第3話

「何かくらいし、変な感じ」


 暗くて草木がうっそうと繁る森の中を私たちは歩く、今にもなにかでそうだ。


「ええ、魔力が濃くて強いモンスターが生まれるんですけど、素材になるモンスターが多いんです」


「魔力が濃いのか...... そういやモンスターってどっから来るの?」


「前に行ったようにモンスターは魔力が物質や生物に集まり生まれますが、古代の魔法で生まれたり、ダンジョンから生まれてくる場合もありますね」


「だんじょん?」


「ええと、ダンジョンと言うのは遺跡だったり、【コアモンスター】という強力なモンスターの魔力によって作られる迷宮のことです」


「モンスターのお城みたいなもの?」


「ええ、そこで眷族をうみ、そこから人を襲うようにでてくるんです。 その眷族はコアモンスターの魔力を供給され通常より強いんです」


「ふーん、まあ、入らなければいいんでしょ」


「それがコアモンスターが魔法を使う場合、まれに空間に穴をあけ、中に引きずり込まれることがあるらしいです。 奇跡的に帰ってこられた人がそういっていますから」


「へー、それには注意しよう。 さてここらでモンスターを探しますか」


「あっ、あそこです......」


 そう小声で身を屈めたペイスさんの後ろからみると、木の向こうに人ぐらいの大きさカマキリがうろうろしている。


「な、なにあれ!? でかっ!!」


「ええ、キラーマンティス...... 数は多いんですが素材にはならないですし、動きも速くて強い、手を出さない方がいいですね。 そっと、あっちに行きましょう」


 私たちはその場から静かにはなれると、小型のモンスターたちを倒し始める。 しばらく狩ると木々の間から少し見える空に太陽がみえた。


「もう昼ね。 休憩しよっか」


「ええ、いつもの三倍は稼いだと思いますから、十分です」


 そういいながらペイスさんは、持っていた鞄からバケット取り出した。 バケットの中にはフランスパンのようなパンにハムやチーズを挟んだものがはいっている。


(これ朝に作ってたやつだ)


「これ美味しいね!」


「ええ、ポールさんの店のパンは美味しいんです。 それにしてもすみません。 私あまり役に立ってませんね」


 そう落ち込んだように行った。


「へーき、へーき、私だけで。 回復もしてもらってるし、ペイスさんのファイアボールじゃ、素材が丸焼けになって売り物にならないもん」


「そうなんです。 覚えられたのが、治癒のヒール、その上位のエクスヒールとファイアボールだけなので、今まで焼け残ったものを売っていたんで売り上げは少なくて」


「そうなんだ。 それで私と一緒に...... それで魔法ってどう覚えるの? 私も覚えられるかな」


「大体の人は魔力を持っていますから、訓練すれば覚えられますよ。 ただ適性があって覚えるものを選択できる訳じゃないですけど...... 帰ったら練習してみましょう」


「うん、ありがとう...... あれなに? 何か黒いのが見えない」


 何か向こうの方から黒いものがみえる。


「えっ? あれは...... そんな!! 走ってください!!」


 ペイスさんは焦り、バケットを捨てて走り出す。


「どうしたのペイスさん!?」


「だめです!! 速く走って!」


 だがどんどん黒い壁らしきものが迫ってくる。 ペイスさんが遅れさけぶ。


「私のことはいいから先にいって! 絶対に止まらないで!」


 私は足を止める。 すると黒い闇が私たちを包み、次の瞬間、洞窟のような場所にいた。 そばにペイスさんがうずくまっている。  


「ここは......」


「ダンジョンです...... ごめんなさい。 私がいたから逃げられなかったんですね」


 沈んだ声でペイスさんがつぶやく。


「大丈夫だって! 帰れた人もいるんでしょ! 悩んでいても一緒、今はどうやって帰るかを考えよ。 ねっ!」  


 私がはげますと、立ち上がりうなづいた。


「そうですね...... 確かにそうです!」


「うん! そうよ諦めてもどうにかなるわけじゃない! なら諦めない! それでここから帰った人はどうやってでたの?」


「ええっと、ダンジョンから帰るには...... 多分眷族が外に出る場所があるはず、そうしないと魔力を集められないから」


「なるほど...... つまりこの洞窟にいるモンスターを倒していけば、そこにたどり着くのか、よし早速いきましょ」


 私たちは慎重に洞窟内をすすむ。

 

「何かが来る!」


 何かザッザッと地面を何かが動く音がする。 遠くからうかがうと、キラーマンティスが歩いている。 


「キラーマンティス...... このままだとこっちに来る。 もし後ろからも来て挟まれるとまずい、ここで倒そう。 私が行くからペイスさんは魔力を温存しておいて」

 

「わかりました。 私が誘い出します!」


 そういうとペイスさんは走り出した。 それを見てキラーマンティスが羽をバタつかせて飛び上がりペイスさんを追う。

 

(知覚加速!)


 私の横をとぶキラーマンティスを剣で切りつける。 キラーマンティスは反応して避けようとする。


(むだよ!! こっちはゆっくり動いて逃げる方を切り裂けるんだから!)  


 私の剣は避けようとするキラーマンティスの首を切り裂く、首を失ったキラーマンティスは地面に落ちもがいている。


「よし! やれる!」


「はぁ、はぁ、大丈夫ですか!」


 もったりもったりペイスさんが走ってくる。


「ええ、知覚加速なら反応速度の速いものでもとらえられるから」


「すごい...... あのキラーマンティスを一撃で、これなら脱出できるかもしれません!」


「その意気よ! 他のモンスターも探しましょ」


 私たちは洞窟内を進んだ。


「ファイアボール!!」


 赤いカマキリを炎の球体が包む。


「それが魔法か! すごいねペイスさん!」


「いえ、ですが、これはレッドマンティス...... どうやらこの洞窟マンティスの巣みたいですね」


「確かにさっきからカマキリばっかりだ。 外にいたのもここから出たのかも」


「早く出ましょう」


 私たちは洞窟をカマキリを倒しながら進む。 しばらく進むとカマキリがでなくなった。

 

「......モンスターがいない。 もう全部倒しちゃったのかな」


「わかりませんが、あっ! あれ木の根っこ」


 見るとそこは仄かに明るくなり木の根がみえていた。


「外だ!!」


 私たちはその方向に出ていった。 


「あれ? 外じゃない......」


「ええ...... 上に光る丸いのがあります。 光っていたのは、あの光のようですね」


 そこは広い場所で上を見ると大量の光るものが点在している。


「これ木?」


 回りを見ると壁際に大量の根っこが生えてこの部屋を包んでいる。


「これは!? ヒカリさん出ましょう!!」


 そうペイスさんが叫ぶ。 すると上から光る丸いものがいくつも来た道に落ちた。 


「あれ動いている!?」


 その丸いものから大きなカマキリが出てきた。


「まさか卵だったの!!」 


「ヒカリさん! あれ!!」


 後ろを振りかえると、木の幹らしき高いところに複数の赤い光がみえる。 


「あれは!?」


 目がなれると見えてきたのは、木と同化した四本の鎌のような足をもつ巨大なカマキリだった。


「やはりコアモンスター!! ヒカリさん逃げましょう!」


「ダメ!! 後ろにカマキリたちが動いている。 生まれたばかりで動きが遅いけど数が多すぎる! もうやるしかない! 援護してペイスさん!」


「えっ!?」


 私は木の幹へと走り出した。 


(あいつ木の幹と同化してるから動けない! さっきの話だと、こいつをやれば眷族のモンスターがかなり弱るはず!)


 巨大なカマキリが口を開いた。


(知覚加速!!)


 ゆっくりと緑の液体が口から吐かれた。


(毒液!? かわせる!)


 私はよけ、幹にかけ登ると剣で巨大カマキリの胸あたりを切りつける。 


「固い!!」


 切り裂けず剣が胸に刺さり抜けなかった。 その時鎌のような足がこちらの視界にはいる。


「知覚加速...... ダメだ間に合わない!」


 その時、近づいて来たカマキリの足が炎に包まれる。 剣をはなし、そのすきに下に飛び降りた。


「助かった!! ペイスさん!」


「とうやら木なので炎が効くようです!」


 燃えた足をバタつかせている。


「ファイアボール、ファイアボール!!」


 ペイスさんが炎の玉を放つと、鎌のような足でそれを切り裂く。


「だめ!! あの足は魔力を切り裂くみたいです!」


(まだ炎は消えてない...... だから足に邪魔されずに体に炎を当てればいい。  ても剣は体に刺さったまま。 持ってるのはナイフだけ、このナイフじゃ多分あの足は切れない。 どうする!?)


「ペイスさん! その魔法ってナイフにまとわせられる!」


 そういってナイフを見せる。


「そのナイフは魔法で強化されてますから可能ですが、熱すぎて持てませんよ......」


「それは大丈夫! あのでかいカマキリの足に一度魔法を撃ち込んで!」


「えっ!! わ、わかりました」


 そういうと魔法を放つ。


「知覚加速!」


 私はナイフを三本続けざまに投げる。 魔法は足で切り裂かれ、ナイフは足に当たった。


「ペイスさんもう一回!!」


「は、はい!!」


「知覚加速!!」


(二本目と三目)


 ゆっくりと私は動く腕でさっきの二本目と同じタイミング、三本目と同じ方向と力でナイフを投げる。 


 放たれた炎は、鎌のような足で切られる前にナイフに当たり、カマキリの胸に当たった。


「よし!!」 


 炎は胸に燃え移るとカマキリは足を振り回してもがいている。


「ファイアボール!!」


 ペイスさんが続けて放った炎の球がカマキリの顔に当たり、すぐに全身炎につつまれる。 すぐにそれは根や枝に燃え広がった。


 上から光るたまや木の枝が落ちてくる。 下のカマキリたちはパニックとなり動き回っている。 

 

「ヒカリさん!!」


 その声で自分の体をみると光輝いている。


「これは......」


 その光が収まると森の中にいた。


「どうやらコアモンスターを倒したことで元の場所に戻ったようです......」


 そばにいたペイスさんはその場にへたりこむ。


「あの洞窟は?」


「多分、この森のもっと奥にあって、そこに吸い込まれたのかもしれません。 あのマンティスたちも洞窟からでてきていたのでしょう」


「そうか...... あっ! 剣があいつにささったままだ! ごめん、形見なのに......」


「かまいませんよ、どこにでもある剣です。 それより命があったのが奇跡なんです。 ヒカリさんのお陰です」


「いやーそれほどでもあるけど」 


 そう笑っていうとペイスさんはわらう。 二人でなんとか森からでることに成功した。

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