残り四人
マップに表示されている点は、四つ……つまり、この島に残っているのは残り、四人だということだ。
昇とレイナを除けば、たった二人……ここから、たった一人の生き残りを賭けて、殺し合うことになる。
ここまで生き残っている二人は、よほどの強敵だろう。それが肉体的な意味か、頭脳的な意味か、どういう意味であっても。
仮に、この二人を倒したとして……昇とレイナ、残るのは二人だ。
たった一人の生き残りを賭けたサバイバルで、お互いに協力してきた、二人の末路は……
ザッ!
「!」
砂利を踏みしめる音が、聞こえた。反射的にそちらに視線を向けると、一人の男が立っていた。
その手には、両手で抱えるように持つ銃が握られていた。
その銃口が、昇とレイナに向けられる……同時に、昇とレイナは、それぞれ左右に飛ぶように走った。
「おらぁあああ!」
ダダダダッ、と激しい音を立て、銃口からは何発もの銃弾が放たれる。
男が持っているのは、マシンガン……昇の持つ拳銃よりも、持ち運びには不便だが、何十もの銃弾を放つことができる。
それが、無慈悲に放たれた。男は興奮しているのか、高揚した表情で引き金を引いている。
すでに、何人もの人間を手にかけてきたのだろう……その身は、ところどころ血に染まっている。
「っ、如月!」
左右に別れた片方、昇のところには銃弾は撃ち込まれない。となれば、もう片方……マシンガンは、レイナを追うように銃弾を放っていく。
放たれる無数の銃弾は、かろうじてレイナには当たらず……なんて、都合のいいことが起きることはなく。
レイナの右足首を、銃弾が撃ち抜いた。
「いっ……ぎぁあ!?」
右足首に走る痛みに、レイナはその場で転倒する。それはつまり、動きが止まってしまったということで……
狙いは、倒れたレイナの背中に、注がれて……
「っ、ぐ、ぅううううっ!」
「……あぁ?」
無数の銃弾が、レイナの背中に当たる……しかし、レイナは痛みに声こそ上げるものの、それだけだ。血すら流れない。
男は怪訝な表情を浮かべるが、すぐに答えは出る。銃弾が当たって、血さえも出ない……
つまり、防弾チョッキだ。どこかのタイミングで、防弾チョッキを着ていたのだ。
だったら、話は簡単だ。防弾する隙間もない、露出した場所。手や脚、それに……頭。そこを狙えば、簡単に……
「こ、のぉおおお!」
「!」
途端に、男の視界になにかが映り込む。投げ込まれたそれは、大きな物体……それが爆弾ではないかと判断し、すぐにその場を飛び退く。
しかし、地面に打ち付けられたそれは、爆弾ではなく、ただの大きな石だった。無論、それが当たってもひどい怪我をしてしまうことに変わりはないが。
それを、投げ込んできたのは……
「自分から来てくれるとはな、ひゃはははは!」
「!」
自身に迫る昇に向けて、男はマシンガンを撃ち放つ。それを見て、昇は近くの岩陰に身を潜める。
痛々しい音を立てて、岩肌が露出していく。このまま隠れていても、あぶり出されるだけだ。
しかし、拳銃よりも弾数の多いマシンガンとはいえ、必ず制限はあるはずだ。いずれは弾が尽きる。
その隙を、狙う。さっきもかなりの数を撃っていたはずだ、いずれチャンスは……
「あははは! なにを考えてるかバレバレさ! 弾数が尽きるのを待ってるんだろ!?
無駄さ、俺の【ギフト】は『
「はぁ!?」
狂気に笑う男の口から出たのは、信じがたいものだ。その口ぶりから、拳銃類の弾は無制限に撃てるのだろう。
そんな限定的な【ギフト】があるのかと素っ頓狂な声を上げてしまったが、昇自身も変な【ギフト】を持っているので、考えるのをやめた。
とにかく、こうして隠れていても、弾が尽きることはないことだけは確かなことだ。それどころか、弾が尽きないということはここを出ても出なくても、蜂の巣にされる時間が早くなるか遅くなるかの違いだ。
「っ、くそ……!」
ならば、いつまでも隠れているわけにもいかない。先ほどのように、レイナに期待するのは酷だろう。なにせ足を撃たれているのだ。
となれば、取れる方法は限られてくる。
盾にしている岩が削れきれてしまう前に、なにかこの場を脱することのできるアイテムがないか。アイテムボックスを探る。
「爆弾は……なら、これで!」
この期に及んで、爆弾を使用しない、なんて選択肢はない。爆弾を選ぶことを躊躇したのは、それが理由ではない。
単純に、この距離では、爆弾を投げても自分も巻き込まれる可能性が高いからだ。
だから、この場で選ぶのは、目眩ましのためのガス弾だ。
「そりゃ!」
体は隠したまま、後ろ手にガス弾を放り投げる。ガラガラッと音を立て、それは地面に転がり……シュウウウと音を立てて、周囲にガスを撒き散らす。
「っ、ごほ! な、んだこりゃ!」
勢いよく叫び大口を開けていたためか、男はガスを思い切り吸い込んでしまったらしい。咳き込み、マシンガンの嵐は止む。
その隙をついて、昇は飛び出す。
ガスで姿は見えないが、激しい咳込みによりその位置は声で丸わかりだ。
また気を取り戻して、マシンガンをぶっ放されても敵わない。だから……
「お、らぁあああ!」
痛む右手を必死に堪え……その拳を、男の顔面へと打ち抜いた。
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