2日目 料理が出来ないマリオネッタ
目が覚めると知らない天井が……じゃなくて、何度か見たことのある天井が見えた
いつの間にか寝ていた様だが……
記憶があやふやで、思い出せない
確か、マリオネッタが料理を作ったのは、覚えているが……
見た目は悪くない普通のハンバーグだったんだが……
周囲を見ると、また一糸纏わぬ姿で異臭がした
推測するに、マリオネッタの料理は不味かった様だ
吐くほどに!!
そう思っていると、部屋の襖が開き、マリオネッタが走ってくる
「よかった……目が覚めて……」
表情からは感情は感じられないが、整えられていない姿から心配していたのはわかる
「ごめんなさい、説明書を見なくても大丈夫だと思った」
そして、マリオネッタは僕に頭を下げる
「まったく、レシピを見ずに作ったわけ?僕だったから良かったんだよ!普通だったら処分物だよ!」
「いや、レシピは……」
まったく言い訳とは!
「僕の丈夫な体に感謝するんだね!」
と胸を張るとさっさと話を切り上げた
これから、一緒に暮らすと決めた手前、気にしていては仕方がない
それにしても、オートマタにも得意不得意があるのかと、興味深く思えた。
この不完全さも人類の進歩なのか!
「あと、僕が思うのは、いい加減、服を出してくれない?また、僕 裸になってるんだけど!」
そんな事をより、服だ!僕は早く服が着たかった!
なんでマリオネッタに何度も裸を見せないといけないんだ!
「すぐに準備します。マリオネッタはそう言って部屋から出た」
僕はマリオネッタが隣に部屋でタンスを開ける音を聞きながら周囲を見る
少し古い畳が沈む
「殺風景な部屋だ」
まだ此処に引っ越して日が浅いから家具が足りない
窓はなく周囲襖に囲まれた6畳間
確か、布団はマリオネッタが出ていった右側の襖ではなく、左側の襖だった筈だ
僕は布団を畳むと左側の襖を開ける
2段に分けられた物置として使える
敷布団を下の段、着布団を上の段に片付けるとそのタイミングで、僕の後ろの襖、つまりマリオネッタが出て行った襖から、叩く音と
「着替え廊下に置いておくから、これに着替えて」
そう言って、廊下を移動する音が聞こえた
「まったく、ウブな娘というわけでもないくせに」
そう言いながらも、僕はマリオネッタが入ってこなくて、内心ほっとしていた
何度も裸を見られて、喜ぶ趣味はない!
僕は用意された服に着替えると、マリオネッタはメイド服ではなく、私服に着替えていた
「マー君、買い物に行ってくるので、大人しくしていてください」
そう言って手提げ鞄を持って行こうとするマリオネッタの手を僕は掴む
「僕も行きたいんだけど!」
一人で留守番だなんて、退屈すぎる
「マー君は、まだ病み上がりだから、今日は連れていけません」
僕の願いは無常にも切り捨てられた
もう少しゴネろうと思ったが、
「わかった……行ってらっしゃい……」
思いとは裏腹に僕はマリオネッタを見送っていた
一人っきりになった僕は、家を見て周り、キッチンに立った
「料理の下手なマリオネッタの代わりに料理を作らねば!」
また気絶しては大変だ!冷蔵庫の中を確認する
生鮮食品はダメとして加工食品なら大丈夫だ
あまり料理をしないが、流石加工品!
作り方が手に取るようにわかる
僕が料理を作り終え、入浴の準備を終えた頃、マリオネッタが帰ってきた
「ただいま戻りました」
マリオネッタは少し砂っぽく玄関で体を叩いていた
「どうしたんだ?マリオネッタ!砂まみれじゃないか!」
僕が近づきながら、話しかけるが……
顔を俯けたまま、マリオネッタは僕を避けて通り過ぎながら……
「なんでもありません、それよりご飯とお風呂の準備を……エプロン?」
僕がエプロンをつけている事に気づいた
「ああ、マリオネッタは料理が苦手みたいだったからな!今日は僕が作った!お風呂も準備しているぞ!」
僕は胸を張ってそう言うと、マリオネッタは僕の方を見て驚いた表情をする
感情の乏しい奴と思ったが、こんな顔をするのかと思っていると
「ありがとう」
僕の頭を撫でてきた!?
「きっ気安く撫でるなよな!」
思わず顔がニヤけてしまいながらも僕は悪態をつくが……
マリオネッタはそんな僕の顔を見て
人形の様な目のまま、口元が悪戯っ子の様に少し吊り上がり、僕の頬を人差し指で突っつく
「マー君、照れているんですか?コノ!コノ!」
むかつく!オートマタだ!そう思いながら
「いいから、さっさと風呂に入ってこい!その間に、ご飯を温めておくから!一緒に食べるぞ!」
僕は、マリオネッタの背後に回ると風呂場の方へと押しやりキッチンへと向かった
その後、二人で食事を取り、何事もなく2日目は終わった
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