ヒロイン視点

「✕✕✕✕✕✕」【最近はキーボードが好きです】


 キーボード……


「タイピングするやつ、ですか?」タイピングの仕草をして見せる。「それとも、楽器のですか?」

「✕✕✕✕✕✕」【主に指を使います】


 どっちもなんだよなぁ……タイピングも演奏も指を使うんだよなぁ……


「……演奏するんですか?」

「✕✕✕✕✕✕」【それは指を使います】


 だからどっちも指を使うんだけど……

 なんで頑なに指を使うという情報しか言ってくれないんだ……


「✕✕✕✕✕✕」【フィンガーによって入力します】

「どっちもそうですね」

「✕✕✕✕✕✕」【主体は指です。指を動かします】


 どうしよう……全然情報量が増えない……指を使うことしかわからない。なにもわからない。


「✕✕✕✕✕✕」【指によって入力されます】

「……ほ、他の情報を……お願いします……もっと詳しく……」

「✕✕✕✕✕✕」【親指、人差し指、中指、薬指、小指を主に使います】

「そこを詳しくされても……」


 指の内訳を言われてもわからない。どっちのキーボードも5本の指を使うのだから。


「✕✕✕✕✕✕」【ドを入力することができます】

「じゃあ楽器……とも限らないですね……」


 よく考えれば、タイピングでもドは入力できる。むしろ入力という言葉を使うのだから、タイピングな気がしてきた。


「✕✕✕✕✕✕」【私はキーボードによって、なにかを生み出します】


 抽象的。あまりにも抽象的。絞りきれない。タイピングでも楽器でもなにかは生み出せる。


「✕✕✕✕✕✕」【主に指を使います】

「わかりましたから……」


 指を使うのはわかった。もうわかったから他の情報がほしい……


 これは……クイズなのか? 高度なクイズなのか? だとしたら、ヒントが下手すぎる……


「✕✕✕✕✕✕?」【それは音が鳴ります】

「じゃあ楽器……とも限らない……の?」


 わからん。楽器な気がするけど、わざわざ音が鳴ることを強調するということは、タイピングのほうか? 軸によって異なる打鍵音のことを言っているのか?


「✕✕✕✕✕✕」【それは長さが異なるものがあります。コンパクトの場合があります】


 じゃあ楽器……とも限らないな。

 楽器のほうは鍵盤の数が少ない場合があって、タイピングのほうはテンキーがない場合が……


 ……どっちだ……どっちの話をしているんだ……


「✕✕✕✕✕✕」【安いものでは1円。高いものでは500兆円します】

「じゃあ……どっち?」


 わからん……どっちのキーボードも相場がわからん。どっちにしても1円も500兆円もない気が……


「✕✕✕✕✕✕」【私はそれを得意とします。今度、一緒に見てください】


 じゃあ楽器……とも限らないな。タイピングも技能の1つなのだから、見せることだってあるだろう。

 にしても……彼はキーボードが得意なのか……どっちのキーボードか知らないが、とてもすごい特技だ。どっちも苦手な私からすれば、雲の上の技能だ。

 

 ……


 あれ……


 今度一緒に見てください……


 ……


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