしまったのだった。
外に出てすぐに、侍女が何やら言ってくる。
「姫様、この事が帝国の耳に入ったら……! 姫様は外交や国政の事を全くわかっておられません」
「ごめんなさいねぇ。そんな最低限知っておくべき外交や国政も習ってないの。教育方針を決めた陛下を恨んで頂戴」
「聡明な姫様なら教えられずともお分かりになるでしょう!」
「そう。そうして生きた人間の私にお人形になれというのね。何も言わず思わず最後には暗殺されるようなゴミに」
「それは……! 姫様は誤解しておいでです!」
「はあ。黙って欲しかったらもう少し待遇を良くすべきだったわね」
そうして、私は部屋へと戻った。
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