14 いくじなし☆

主人公視点

 保健室から戻って、教室。


りんさんはコーヒー派? それとも紅茶?」

「✕✕✕✕✕✕」【あなたと一緒なら、ナンでも良いです】

「ナンでもいいの?」


 コーヒーか紅茶かを聞いたのに、なんでナン? この会話のどこにナン要素が?


 ……僕と一緒なら……


「カレーライスとハヤシライスだったら?」

「✕✕✕✕✕✕」【あなたに合わせます】

「ビアンカとフローラなら?」

「✕✕✕✕✕✕」【あなたです】

高山たかやまさんと僕なら?」

「✕✕✕✕✕✕」【調子に乗るなゴミめ】

「ごめんごめんごめん……」


 調子乗りましたすいません。でもそんな怒んなくていいじゃん。ゴミまで言うか。


 ……りんさん……たまにバイオレンスだよなぁ……


 ……


 なんかゴミって言われて、一瞬ゾクッとした。新たな扉が開きそうだった。


 ……


「……ねぇ……もう一回、僕のことゴミって言ってみて」


 僕がそう言った瞬間、廊下から咳き込んだ音が聞こえてきた。どうやら誰かがむせたらしい。

 だがまぁ、僕たちには関係のない話だ。


「ちょっと罵倒してみてくれると、嬉しいかも……」


 なんか変な趣味に目覚めた……いや、趣味に文句をつけるのは良くない。


「✕✕✕✕✕✕」『首を切り落とします』

「そこまでは目覚めてないかな……」そこまでされたらさすがに怖い。「もうちょっとマイルドに……」

「✕✕✕✕✕✕」『スクワット1回』

「マイルドすぎる……」


 振れ幅がすごい。ジキルとハイドか……?


「えっとね……踏んでくれるくらいで……あるいは、ゴミを見る目で……」

「✕✕✕✕✕✕」【この変態さん】

「そうそう。それくらい」


 この会話聞かれたらヤバくない? 僕がとんでもない変態にならない? 社会的に終わらない?


「ご、ごめん……やっぱり今のなし……」

「✕✕✕✕✕✕」【いくじなし☆】


 なんだその☆は。なんで翻訳ソフトにそんな文字が出てくるんだ。ちょっと興奮しちゃった。


 ……


 ダメだ……新たな扉が開かれかけてしまった……外では閉じておかないと……


 ……この会話……聞かれてたらヤバいな…… 

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