憂鬱な日
田川侑
憂鬱な日
携帯に予めセットしといたアラームが今日も一秒の狂いもなく私を夢の世界から現実へと呼び起こそうと朝から鬱陶しいくらいに騒ぎ立てた。
覚醒には程遠い状態で上半身を起こし、重たい足取りで洗面台へと向かう。
最近買ったばかりの歯ブラシを片手にケトルに水を注ぎ、流れるようにリモコンを手に取りボタンを押す。
テレビ画面に映るのはいつも見慣れたお天気予報士のお姉さん。
と、そこまでは良かったのだが……。
画面に映る光景を見た私は危うく歯ブラシを落としそうになった。
急いでポケットに入れた携帯を取り出し、テレビ画面と携帯画面を交互に何度も確認するが、映し出されたその文字は残念ながら見間違いなどではなかった。
そう、今日は雨が降るのだ。
なんでも今日は冬シーズンになって初めての雨が降るとかなんとか。
お天気予報士のお姉さんが笑顔で説明していた。
いつもなら素敵な笑顔のお姉さんも雨が降ると分かれば、その笑顔が途端に腹立たしく感じる。
いつもならゆっくり磨く歯磨きタイムも早々に切り上げ、便所に駆け込む。
さっきの天気予報を見たせいか、いつもより激しく磨いたせいで口の中が血の味がした。
便器に座り用を足そうとするが、やはり先ほどの天気予報の影響か、いつもならなんの抵抗もなく出る便が今日は反抗期のように全く言うことを聞かない。
なんとか踏ん張って出し切った私はちょうど出来上がったケトルを片手に最後の一つだったコーヒースティックをコップに入れ、お湯を注いだ。
テレビ画面に視線を移すと、お天気コーナーは終わったようで、違う番組が流れていた。
何となく携帯を触り、お天気アプリを押す。
表示された画面に変化がないことを確認すると、携帯をソファーに投げた。
投げた携帯がソファーの弾力で跳ね返りフローリングの床で変な音が鳴ったので気になって携帯を見て何もなってないことに安堵した後、寝室に向かい仕事着に着替える。
寝室の時計に目をやると出発時間の五分前だと知り、小さな溜息が出た。
身支度を整え、玄関扉の前で忘れ物が無いか最終チェックを終えた私はこれから起こるであろう出来事を想像しながらいつより重く感じる玄関扉を開けた。
私は雨が嫌いだ。
憂鬱な日 田川侑 @tagawa_yu
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