罪と罰のウンディーネとエルフの兄弟

明鏡止水

第1話

雨の日だった。そして晴れでもあった。

「お狐様、嫁入りですか」

両手で頬杖をつきながら、お天気雨の見える学校の窓から。わたしは席に座って呟いた。


そんなわたしに友達は

「あんたのそういうとこすき」といってノートにイラストを描き続けた。


突如。しかし、わたしはおどろかない。肝が据わっているらしい。



雷。それも近く、疾く、突然。


なに?

え?

雷鳴りって急にくんの?!


周囲、慌てる。


あ!!


「夕立!」


クラスメイトたちがノリよくぽんっと、手のひらにこぶしでもたてに、判子を押すように。


気だるげに思われている不思議なわたしは言う。

「なにいってるのみんな、今は4月だよ」

春雷かもしれんが。


嗚呼。とクラスメイト。

しかし。


ん?


でも夕立って、梅雨とか、5月とか6月?

天気がいい日に雷ってあり?

いや、でもお天気雨だし。

いや、晴れ、いやでも雨。


そんなことよりたいへんだ。


なんと、我が学校に1本しか植樹されておらぬ桜の木!(もう葉っぱだらけの若々しい姿です)が、


「けむりがでてる!!」


「いや違う!アレはっ」


現れたのは。

雷に打たれた我が校の桜の木から、人影。

白い羽衣。長すぎる、黒髪との朧げな白と黒のコントラスト。形の良いくちびるに濃い赤、紅。米よりも半紙よりも白い透明感のある何か。しかしうつくしさと気品を帯びた。巫女装束だが、オリエンタルな色合いの、いや、自分たちの規格で考えられない。


この世のものとは思えない、


「雷鳴り様?」

「桜の木の精?」


女の人、だよな。髪なっが、平安京生きてた?

ねえ、こわい

そもそも

(喋ってていいの?畏れ多い)


そんななか不思議ちゃんのわたしは言い放つ。

「この不法侵入が……」


クラスメイトたちがゆっくりと急速に緊張を解いて。ふしぎちゃん。

井手人魚(いでにんぎょ)を見る。


だれかが代表して言う。


「お前の前じゃ、だれもうろたえられねぇよ」


天から轟音と共に桜の木のもとへと現れた、この世のものではないものは、いくつかの階層でできた建物と四角い場所へ張りつく人間を見遣り。


告げる。


「あっ!連れてくなら井手人魚ですっ」


つげる、まえに、


クラスメイトが、クラスメイトを売った。


両手頬杖をついた、中学生・井手人魚は言う。

「どうしてよぅ」

「だってお約束だから。あと異世界とか怖すぎ。お前にゆずる。オマエナラヤレル」


うんうん、とこんな時だけ体を男子も女子も気にせずくっつけて頷くクラスメイトたち。と、他のクラスの窓から見ていたけれど廊下に出て適任者を眺める全校生徒と、ついていけてないで慌てている教師たちおとな。


「はあぁー……」

「人魚……」

イラストを書いていた親友だけが心配してくれている。

「行ってきますよ。わかった。でもほんとうに、」

そこで建物の中とか2階だとか、そんな事も関係なしに引き寄せられて。


雷鳴りに愛された狂いし桜の異世界神。

そんな名称をつけてやった。

不思議なオトが鳴る。


〈井戸から手が出る人魚か〉


この目の前にある、なにかの思考だ。


〈これでいい、か?イトシイ子らよ〉


答えのないのに。勝手にクリスマスプレゼントを適当に高くて、適当に人気で、適当に、与える?

そんなものか?それより、


「ほんとうに、これ、つれてかれる?」


そして、井手人魚は神隠し異世界転移する。




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