音楽戦士 ビート

山ピー

音楽の戦士

第1話「音楽戦士ビート誕生」

音楽……それは人々を魅了する存在……。


誰しも一曲や二曲、お気に入りの音楽があるでしょう。

アーティストで選ぶか、楽曲で選ぶかそれは人それぞれ……。

しかし、そんな音楽を消そうとする者が現れたらあなたはどうします?ーー


ここに一組のロックバンドが演奏をしていた。

ギターを奏でながら歌うのは音崎茂おとざき しげる(24才)

メジャーデビューを夢見る売れないバンドマンだ。

演奏を終える茂達。

「うぃーお疲れー!」

「この調子なら今度のライブ行けそうだな」

声を掛けて来たのは芝浦辰哉しばうらたつや(24才)

サングラスを掛けた短い金髪の茂のバンドチーム「ブラックレイド」のドラム担当だ。

「ああ、今度のライブは音楽プロデューサーも見に来るって噂だから目に留まれば一気にメジャーデビューも夢じゃないぜ」

「よし、もう一回合わせるか」

と辰哉は言うが。

「わりぃ、ちょっとタンマ。トイレ行ってくるわ」

そう言って出てきたのは新井太一あらいたいち(23才)

ブラックレイドのキーボード担当だ。

「じゃあ、少し休憩にするか」

茂もそう言ってギターを下ろす。

「わりぃな、じゃあ行ってくるわ」

太一がスタジオから出て行く。


太一と入れ替わりに茂の幼馴染の川井栞かわいしおりが入って来る。

「皆お疲れ〜」

「おう、栞ー!どうしたんだ?」

「今日仕事早く終わったから皆練習してるかな?と思って来てみたんだ。はい、コレ差し入れ」

栞は温かい缶コーヒーを渡した。

「おっ、サンキュー!」

茂が受け取る。

「はい、辰哉君も!」

「ありがとう」

辰哉も缶コーヒーを受け取る。

辰哉は缶コーヒーを飲む前にサングラスを外した。

「ふぅ〜……」

「ねぇねぇ、辰哉くんってさ……可愛い顔してるよね」

「そうそう、アイツ、ベビーフェイスなんだよな」

「ベビーフェイスって言うな!!」

「あ〜わりぃわりぃ……」

辰哉はベビーフェイスと言われるのを気にしていた。

彼がサングラスを掛けているのもベビーフェイスを悟られない為だ。


3人がコーヒーを飲んでいると、太一も戻って来た。

「お待たせ〜、あっ、栞ちゃん来てたんだ」

「うん、今さっきね。はいコレ差し入れ」

「うわっ、ありがとう。いつもごめんねぇ」

「良いよ良いよ。気にしないで」

「本当栞ちゃん良い子だよなぁ〜こんな彼女が居て茂が羨ましいぜ」

「彼女じゃねぇって!」

「そうそう。た·だ·の!幼馴染み」

「よし……もう少しだけ練習したら帰るか」

「だな。もうこの貸しスタジオの予約時間も無いし」


茂、辰哉、太一の3人は再び練習を再開。

栞は3人の演奏を聞いている。


練習終了後、茂と栞は家が近所の為一緒に帰る。

「ねぇ、今度ライブあるんでしょ?どうなの調子は」

「ああ、結構良い感じだと思うぜ。今度のライブは音楽プロデューサーも来るって噂だから気合い入れないとな」

「じゃあ、私も当日サポートするから出来る事あったら言ってよね!」

「おう、ありがと!」

「じゃあ、私こっちだから……」

「ああ、今日もありがとな。お休み」

「うん、お休みー」

茂と栞は別れそれぞれ家に帰って行った。


「ただいまー」

茂は一軒家の自宅に両親と暮らしていた。

「あっ、お帰りー。ご飯出来てるよ」

母親の奈津子が声を掛ける。

「うーん……」

素っ気ない返事で返す茂。

「おい茂……」

「ん?」

声のした方にはリビングで座って新聞を読んでいる父親の正治しょうじが居た。

「何だよ親父……」

「お前……いい加減バンドなんか辞めて就職したらどうだ?」

「ああ?辞めねぇし就職もしねぇよ!俺の夢だ!!」

「売れないバンドより、将来も考えて真面目に就職した方がお前の為だ」

「冗談じゃねぇ!親父みてぇなつまんねぇ生き方なんてごめんだね!」

「ちょっと!茂!お父さんになんて事言うの!」

「……30までは好きにやらせてくれるって約束だっただろ」

「確かにそうだが……30になってからの就職は厳しいぞ……ましてや高卒のお前じゃ……」

「うるせー!!」

茂は怒って部屋に行ってしまった。


翌日、今日も茂はバイト終わりに貸しスタジオに集まり曲の練習をしていた。

だが、茂は調子が出ない様子。

「クソッ!!またミスった……」

「おいおい茂……今日はどうした?さっきからミスばっかりだぞ?」

太一が茂を問い詰める。

「わりぃ……なんか調子出なくてな……」

「今日は辞めにするか……その調子じゃ練習してても意味がない」

「はぁ……わりぃ……」

今日は茂の調子が悪い為練習は中止。

茂は昨日父親から言われた事が気に掛かっていた。

帰る途中楽器屋に寄る。

店に入ると多くの楽器が所狭しと並んでいた。

「へぇ〜この店、品揃え良いじゃん……」

茂が店内を見て回っていると……。

「おっ!このギターカッケェ!でも高けぇ……」

1本のギターが気になった。

「いらっしゃい」

奥から店主と思われる老人が声を掛けて来た。

「ギターをお探しで?」

「あっ、いや……そう言う訳じゃないんすけど……」

「ギターでしたらオススメが……」

そう言って店主は再び店の奥へ……。

「いや、買わないんだけど……」

すると直ぐに店主は1本のギターを持って戻って来た。

「こちらです」

「いや……今日は買わないんすけど……」

「少し試して見ませんか?」

「……弾いて良いのか?」

「勿論です。楽器は演奏して貰えるのが1番喜びますから」

「は、はぁ……じゃあちょっとだけ……」

店主に勧められるまま茂はそのギターを試しに弾いてみる事に。

店内にギターの音色が響き渡る。

「!!」

茂の演奏を見た店主は顔色を変えた。

しばらく弾くと茂は演奏を辞めた。

「確かにいい音出るな!……コイツは気に入った。まぁ、金も無いから今は買えないけどな……」

「そうですか……もし貴方が気に入って下さったなら差し上げますよ。このギターもその方が幸せです」

「えっ?いや……それは悪いっすよ……」

「いえいえ……そもそもこのギターは売り物じゃなくてね……値段を付けて無いんですよ。でも、この古い楽器屋で埃被ってるだけじゃ可哀想だし……貴方が貰ってくれるとこのギターも喜ぶと思うんですがね……」

「そ、そうか?まぁ……そこまで言うなら……」


結局店主からギターを貰った茂。

茂は店から出て帰る。

「変わった爺さんだったな……」


茂が出た後の店ではーー


「彼ですか、新たな音楽の戦士は……」

若い女性が楽器屋の店主に話し掛ける。

「ええ……ようやく見つかりましたよ」


その頃茂は公園に立ち寄った。

この公園は敷地が広く、よく色々なグループが演奏をしている。

茂も時々ここを利用するが、知り合いでも居るかと思い立ち寄ったのだ。


だが、今日は知ってる人物やグループは居ない様だ。

その為茂も帰ろうとしたその時!


突然空に穴が空くと言う不思議な現象が起こった。

「何だ?」

茂が空を見上げこの現象を見ていると……。

「この世界は音楽に溢れてる……気に入らんな……」

その穴の中から現れたのは異形の怪物。

「ばっ、化け物!?」


周りの人々はパニックに陥り逃げ出す。

「フンッ……この世界から音楽を消し去ってやる……」

そう言って怪物は近くに居たバンドマンのギターに闇のエネルギーを送った。

すると、闇のエネルギーの浴びたギターは手足が生えギターの怪物ギターノイズラーとなった。

「化け物増えたぞ!?」


ギターノイズラーはまず、持ち主だったバンドマンを襲う。

「な……何だよコレ……夢か?俺は夢を見てるのか?」


「いや、夢じゃないぜ!」

声のした方を振り向くと。

マイクを持った謎の戦士が現れた。

「うわっ!?何だあんた……」

茂は驚いて尋ねた。

「お前も音楽の戦士だろ?」

「えっ?」

「まっ、まだ新入りみたいだし、下がって見てな」

そう言うとその戦士はギターノイズラーの前に立ちはだかった。

「貴様……音楽の戦士か?」

「見りゃ分かるだろ?俺はボイス。さぁ、行くぜ!!」

ボイスと名乗るその戦士はギターノイズラーと戦い始めた。


「何だ?何がどうなってるんだ?音楽の戦士ってどうゆう事?」

茂は困惑していた。

だが、周囲には自分と同じ様に夢を追う者達。

しかし、その夢は今目の前の化け物に奪われようとしている。

「クソッ……こんな奴らに……俺達の夢を……音楽を奪われてたまるかー!!」

茂の想いに呼応するかの様に先程楽器屋で貰ったギターが輝き出した。

「ん?な、何だ?」

茂はギターケースを開けて見る。

「光ってる……一体……このギター何なんだ?」

茂はギターを手に取る。

すると、その不思議なギターは茂にあるビジョンを見せた。

それはこのギターを持ち怪物達と戦う戦士の姿。


「お前は……俺に戦えって言うのか……。こんな奴に夢を奪われる位なら……やってやる!!」

戦う事を決意した茂はギターを弾いた。

《ビート》

ギターから電子音が鳴る。


すると、茂の体はギターから放たれた光に包まれ戦士の姿に変わった。


「な、何だこれ?」

「おい!お前はビートだ!俺と同じ音楽の戦士になったんだよ!戦え!」

ボイスが茂に声を掛ける。

「音楽の戦士……ビート……そうか、ビートか!」


茂は音楽の戦士ビートとなった。


続く……。

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