第6話 社会の変容

リセットボタンの存在が一般的になるにつれ、社会のあり方も大きく変化していった。

教育システムは、一度の失敗で全てが決まるようなものから、より柔軟なものへと変わっていった。学生たちは、自分の興味や適性を見つけるために、様々な分野を探索することが奨励されるようになった。

就職活動も変化した。企業は、候補者の「リセット歴」を重視するようになった。多様な経験を持つ人材が評価され、失敗を恐れずにチャレンジする姿勢が求められるようになった。

結婚や家族のあり方も変わった。人々は、より慎重に人生の伴侶を選ぶようになった。離婚率は一時的に上昇したが、その後、互いをより深く理解し合ったカップルによる、安定した結婚が増加した。

政治の世界でも変化が起きた。政治家たちは、自分の政策の結果を「シミュレーション」するためにリセットボタンを使うようになった。これにより、より慎重で効果的な政策立案が可能になった。

しかし、この変化は新たな問題も生み出した。

リセットボタンの使用回数に個人差があることから、社会的不平等が生じた。回数の多い人々は、より多くのチャンスを得られるため、有利な立場に立つようになった。

また、リセットを繰り返すことで、人生の重みや決断の重要性が軽視される傾向も現れた。一部の人々は、安易にリセットを使い、責任ある行動を取らなくなった。

さらに、リセットボタンへの依存症も社会問題となった。現実逃避のためにリセットを繰り返す人々が現れ、精神衛生上の新たな課題となった。

これらの問題に対処するため、政府はリセットボタンの使用に関するガイドラインを策定した。学校では、リセットボタンの適切な使用方法や、人生の選択の重要性について教育が行われるようになった。

心理カウンセラーや「リセットコンサルタント」という新しい職業も生まれ、人々のリセット使用をサポートした。

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