第15話
「この階はかなり広いね......」
そこはとても広い空間があり、床は水浸しだった。
「ええ、ちょっとまってください。 奥から何か音が......」
ペイスにいわれて耳を澄ますと、風のようにブォーという音が響いている。 少しずつ音の方に近づく。
私たちがランタンを掲げると、巨大な影がうつる。 そこに寝そべっているのは、数えきれないほどの頭を持つ巨大な翼を持つ爬虫類だった。
「これってドラゴン......」
「私もおとぎ話でしか知りませんが、多分......」
「ムーサどの、このドラゴンの情報を頼みます」
ヘスティアは小声でムーサに聞いた。
「え...... ええ、確か古い書物に書かれていたことは、神話の時代に生まれたモンスターで世界に数体いるといわれています。 これは頭がいっぱい多分ラードーンですね......」
「それで弱点は」
私が聞くとムーサは首を降った。
「わかりません、ただ鱗は固いけどお腹は鱗がないはず、そこならあるいは......」
「おい! ヒカリ! あれ!」
カンヴァルの声でドラゴンの方を見ると、その無数の頭のまぶたがあいており黄色い目が一斉にこちらを見た。
「来ます!」
ペイスがそういうと、同時にドラゴンは翼をバタつかせた。 突風が私たちを襲う。
「くっ!」
私は顔のひとつに魔法銃を撃ち込んだ。 しかしカンカンとかわいた音を立てた。
「やっぱり効かない! 相当顔も固いよ!」
「わかってるよ!」
カンヴァルとヘスティア、オノテーとレイアが前に走り、私とペイス、ムーサは魔法を放つ。
ドラゴンたちは魔法にいやがる素振りを見せた。 そのすきにカンヴァルたちが周りを囲む。
「グラビティハンマー!」
「セイクリッドブレード!!」
「バーストランス!!」
「フレイムソードスマッシュ!!」
ヴァルカンたちのスキルがドラゴンに当たると土煙がまう。
「一旦引いて!」
私の声でみんな引いてきた。 土煙の中、光るいくつもの目が見えた。
「だめだ!! ほとんど効いてない!」
ヘスティアがいうと、カンヴァルもうなづいた。
「ああ、しかも伏せてて腹への攻撃が通らないぞ!」
(何とか鱗のないところを攻撃......)
「みんな! 気を付けてください!!」
ペイスがそういう。 ドラゴンは立ち上がると複数の頭がみな口を大きく開けた。
「
ムーサが叫ぶ。
「皆さま私たちの後ろから動かないでください!」
オノテーとレイアが前にそろってでる。
「シャインウォール!!」
「シールドドーム!!」
真っ赤な炎が私たちを包むが、オノテーとレイアの半円と壁の光バリアが炎を防いでいる。
「どうするヒカリ! こんなブレスそう何度も耐えられないぞ!」
カンヴァルが叫んだ。
「まって! 今考えてる!!」
(お腹を攻撃したいけど、下に潜り込むのは難しい! ほかに鱗がない場所...... よしやるしかない!!)
「このブレスが終わったらすぐには吐けないはず! ペイスとムーサは魔法で真正面から攻撃! そのすきにカンヴァルは右からヘスティアは左から攻撃終わったらドラゴンから離れて!」
「わかった!!」
「ええ!!」
ブレスが終わった瞬間私たちは動いた。
「アクアブリッド!!」
「エアロショット!!」
ペイスとムーサの水と空気の魔法がドラゴンに当たる。
「フレイムソードラッシュ!」
「ウェーブハンマー!!」
二人がドラゴンを左右から攻撃する。 怯んだすきに私が真正面から突っ込んだ。
「二人は離れて!! 更に知覚加速!!」
強く知覚加速を使うと頭に激痛がはしる。
(うっ! 更に動きが遅くなるけど...... 意識が......)
意識を失いそうになるのをこらえ真っ直ぐ前に走る。 ドラゴンは伏せ攻撃を防ごうとしている。
(ブレス!!!)
私が近づくと、そのときドラゴンは地面に爪を立て体を回転させた。 尻尾が目の前に迫った。
「しまっ......」
(かわせない)
ハッと気がつくとドラゴンは伏せている。
(なに!? 今の!)
私は足をその場で止め後ろに飛び退いた。 ドラゴンは地面に爪を立て体を回転させ尻尾を振り回す。 すんでのところで尻尾を回避できた。
「やっぱり! いや、今は!!」
ドラゴンはブレスを吐くために口を開けた。 私は銃を構えた。
「ここ!! サンダーブラストボルト!!」
銃口から放たれた雷は回転しながらドラゴンの口に吸い込まれると、一瞬大きな音がしてドラゴンはその巨体を痙攣させている。
「グオオオオオオオォ!!」
そして大きく咆哮すると、地響きをたて横倒しになった。
「いまよ!! みんな一斉にお腹へ攻撃!!!」
私の号令で、皆の魔法と攻撃がドラゴンへと集中する。 私も残りのありったけの魔法弾を撃ち込んだ。 するとドラゴンたちは首をもたげようとしたが、力なく首が地面へとうなだれるように続けて崩れる。 そしていつしか動かなくなった。
「や、やった」
私はそのまま意識を失った。
「ふえ! ここが王宮か!」
一週間後、私は荘厳な雰囲気の王宮にいた。 魔獣ラードーンを討伐したことで招かれたのだ。
「王から直々に招かれているんです。 ヒカリはそそうのないように」
「ヒカリさま、お願いしますね」
「ええ、後生ですのでお願いします」
ヘスティア、オノテー、レイアが次々とそういった。
「なんで私だけにいうの!?」
「一番なんかやらかしそうだからだろ」
カンヴァルがそういうと、ペイスとムーサが苦笑している。
中央の巨大な扉が開き、中へと招かれる。 周囲には貴族たちが立ち並ぶ。 真ん中に王座があり威厳のある王がすわっている。
(あれがこの国のレクシス王か...... でも少しやつれている感じ)
「前へ」
私たちは進むよう促され赤いじゅうたんの上を歩いた。 王様の目の前に進むと膝をおり、頭を下げる。
「その方たち、こたびの魔獣ラードーンの
咳をしながら、王様は笑顔でそういう。
(体が悪いのかな)
「そこで約束通り恩賞を授ける。 何でも望みを言うがよい」
「王様。 ならばギルドの設立のご許可をいただけませんか」
私がいうと王様は怪訝な顔をした。 周囲の貴族たちもざわめいた。
「商業ギルドならばもうあるであろう?」
王様がそういったとき、ヘスティアが口を開く。
「この者たちはある仕事をしています。 それは依頼をうけ時にはモンスターを討伐する仕事です」
「ヘスティアか久しいな。 ほう、モンスターの討伐かよきことだな」
「しかしながら、依頼をうけることを商業ギルドにとがめられ、辞めねば商業ギルドより退会を命じられております」
「なに...... 詳しくもうしてみよ」
「はっ、どうやら商業ギルドが依頼をうけ仕事をすることで損益がでると言いがかりをつけ、このヒカリの仕事を妨害したのです。 元々モンスターの討伐により得られた商品の売買も阻止したもよう。 これには商人や国民にも不満がでております」
「なんだと、商業ギルドが...... ロキュプスク、貴公が商業ギルド統括をしておったな。 これはまことか」
そういうと周囲にいた中から一人背の高い左目に眼帯をつけた男が歩みでる。 その右目は冷たく射るような視線でこちらを一度みた。
(こいつがロキュプスクか)
「いえ、王よ。 私はそのような話し聞いてはいません...... 事実ならば、おそらくギルドの幹部たちが勝手にそういったのでしょう」
「あなたが承認したとギルドの幹部グランバルが証明書類を突きつけましたが」
私がそう追及すると眉もひとつ動かさない。
「ふむ、仮にあったとしてそれは私の名前を勝手に使ったという不届きものがいたということだろう」
(こいつ知ってるくせに! もう腹立ってきた! 魔法をぶちかましてやろうか、いやダメだ! がまんだ! がまん)
「......そうかもしれませんね。 でも王様、恩賞として私たちは新しいギルドを立ち上げたいので承認をいただけますか?」
なんとか我慢してそう王様に直訴した。
「王よ。 ギルドの数を増やせば我も我もと収拾がつかなくなりましょう。 それにモンスターの素材を獲得するために怪我人や重傷者がでているのも事実ときいております。 それを憂い商業ギルドが強権を用い停止を命じたのもうなづけるかと」
ロキュプスクはそう横やりをいれてくる。
「むう......」
王様は判断しかねているようだ。
(くそっ、うまく誘導しようとしている。 何かこの状況をかえないとまずい)
「ロキュプスク様。 だからこそ私たちのギルドが必要なのです」
突然静かにペイスが話す。
「ペイス?」
「なに......」
ロキュプスクはペイスを睨み付ける。
「確かに普通の人々がモンスターに関わるのは危険。 ですから私たちが管理し適切な装備や戦いかたを教えてモンスターに対するのがよろしいかと存じます。 ここにいるヒカリと私たちはいくつかのダンジョンと魔獣を討伐した実績と経験があります」
そう毅然としていった。
「ふむ、確かにそれはワシの耳にも聞き及んでおる。 コアモンスターの討伐による往来や商業の活性で国も安定しているな。 モンスターを狩るものが増えればより安全となろう」
王はうなづくが、ロキュプスクは首をふる。
「王よ。 このようなことに耳を貸してはなりません。 ギルドを無用に増やせば混乱をきたす。 国のなんたるかを知らぬ者の
ロキュプスクはペイスを睨み付けていった。
「私たちは魔獣を倒してえる恩賞でギルドを設立しようとしています。 それほど魔獣を倒せるものがいるとは思えません」
臆せずペイスはそう続けると、ロキュプスクはおし黙った。
「......確かにそうだな。 ふむ、よかろう。 ヒカリお主にギルドの設立を認める。 よいなロキュプスク」
「......御意」
王様がそういうと、ロキュプスクは静かに頭を下げた。
「はい! ありがとうございます王様」
私たちは礼をいい、王の退席後その場をあとにした。
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