2 待機中の私、高見佳奈
ニュースが次の話題に切り替わった所で、高見はモニタを消した。運転席に身体を預けて背伸びする。フロントガラスがだいぶ濡れていたので、一度ワイパーで拭った。
違法オートマタが減った次は、自社製品の迷子騒動か……。
笠原工業が警備・医療や家庭用の、いわゆる正規オートマタの他、違法オートマタも製造していた事実は、当然一般には知られていない。
違法というのは文字通り、違法に改造やモデルアップされた機体で、これは笠原工業が秘密裏に軍需産業に介入しようとしていたからであるが、その計画の一部で生み出されたデザイナーベイビーという素材にも高見たちは会ったことがある。
その一人は今は仕事を”引退”し、また一人は北の狭間と呼ばれる異国へ渡り、もう一人は自分のガレージに居候している。そう考えると奇妙だな、と彼女は思った。
「世の中、いろいろあるんですねぇ……」
そう独り言をぼやいていると、同僚から通信が入る。黒澤当麻だ。声色は低い。今日の案件があまり気に入らなかったのはわかるが、自分たちが対応できる内容がこれしかなかったのだから仕方ない。彼女自身、あまり乗り気ではなかったが、少しでも稼がなければ。
「そしたらぼちぼち、がんばりますか」
高見はまた独り言をつぶやいて、車の窓から現場を見上げた。メトロシティ郊外にあるモーテルの一室。そこが今回の現場だった。日暮れ時の時刻、モーテルの共用灯にぼんやり灯りがともる。霧雨のせいで、霞んで見えた。
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