二の腕!?


「触り心地か、なるほど…非常にシンプルで良い議案だ。」



「はっ!ありがとうございます!恥ずかしながらが胸部に在籍させてもらって

 

 いるにも関わらず私はまだおっぱいを揉んだことがありません。

 

 今すぐにでも揉めれば揉みたいのですが…やはり初めては好きになった女性の乳を


 揉みたいと、そう思ってはいるのですが…まだ特定の相手がいるわけではなく、

 

 だからせめてその感触を知りたいのです!」



おれはチラチラとレイカを横目で伺いながら話す。



「ふむ…乳といっても千差万別だ。一概に感触と言っても大きさや形、弾力によって

 その触り心地は異なる。つまりピ―――――だ!」



「ピ―――――は置いておいて、それは間違いないだろう。一概に言うことはできな


 い。…改めてこの議題で彼女たちを連れてきた意図を聞こう。」



会長は極めて冷静に情報の解析を行う。



「はっ!彼女たちの乳の揉み心地を直接聞かせてもらおうと思い、連れてきた次第で

 す!」



「はあっ?」



「だから僕は男の子だってば…」



俺は真剣に彼女たちに訴える。



「おっぱいを俺自身が直接揉むことはできない、


 ならば普段から揉んでいる者に直接聞くしかないだろう!?」



「普段から揉んでいるってどんな偏見よ…


 あー、まあでも確かに中学生くらいの時、興味本位で大きいおっぱいの子に触らせ


 てもらったことはあるわ。女子特有のノリでね。」

 


俺は椅子からガタっと飛び上がる。



「なんだと貴様!俺には好きな女以外の乳を揉んではならないと言っておきながら、


 自分は乳揉みを楽しんでいたと言うのか!なんと下劣なやつ!」



レイカも俺の言葉に感化されたのか、バンっと机を叩き立ち上がる。



「違うわよ!アンタみたいな下心まるだしの変態行為じゃないわ。私のは興味本位!


 それに男から触られるのと女から触られるのじゃ全然意味が違うわ!」



俺も机をバンっと叩く。



「今の言葉、LGBTに対する配慮が欠ける発言だ!


 女同士だろうが、恋をして下心を持って触れ合うことだってあるはずだ!


 全国のレズビアンの方たち謝れ!」



バンバンっと机を叩くレイカ。



「何の話をしてるのよ!私がしてるのは下心の話よ!」



バンバンバンっと机を叩く俺。



「おれの気持ちは下心などではない!純粋な知的好奇心だ!」



「ばばんば、ばんばんばん、あびばのんのんピ――――――。」



静まり返る部室、目を閉じていた会長がうっすらと目をあけ話しだす。



「……議論が活発になるのは良いことだが、すこし話が脱線しているようだ。」


 

「申し訳ありません会長…」



「うむ。誰か乳の感触について話をできるものはいないだろうか?」



会長は良い良いとおれに目くばせをした後、議論を発展させた。



「んーどうしたら良いのかしらねー、ね、ダーリン♡


 私のおっぱいの感触なんて教える訳にはいかないし。」



「そうだな…人の体験談を聞いてもその感覚を共有するのは難しい。


 やはり私のように愛しのフィアンセを見つけるしかないんじゃないか。


 私はリラのたくましいおっぱいを揉めればそれで満足だよ、ピ――――――。」



「んもうっ!」



リラさんの左フックをくらったチョーさん、首が90度曲がっているが、


首の角度以外は全く変わらない状態で笑っている。



「私のだって教えないわよ!」



レイカも非協力的だ。手詰まりか…



「あの……。」



小っちゃくなって手を上げている可愛いみ~たんの姿があった。



「…ミナト君だったかね。どうした?」



「えっと…昔お姉ちゃんに教えてもらったことがあるんですけど、


 二の腕はその人の胸の柔らかさと同じくらいだって聞いたことがあるんです…」



おれは再びガタンと机から立ち上がる。



「み~たん、それは本当か!?」



ちょっと怖がりながら俺を見るみ~たん、ごめんよおお。



「う……うん。多分だけど…。」



「なるほど…その手があったか。」



会長はうんうんと頷いている。



「もちろん全く同じ感触と言えるものでは無い。しかし、


 実際に触ってみることのできる二の腕の方が幾分イメージしやすいだろう。」



「二の腕……そんな方法があったとは…。」



俺は感動のあまりプルプル震えていた。そして直ぐにレイカに確認を取る。



「レイカよ!おっぱいでは無く二の腕であれば触っても問題無いだろう!?」



「え!?………ん―――、まあ…どうしてもって言うなら…二の腕くらいなら…。」



少し、照れながら話すレイカ、何を照れているのだ?



「決まりだ!み~たん!二の腕を触らせてくれ!」



「僕!?」



「なんでやねん!!」



驚くみ~たんと飛び蹴りを喰らわせてくるレイカ、何なんだ一体。

 

だからって俺はへこたれない。なぜならそこにみ~たんのちく…二の腕があるから。



「み~たん、よろしく頼む。」



おれはゆっくりとみ~たんに近づく。



「だから僕は男の子だってば!」



「性別の違いなど、俺にとって然したる問題ではない。


 問題はみ~たんかみ~たん以外か…それだけだ。」



「どこのローランドさん!?」



はあはあと近づくおれに対して、ブルブルと震えながら二の腕を隠すみ~たん、


怖がらなくていいんだよ…?



「大丈夫…責任はちゃんと取るから…」



「どうやって!?聞きたくないけど!」



どんどん息遣いが荒く激しくなっていく。


み~たんとの距離が近づき、俺が二の腕を揉みしだこうと手を伸ばした瞬間、


頭上からパイプ椅子が降ってきた。



「僕…僕…テニス部に行かなきゃいけないから~!」



慌てて走り去って行くみ~たん、地べたに這いつくばり頭から血を流す俺。



「……何をする?」



「ミナトが嫌がってたのが分からなかったの?


 嫌がっている相手に無理やり強要したら犯罪よ!このドスケベ!!」



「嫌がっていた?あれはああやって俺を誘惑していたんだ。


 俺とみ~たんの関係を知らん、お前には分からんだろうが。」



「分かるわよ!泣きながら走って逃げだすって…訴えられたら100%アンタの負け 

 よ。」



「やれやれ…男女の機微が分からんヤツだ。…ではどうする?」



「どうって何がよ?」



「もう、女子がいないではないか!!!」



ドスッ!!!

バキッ!!!



レイカからみぞおちに膝蹴りを喰らうと同時に、リラさんから掌底を喰らう。



俺は再び意識を失った――






…意識を取り戻すと教室の外からは夕焼けが差し込んでいた。


今日は良く意識を失う日だ…。


辺りを伺うと他の部員はもうおらず、レイカだけがまだ残っていた。



「やっと気づいたのね。」



「二の腕……」



「まだその話?」



レイカは呆れたように言う。



「当たり前だ。俺にとっては大問題なのだ。」



「それより身体は大丈夫なの?」



一応心配してくれているのか?わざわざ残ってくれている訳だし…


まあ原因はレイカなのだが。



「ああ、骨は何本か折れているが問題ない。」



「それ問題ないって言わないわよ…」



 夕焼けをボーっと眺め、しばしの沈黙が生まれる。



「ああ、そうだ。あんたに聞きたいことがあったんだけどさ…


 ちなみにだけど、アンタって女子の二の腕触ったことあるの?」



「ある訳ないだろう!だから触りたいと言っているのだ!」



…夕焼けに照らされているせいか、レイカの頬が少し赤く見えた。



「ふーん…そうなんだ。なら…



レイカの表情を見て何故か俺の鼓動は早くなる。



「あたしの……触ってみる…?」


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