ブレスト(乳)についてブレインストーミングを始めようじゃないか。

ゆぱ@NieR

おれは真面目だ。


「おっぱいを揉ませてくれないか?」


「は?」


彼女は目を丸くしてジロッとおれを見る。

伝わらなかったのか?


「あなたのおっぱい、つまり乳を少し揉ませて頂けないだろうか?」


今度はジェスチャー付きで説明をする。


「…意味分かんないんですけど。」


今度はおれを変人か何かを見るような視線で見つめてくる。失礼な…

意味が分からない?……説明が不足してるのか?

仕方の無いやつだ。


「失礼した、順を追って説明しよう。さっきからあなたのおっぱいを凝視していたの 

 だが、あまりにも張りのある綺麗な形をした乳房だったもので…

 初対面ではあったが、これは揉ませて頂く他無いと思い、相談した次第だ。

 ………揉ませてくれ。」


「………。」


返事がない。

どうしたのだろうか?


「坊ちゃま…」


おれの後ろに控えていた執事のセバスチャン蔵がおれに声を掛ける。

と、

それと同時に「うおおおおおー!」とけたたましい声を上げながら、

見覚えのある不良女子高生が突然ドロップキックで飛びかかってきた。


「なに言っとんじゃわれえええぇ―――!」


クリティカルヒットした俺はスマブラ300%くらいの吹っ飛び率で吹っ飛ぶ。


「いててて…」


咄嗟に取った受け身で全身粉砕骨折程度のケガで済んだようだ。

俺はおもむろに手を伸ばす。


「おぼっちゃま…お止め下さいませ…」


気づくとおれはチャン蔵の股間を握っていた。

どうやら吹っ飛ばされた時に俺を守ってくれたらしい。


「おかしい…」


「坊ちゃま…あ!」


おれは股間を握りしめながら考える。


「こういう場合、不可抗力で美しい女性のおっぱいを触ってしまったり、

 女性の方から俺にいろんな部分を押し付けてきたりするものと、

 如何わしい書物で学んだのだが…」


にぎにぎ、


「はうっ!」


「あんたは人の往来で堂々と何をやってんのよ!」


また不良少女にどつかれる。そのでかいハリセンはどこから出したのだ?


「何って、ナニを―」


「いいから止めなさい!」


おれの握っている手を振りほどくと、盛大な溜息をつく。


「ホントにあんたは…警察に突き出されても文句言えないわよ!

 …チャン蔵さん大丈夫?」


「あ!はい…問題ありません。ご心配いただきありがとうございます、レイカ様。」


「ほら、あんたも早く立って!訴えられないうちに誤りに行くわよ!」


おれの頭には疑問符が浮かんだ。


「何を誤るんだ?」


「何って…さっきの人にセクハラしたことに決まってるでしょ!他に何があるの!」


「セクキャバ?おれはそんなところには行ってないぞ。

 まだ年齢制限で引っかかる。」


「セクハラよ!」


「セクハラ?…セクシャルハラスメントのことか?

 もちろんその単語自体は知っているが、おれはそんなことしていないぞ。」


「何いってんの?ほら、早く!」


「待ってくれ…心当たりがない、もちろん本当にセクシャルハラスメントをしたとい 

 うのならば、その罪は償うべきだが…」


「おっぱい揉ませろって言ったでしょ!気持ち悪いジェスチャーまで加えて!」


「揉ませろなどとは一言も言ってない!

 ちゃんと本人の許可を得てから揉ませてもらう予定だったのだ。」


「どっちも同じよ!」


スパーンッ


またデカハリセンで引っぱたかれる。なんだと言うのだ全く…

チャン蔵からも耳元で話がある。


「坊ちゃま、ここは素直に従われた方が…」


「ふむ…」


おれはじっくりと考える。

俺に非がなくとも謝らなければならないことは時としてある。

幼少の頃からありとあらゆる学問を学び、その全てを習得してきた。

脚下照顧と言ったところか。


「仕方がない、今回はお前の意見を通してやろう。ただし次は無いぞ。」


「ええ、次は刑務所でしょうからね。」


その後、綺麗で張りのあるおっぱいを持つ女性に頭を下げ、

どうやら事態は収束したらしい。理解に苦しむ…

世の中にはまだ、俺の知り及ばぬ事柄が数多く存在するのだろう。

…実に面白い。おれはエア眼鏡をクイっと引き上げた。


スパーンッ



ひと段落して、ちゃん蔵とレイカと一緒に学校へ向かう。


「ホントに…昔はこんなやつじゃなかったのに…

 もうあんなことしちゃ駄目だからね!」


「うむ…………しかし、ではどうすれば良いのだ?」


「何が?」


「おっぱいを揉みたい時だ。

 揉みたくなったら何と声を掛けたら失礼に当たらないのだ?」


「どう、言っても失礼よ!」


まるで漫才のツッコミのように突っ込んできた…俺はボケてなどいないというのに。

おれは努めて冷静に、真面目に返答する。


「レイカよ、俺も齢16になる…

 いくら将来有望、頭脳明晰、スポーツ万能、イケメンと

 およそ全てを手に入れている俺だとしても、まだうら若き青年…

 不満というものはでてくるものだ。いや…というか欲求不満なのだ…

 道行く綺麗なお姉さんのおっぱいはどんな揉み心地なのか、

 知りたくなってもおかしくはないだろう?いくら紳士だとしても!

 そうであろう!?

 チッ、チッチッチ、おっぱーい、ぼいんぼいーん!」


カーン!


10トンハンマーで殴られた。四次元ポケットを持っているとしか思えない。

おれは血だらけになりながら、ハッと気づく。


「すまない!乳が殆ど無いレイカにとって心の痛む話であったな。心から詫び―」


ッッッドカーーーン!!!


謎の爆破が起きた。いや…これもうあなたのやってることが犯罪ですよね?

…しかし、さすが護身術を学んだ超一流の俺だ。全身の皮膚が焼けただれ、

ナ○シカの巨神兵みたいになっているが、なんとか一命をとり留めている。


「……1億歩譲っておっぱいを揉みたかったとしても、

 好意の無い相手にそんなことしちゃ駄目よ。

 お金払って…ていう世の中のルールはまかり通ってるけど、

 そんなのはっきり言って論外。

 そういうことはお互いに好き同士じゃなきゃしちゃ駄目なの。」


さっきまでの様子とは打って変わって、真面目な顔つきで話すレイカ。

おれは何となく彼女が怒っている理由が分かって、少し申し訳なく思った。


「そうだな…大事なことを見失っていた。

 そういう行為はそれだけの目的でするものでは無いな。

 ありがとう、また一つ学ぶことができた。」


少しだけ微笑んだような表情が見えておれは安心した。


「ま!あんたが行ってる変な部活でいろいろ勉強したら?

 そういう変態みたいな研究してるんでしょ?」


「変態ではない!紳士の嗜みだ!研究のしがいがある素晴らしい活動なのだ。

 …是非レイカも入ってくれないか?君の意見も参考になる。」


「…何を参考にするつもりよ。ま、気が向いたら遊びに行ってやってもいいけど。」


見た目は不良っぽいが、曲がったことが嫌いで、お節介焼きのやさしい女の子。

おっぱいは無いが、その奥には温かくて大きな心がある。

昔から変わらないな…


気が付くと学校に到着していた。


「じゃ、またね!」


小走りで手を振りながら走っていく彼女に手を振り返す。


そんな彼女の後ろ姿を見ながら、おれもまたゆっくりと歩き出す。


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