第十四話『金粉に塗れ雨蛙』
「知っておられたのですか! では
激昂する光秀に、義昭は深々と頭を下げる。
「私は
それゆえ、止められなかった。光秀の命を粗末にする気は無かったが、相済まぬことでござったなぁ。
だがもう詮索するのはやめておけ。
だから……、いつも考えるのじゃ。
兄が殺された時、
詰まる所、幕府の財政を握り将軍の世話係も兼ねる
あぁーっ、もう、嫌になるわい!!
……私は、頭の良い奴が怖い。…………。
信長も――、光秀、お前も……!」
怯えた目をし哀訴する義昭を、光秀は蔑み……呆れ果てた。
「なんと……。怖かったなどという理由で、
「だが生きておる」
「――!
「だがそのおかげでお前は城持ちになれた」
「
とうとう忍耐も臨界に達し、珍しく無礼な口を利く。此れには義昭も本音を露わにした。
「誰のせいじゃ! 誰のせいで私がこんなにも
「いいえ、分かりませぬ」
地を這うような声で冷たく告げ、無作法にも義昭に背を向け立ち上がった。踏み鳴らす足音は早々と義昭から遠のいてゆく。
「光秀――――!!」
◇
反信長を掲げる者を利用し、信長の権力失墜を調略していた
「やはり内から正さねばならぬか……」と呟いた数日後、信長は二条城へ出向いた。
義昭は将軍然とした態度を崩し、信長に媚び
「此れは此れは。私から謝罪に参ろうと思おておりましたが。
「兄上の間違いであろう。まぁ良い。父のように敬うのであれば、
「ですが
「
信長の有無を言わさぬ気迫に義昭はたじろぎ、静かに頭を下げた。
小雨降る城の内庭から、何やらブツブツと呟く声が聞こえる。不思議に思った藤孝が覗くと、冬眠前の蛙や虫を見つけては潰し、見つけては潰し、何匹も何匹も踏み殺していく義昭の姿があった。
奇怪な光景を目の当たりにした彼は、唖然として立ち尽くす。そして逃げるように其の場を後にした……。
✴︎次回、第三章『天翔ける魔王』に入ります。
“本能寺の変”には『黒幕』がいた――。
この作品は史実を基にしたフィクションであり、作者の妄想が多分に含まれます。何卒ご容赦頂けますと幸いです。
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