18 お~きの~タカサブロウ~。マイアミのトカチ~

ヒロイン視点

 友達ができた。友達ができた。友達ができた。


 優しそうで大人びていて、穏やかな彼女。私の拙い日本語にも怒らないでいてくれる彼女。


 ニヤニヤが止まらない。今日も帰り道に彼女がいた教室に行ってみよう。はじめての友達のところに。


「✕✕✕✕✕✕?」私の教室では、いつもの彼が話しかけてくれる。「✕✕✕✕✕✕」【たらこパスタ?】

『美味しいですよね……』たらこパスタかぁ……『ミートソースのほうが好きなんですけど……たらこパスタも食べたいです』


 気分が良いときは、何でも美味しい。どんな会話でも楽しい。


「✕✕✕✕✕✕」【勇者になりました? 凧揚げですか?】

『そうだと思います』気分がフワフワして、まるで飛んでるみたい。『勇者……フフ……そうかも……』


 明らかに私は調子に乗っている。今ならなんでもできるんじゃないかというくらい調子乗ってる。世界くらい救えそう。魔王くらい倒せそう。


『このままあなたとも……』


 恋人になれたらいいのに。

 

 ……


「✕✕✕✕✕✕」【それは響きます。ダイコラストミー8の殺人です】

『ダイコラストミー8……ああ、懐かしいですねぇ……』

「✕✕✕✕✕✕」【テクスチャに貼りつけます。ロードーローラーです】

『やっぱりそうですよねぇ……』


 ……ダメだ。今日の私、適当すぎる。世の中のすべてが愛おしくなってる。今ならなんでも許せそう。


 思えば……韓国時代にも友達と呼べる人はほぼいなかった。友達といっても、少し会話するくらい。1日で数回会話する程度の仲だった。


 これからユメさんとは仲良くなれると良いなぁ……傷つけちゃったらどうしよう……


 ……


 そういえば、


『私達って、友達なんでしょうか?』


 それがわからなかった。


 彼はきっと……私のことを孤立させないために話しかけてくれている。ただそれだけなのだ。

 彼が私のことを好きだとか、そんなことはないのだろう。


 ただ彼が優しいから、クラスで孤立している私を放っておけなかっただけ。本当に……それだけの理由なのだろう。


 そんな私と彼の関係をという言葉でくくるのは違う気がする。

 彼は私の……世話をしてくれているだけ。彼から私に特別な感情は向けられていない。


 友達なのか、と聞くこと自体がおこがましいのだ。


『ごめんなさい……忘れてください……』


 一気にテンションが下がってしまった。友達ができたのは喜ばしいことだが、肝心の彼との仲は全く進展していない。


「✕✕✕✕✕✕?」【それは非常に定義が難しい】

『友達の定義、ですか?』

「✕✕✕✕✕✕」【あるいはモノサシであり、尺度的にはグレープフルーツである場合があります】

『なるほど……友情等の感情をモノサシで測るのは難しい……ということですね』


 グレープフルーツの意味はまったくわからないけれど。


「✕✕✕✕✕✕」【それは常に変化します】


 変化する……


 人間関係は、変化する。


 ユメさんとだって、つい数日前まではただの他人だった。だけれど、偶然によって友達という関係に変化した。


 ……ならば彼との関係だって変化できるはずなのだ。今はただの……お世話をされている身だとしても、いつかは……


「✕✕✕✕✕✕」【◯◯◯◯◯です】

『せっかく良い話ししてたのにぃ……』


 なぜ急に下ネタに逃げた? どうして小学生レベルの下ネタを? 意外と良い会話してたのに……いや、下ネタは嫌いじゃないけど……


 まぁなにはともあれ……


 彼との関係を変えるのなら、動くしかないだろうな。


 でも……


 しばらくはこのままでいいかな……

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