第27話「戦いの終わり、新たなる道」

ビートは遂にベルアゼスを倒した。

だが……。

「フハハハハッ……やるな、音楽の戦士共……」

何処からか不気味な声が聞こえて来る。

「誰だ!?」

闇が集まり影を形作る。

「我が名はルシウス……」

「ルシウス!?お前がベルアゼスに取り憑いていた悪魔か!!」

ビートが尋ねる。

「如何にも」

「今度はお前が相手って訳か!!」

「フンッ……今ここで貴様らを消すのは造作もない事だが……生憎今、お前達に興味が無いのだ」

「はぁ?」

「いずれ、貴様らとも決着を着ける事になるだろうが……今日の所は見逃してやる。さらばだ」

そう言ってルシウスは去って行った。

「何だったんだ?アイツ……」


そしてルシウスが向かった先には……。

謎の組織のメンバー、スカーとブラウが居た。

「お前達か、悪しき心を持つ者は……」

「ああ……悪魔ルシウスよ……我々に力を貸してくれ」

「ほぉ……貴様らの深き闇……中々居心地が良さそうだ……良かろう。我が力存分に使うが良い」

スカーはルシウスと契約し何処かへ姿を消した。


戦いが終わり茂達はミューズと合流。

「ミューズさん……」

「皆さん……戦いは終わりました。本当にご苦労さまでした」

「でも……まだルシウスって奴が……」

「そうですね……ルシウスとはまた戦う事になるでしょう……しかし、今は戦いから離れ身も心もしっかりと休めて下さい」


それから数週間後、ミューズを中心に戦士達は奏での戦士団本部の再建に取り掛かった。

それと同時に音曽根楽器店も立て直しが進む。

「いや〜皆悪いね、手伝って貰っちゃって」

そう言ってやって来たのは音曽根だった。

「音曽根さん、病み上がりなんだから無理しないで下さいよ」

茂が音曽根を気遣う。

「ああ、ありがとう」

「それにしても本当無事で良かったです」

「ああ……長い事意識が戻らなかったらしいな……」

「それが戦いが終わった途端に目を覚ますんだもんなぁ」

そう、音曽根は昏睡状態が続いていたが、ベルアゼスとの戦いの直後意識を取り戻し復帰していた。

「おい、茂ー!喋ってないでこっち手伝えよー!」

辰哉と太一も修復作業を手伝っていた。

「あっ、悪りぃ、今行く!」

茂も手伝いに戻る。

修復作業をするのは奏での戦士団から依頼を受けた工務店だった。

「おおー!兄ちゃん筋が良いな!ウチで働かないか?」

辰哉は工務店の現場監督に気に入られた様だ。

「そうっすか?あっ、でも俺には夢があるんで」

「そうか……アルバイトでも良いから入ってくれると助かるんだけどなぁ〜」

そんなやりとりをしていると栞とミューズがやって来た。

「皆〜お茶入ったよ!休憩しよ〜」

「おっ!サンキュー栞!」

「ビート、少し話があります。来て下さい」

「え?あっ、はい……」

茂はミューズに呼ばれその場から離れる。

ミューズに連れられ楽器店から少し離れた所に行くと……。

「あれ?皆も……」

そこには彰、裕二、琴音も集められていた。

「皆さんに集まって頂いたのは他でもありません。今後の皆さんの人生についてです」

「人生?」

「裕二さんと琴音さんはお仕事も忙しいでしょうから、この先も戦士を続けて行くかどうかをしっかり考えて下さい。そして、茂さんと彰さんはこの先どうしますか?」

「そっか……戦いが終わったからもう戦士として戦う事なんて無いかもな……」

「でも、ルシウスがまだ……」

「勿論、ルシウスと戦う事になれば皆さんの力は必要です。でも、それもいつになるか分かりません。ですから、皆さんにはしっかりと自分の人生を歩んで欲しいのです」

「私は……またワールドツアーの話が出てるの。だから……1度戦いから離れて歌手活動に専念したい……かな?」

「それなら全力で応援します。琴音さん、頑張って下さい!」

「ありがとうございます!」

「俺は……マジックボーイズのリーダーとして、これからもっと忙しくなると思うし……今までみたいに戦う頻度が少ないなら仕事に専念する。勿論必要な時は戦うけどね」

「裕二さん……ありがとうございます」

「俺は……今まで通り歌手を目指す夢は変わらない。だから、現状維持って所だな」

「そうですか……ボイス……あなたの夢応援していますよ」

「ありがとうございます」

「ビートはどうします?」

「俺は……やっぱり音楽を続けたい……でも……」

「やはり……ルシウスの事が気になりますか?」

「ええ……まぁ……」

「それなら、少し考えておいて下さい。時間はまだあります」

「はい……」


それから数ヶ月後……。

季節はすっかり夏だ。

日差しの暑いこの日……。

茂達ブラックレイドのライブが開催されていた。

「おおー!今日結構お客さん入ってるぞ」

「まぁ、目的は俺達じゃないだろうけどな」

「それを言うなよ……」

「でも、俺達を知ってもらうチャンスだ……全力で行こう」

「ああ!」

そして、ブラックレイドの出番が来た。

一組のバンドに与えられてる演奏数は3曲。

茂達はその3曲を全力で演奏した。


ライブ後、帰り支度をする茂達……。

「皆、お疲れ!」

栞がやって来た。

「おう、栞!今日も手伝いありがとうな」

「うん、で、今日の手応えは?」

「う〜ん……まぁまぁかな。まぁ、俺達の存在のアピールは出来たと思う」

そこへ……。

コンコンッとドアをノックする音が聞こえる。

「はい?どうぞー」

そこに入って来たのは中年の男性。

「突然すみません、今日のライブ拝見させて頂きました」

「はぁ……どうも」

「申し遅れました。私こういう者です」

そう言って男性は名刺を差し出した。

「あっ、ども……えっ!?」

その名刺には『スターライトプロダクション·脇田』と書かれていた。

「プロダクション?芸能事務所の方!?」

「はい、あなた達の楽曲に大変興味がありまして、今度是非ウチの社長にも会って頂けませんか?」

「それってつまり……スカウトって事ですか!?」

「まぁ、そんな所です。我が社はまだ小さな事務所ですが、あなた方の音楽で成長させて頂けませんか?」

茂達はお互いに顔を見合わせる。

「はい!!宜しくお願いします!!」

こうして、茂達は夢への一歩を歩み出す事に……。


そしてこの夜、この事を報告する為に奏での戦士団本部にやって来た茂。


「へぇ〜凄いじゃないか!芸能プロダクションからスカウトが来るなんて」

音曽根は脇田の名刺を見て喜ぶ。

「おめでとうございます、ビート……いえ……茂さん」

「茂?あれ?何で言い直したんですか?今まで通りで良いのに……」

「ミューズさんもここ数ヶ月ずっと考えていたんだよ。戦いが終わったのにいつまでも戦士の呼び名じゃダメなんじゃないかって」

「え?どうしてです?」

「戦士達の名には音楽に因んだ名が付けられています。だがら、音楽を守る戦士としては良いと思うんですが……その呼び方は皆さんを戦士としてしか見ていない様な気がして……」

「はぁ……」

「だから、皆さんの事を本名で呼ぶ様にしたんです。まだ、慣れてなくて違和感ありますけど……」

「なるほど……でも良いんですよ?俺はビートであり続けるから」

「え?」

「答え、出したのかい?」

「ええ、俺、音楽が大好きだから……夢を追う事はやめない。でもそれと同時に音楽を守る為にも全力を尽くしたい。だから俺、ビートであり続けます!」

「そうですか……ありがとうございます」

「茂君、良い顔になったな……私達も応援してるよ。バンドマンとしての茂君も戦士としてもビートも」

「ありがとうございます!」


音楽の戦士達の戦いは終わった。

そして、茂達は自分の夢に向かって新たな道を歩み始めた。

しかし、人々が音楽を愛し、彼らを必要とする時、彼らはまた帰って来るでしょう。

音楽の戦士として……。

人々の笑顔と音楽を守る為に。


-完-

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音楽戦士 ビート 山ピー @TAKA4414

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