第12話

「ここからモンスターがでてきてたね」


「ええ、ここがダンジョンなのでしょう」


「ここか......」


 私たちは洞窟へと足を踏み入れる。 中は薄暗くはじめじめしている。 遠くで水の音も聞こえる。 


「川でもあるのかな」


「確かに水の音ですね......」


 私たちが話しているとヘスティアさんが制した。


「いる!」


 洞窟奥で何かが動いている。 ランタンを近づけるとそれは大きなキノコのようなものだった。


「サンダー......」


 私が魔法で一掃しようとすると、ヘスティアさんが飛びだし剣で数体を切りさいた。


(やっぱりかなりの腕前だ。 あの剣の質の悪さでモンスターを簡単に切り裂いた)


「ヘスティアさん。 この剣を使って」


 私はメタルクラブの剣をヘスティアさんに渡した。


「これは軽い」


 ヘスティアさんは剣をふるいモンスターをきる。


「すごい切れ味ですねこの剣!?」


「コアモンスターのメタルクラブからつくってもらった剣なの。 ヘスティアさんならモンスターを軽くきれるよ」 


「ありがとう借り受けます。 確かにこれなら容易く倒せる!」


「これ、ポイズンマッシュ。 毒のキノコのモンスターです気をつけてください!」


「毒か、毒消しは用意してあるけど、実際は受けたことがないからな」


 先に進むとどんどんキノコのモンスターが現れる。 一応カンヴァルのために素材として鞄にいれて持ち歩く。


「すごい余裕ですね」


 ヘスティアさんが感嘆するようにいう。


「ははっ、知り合いに頼まれてるの」


 そして広くなった場所にでると妙な香りがする。


(なにこの匂い......)


「ヒカリ! 前に何かいる!!」


「巨大なキノコ!?」


 奥にキノコが何か紫の煙をだして動いている。


「とりあえず私が! サンダーブラスト!!」


 銃から収束された雷がキノコを貫く。 キノコの体を貫通した。


「やりました!」


「いやペイスどの! よくみて!」


 キノコの穴はモコモコと動き出し穴が塞がっていった。


「再生した!?」


「ファイアアロー!!」


 ペイスの炎が矢がキノコに近づくとすごい爆発音がして、こちらへ爆風と衝撃が伝わる。 


「ペイス!! あの紫の煙、引火する!」


「わ、わかりました」


「とりあえず切るしかないか!!【ソードスラッシュ】」


 ヘスティアさんが高速で移動すると剣をふるい、何度もキノコを切りつける。 だが切れたさきから再生していく。 


(速い! あれスキルね! でもスキルで何回斬ってもまた再生してしまう! どうする!? 再生する体をブラストで吹き飛ばすか、いやそれじゃ倒しきれない...... イコルを狙いたいけど、あの再生スピードじゃ......)


 キノコは一旦縮むと一気に伸び、紫の煙をさらに吹き出した。 


(なにあれ!? 知覚加速!!)


「フ、ァ、イ、ア......」

 

 そう音がするとキノコの前に小さな炎ができる。


(こいつまさか魔法!? 火を放って爆発させるつもり!!)


「仕方ないサンダーボルト!!」


 即座に魔法を放った!! 煙に引火してその場で爆発した。


「ヤバい! こいつ魔法を使うよ! こっちにまで煙を放って爆発を起こそうとしてくる!」


「くっ! ではどうすれば!」


「ヒカリ!! 煙を出してないうちに魔法で攻撃しますので! その間に何か策を考えてください! ファイアボール、ファイアボール」


 そういってペイスは魔法を連発している。


「わかった!!」


(とはいえ、どうする? 煙を出す前に倒しきる...... いや、あの再生力なら耐える可能性が高い。 もう魔力も残り少ない、できてあと二発、これで倒せなかったらアウトだ。 一度引くか...... だがこいつを倒さないと引き返すときに、こいつの眷族にであったらつむ)  


「ヒカリどの! あれ!」


 その時、キノコをみていたヘスティアさんが叫ぶ。 見るとキノコの体が溶け、一部青く光る結晶が見えた。 


(イコル、やはりあれを狙うしか、でも、あそこはさっきヘスティアさんが攻撃したところだ。 体の中を移動させているのか...... サンダーブラストとボルトを連射できれば!)


 銃に集中して魔法を込める。


(ブラストとボルトを込める!)


 私は銃をかまえ連発する。 すると雷が回転しながら撃ちだされた。


「えっ!?」 


 そしてそのままキノコに当たると爆発し、傘だけを残してキノコは弾けとんだ。 そしてイコルが地面に落ちる。  


「ソードスラッシュ!!」


 高速で近づいたヘスティアさんはスキルで集まろうとするキノコの肉片ごと結晶を切りさく。


「なっ、ヒカリ! いまのは」


 ペイスは肩で息をしながら近づいてきていった。


「わからない。 二発撃ったつもりなのに......」


 私は銃をみる。


「はぁ、はぁ、でも、なんとか倒しましたね」


「ああ、さすがにコアモンスターを倒したものたちです!」


「まあ、簡単ですよ」


 そういって三人ともその場でへたりこんだ。



「では、二人とも本当にありがとう! この国を代表してお礼を、この事を国に伝えるため私は先に帰ります」


 洞窟からでたあと、ヘスティアさんはさっそうと帰っていった。


「あのケガで、元気だね」


「普段から鍛えているのでしょうね」


 私たちはヘスティアさんとわかれ店に着いた。


「お、おかえりなさい!!」   


 ムーサちゃんがあわてて飛び出してきた。 


「だ、大丈夫ですか...... ヒカリさん、ペイスさん」


「うん、大丈夫」


「私も魔力がつきて治癒できないだけです。 すぐ回復しますよ」


「で、ムーサちゃん何かあった?」


「えっと、アーノルドさんが見えられて、少し話がしたいと...... また明日くるそうです」


「アーノルド?」


「ほら、商業ギルドにいた商業ギルド長の方です」


「ああ、あのおじさんか、何のようだろ?」


 私とペイスが話しているとき、ムーサちゃんが持ってきた荷物をみている。


「ああ、それダンジョンでとってきた素材」


 そういって私はそのかばんの中をみせた。


「これ、ポイズンマッシュ、パフュームマッシュの傘と柄ですね」


「わかるの? ムーサちゃん」


「え、ええ、本で色々なモンスターなんかをみて知っています」


「じゃあこのでかいのは」


 私はコアモンスターの傘をみせた。


「それは、ラージマッシュの傘だと思います。 この紫の胞子が可燃性ですごく燃えやすいはず......」


「すごい! そのとおりです!」


 ペイスは拍手すると、ムーサちゃんは照れ顔を赤くする。


「い、いえ、本の知識をいってるだけで......」


「ねぇ、これは何か知ってる?」


 私は銃を見せる。


「ええと、魔法銃です。 魔力とか魔法とかを撃てる武器......」


「これのこと他に何か知らない」


「えっと、確か魔法石に魔法を蓄積して、複数の魔法を混合できるって書いてありました」


(やっぱり、魔法を混ぜられるのか!)


「ムーサさん。 あとはどんな知識を持っているんですか」


「読んだものは...... 歴史、モンスター、アイテム、あとは魔法とか...... かな」


「すごいよ!! ムーサちゃん! これはすごい才能だよ!」


「そ、そんな、ただ好きで読んでただけで......」


「そんなことはないですよ。 立派な才能です」


「そうだよ。 私たちが持ってきたものを教えてもらえるんだから、これは私たちにとってすごいことだよ!」


「そ、そんな、えへへ」


 ムーサちゃんは照れて笑う。  



 次の日、朝早くアーノルドさんがやってきた。 


「あ、ああ、ヒカリ様、ペイス様、よかったおいででしたね」


 その顔は不安げで汗をかいている。


(ずいぶん焦ってるみたいだけど、どうしたんだろ?」


「どうしたの? ちゃんと供託金は払うよ」


「い、いえそうではなく、今フランの雑貨屋に素材を卸していますね」


「ええ、バーバラさんのところに売れない素材を加工して売ってもらっているのですけど」


「そ、それなんですが、新しいものはおろさないでください」


「ん? どういうこと? 別に違反はしてないよね」


「......もちろん。 ですが、その行為が商業ギルド内で問題になっているのです......」


「問題...... どういうこと?」


「本来の大手の雑貨店の売り上げが激減しているのです」


「フランさんのお店が売り上げあるから?」


「それだけではありません。 それをならって小規模の店がモンスター素材を扱い始めたからです」


「ほう、いいことじゃないの」


「...... 人びとにとってはそうです。 安くいいものが手に入るし、今まで価値のなかったモンスターの素材を売ることができます。 だから、モンスターを狩るものさえ出てきた。 ですがわかるでしょう......」


 そういって黙ってこちらをみる。


「つまり、大手の売り上げが減って、それを不満に思う商人たちがいる」


 ペイスがいうと、アーノルドさんはうなづく。


「商人だけではありません。 その繋がりある貴族たちも...... このまま売れるものを提示し続けると、彼らの怒りはあなたたちへと向かうのです。 とても危険なことになります」


 そう心配しているような顔をした。


「つまり、忠告にきてくれたわけだ」


「私には知り得ませんが ......上のほうで何か話し合いが行われているようなのです。 今は静かにされていたほうがいい」


「わかった。 アーノルドさんありがとう。 とりあえずあまり派手なことをしないでおくよ」


「ああ、よかった。 では私はこれで」


 そういうと安心したように帰っていった。


「むう、まさか目をつけられるとは」


「素材を卸して彼らの領域を侵害していたようですね」


「ても、それが競争する本当の商売じゃん」


「ええ、ですがこの世のなか本当の競争なんてものはありませんからね。 どこかの誰かが権力や財力そういうもので牛耳り、競争に見せかけているのが真実でしょう?」


「......まあね。 腹立つけど、しゃーないか。 安定しそうな今はもめたくないし、とりあえず新しい素材の開拓は諦めるか」


「ですね。 このまま続けて新しいものを作れば、何かしてくるかもしれませんし、静かにしてればなにもされないでしょう。 時期がくるのを待ちましょう」


 その時、私たちはそう思っていたが、すぐにそうではないことを知ることになる。

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