第8話 夜桜沙耶華は漫画部に入りたい!

入りたい部活がある。

というかあれしか無い!!


そう…実家では本棚に紙本を保存しておくことは不可能で、勉強するフリをしながら、電子書籍のマンガ(主にBL)を買ってひっそりと嗜んでいた漫画!!


そう、私は高校に入ったら漫画部に入りたいと密かに思っていた。


問題は入れるのかどうかだ。

当然私は学校一の美少女JKだ。そしてあらゆる事にパーフェクトを極めた女…。当然そんな女は中学時代でもどこの部活にも引っ張りだこだった。


そして中学には漫画部が無かった…!!

私は穴を埋めるようにどこかしらの部活の大会やイベントなどに無理矢理参加させられた。無理矢理というか、その頃は実家に縛られていて何でもできなければならなかなかった。2年になると生徒会に入らざるを得ない状況だった。


生徒会長の真面目な女会長にも告白されたりしたけど断った。やはり女ばかりの所にいるとダメね。


その点高校は共学校だし、好きな部活に入りたいと念を押してきたのだから、私は何が何でも漫画部に入りたい!!


去年の夏にこの高校にわざわざ田舎から体験入学を申し込み、見学に行ったりした。その時に見つけた!

漫画部を!!


夏休みなので漫画部には人はいなかったが、漫画部が作ったという展示物が体験入学者のためにひっそりと教室の隅っこにに置かれていた。数人の生徒が描いたであろう作品や、合同同人誌みたいなものもあった。


その中でも一際絵が上手くて、更には私の焦がれているBLを描く方の作品がこれまた隅っこに隠すように置いてあった。


わかる。BL作品は一般には受け入れられないと…。しかも作者の名前は…!



【小波龍馬】1年D組

と書かれていた。


まさかの男の人!!つまり、ふ、腐男子だった!!


これはもうここに入り、この方とお話しして腐仲間になりたい!!と思い、私はデジタルで密かにその日から自分でもBL作品のストーリーを考え始めた。


そして、私は漫画部に入部届を書いた。今から出しに行く!と決めて。


隣の席の月城くんは


「夜桜さん、なんの部活に入るの??ぼ、僕も入ろうかなぁ」

と言っている。月城くんには是非、玲一郎と同じ部活に入ってほしい所だけど!


「私……ずっと漫画部に入りたかったの」

と思い切ってお友達の月城くんに言った!


「え!?ま、漫画部!?」


「そう……実家では漫画を買うことが許されなかったの!あらゆる娯楽を禁止されていたわ……。私は同級生が漫画の貸し借りをしている場面を何度となく見ていた。中学での私は一人だったから、漫画を貸し借りする相手もいなかったの…」

と言うと月城くんは


「そ、そんな!!ぼ、僕で良かったら今度漫画持ってくるよ!!」

と言ってくれた!


「まあ!ありがとう月城くん!これで念願の友達と漫画を貸し借りができるわね!


あ、待って、私まだ、越してきてから本屋で漫画を(普通の)ゲットしてないわ。ああ、盲点だったわ。一人暮らしだからいっぱい漫画を買おうと思っていたのだけれど、まだこちらの生活に慣れていなくて忘れていたわ」


「だ、大丈夫だよ!夜桜さん!別に持っていなくても貸すから!!」

と言ってくれたので思わず月城くんの手を取り


「ありがとう!月城くん!!嬉しいわ!あなたはとても良い人だわ!!」


「え?ふえ?そ、そうかな?…あはは…」

と照れる月城くん。そうだ!


「そうだわ!良かったら玲一郎にも貸してやってね!あいつもきっとお坊ちゃんだから漫画とか読んだこともないはずよ!」

と言うといきなりぬっと後ろから声がした。


「おい、俺は漫画くらい読んだことあるぞ!バカにすんなよ!!」

と玲一郎が立っていた。何故ここに!?あ、月城くんの顔を見に!?


『昇…お前の漫画借りにお前のうち行っていいか?』


『え!?今日?両親いないんだけどいい?』


『当たり前だろ?』


『うん、いいよ!じゃあ一緒に…帰ろ、玲一郎くん!』

と満面の笑みで微笑む月城くんにドキリとする玲一郎。


『意味…わかってんのかよこいつ…』

とボソリと呟く玲一郎であった……。



と妄想した所で、


「おい、沙耶華何ボーッとしてるんだ?」


「時々こうなりますよね?」

不味い!貴方達で色々妄想してるなんてしれたら!


「ごめんなさい、とりあえず私は漫画部に入部届を出してくるわ」

と教室を出ようとして


「おおい!!待て待て待て!何でそんなオタクがいるようなとこに行こうとしてんだ!?お前ならもっとさ、茶道部とか弓道とかあるだろ?」

と玲一郎に言われカチンとくる。


「あら?お嬢様が漫画部に入ったらいけないの?茶道?弓道?そんなもの家でいつもやっているスケジュールに噛まれていたわ!


高校になり私は好きな部活に入るのを条件にしてもらったの!こればかりは譲れないわ!!


あなたに指図されることもないの!!」

と言うと青ざめる玲一郎。


「あ、ぼ、僕も漫画部にするよー!」

と月城くんは慌てて入部届けを書いた。


「なっ!!こいつも!?ま、待て!お、俺も入る!!俺も入るから!!」

と何と玲一郎も言ってきた!


「玲一郎は月城くんとサッカーとかバスケとか柔道とか汗を流すスポーツに入ればいいのに…剣道でもいいわね」

と言うと


「お前、自分の事を棚に上げて俺は好きな部活に入るなと言うのか!?」


「あら、だって玲一郎が漫画にさほど興味がないと思って」


「ななな!いや、俺も普通に読むし漫画!!」


「言っておくけど、漫画部は漫画を描くこともするのよ!?玲一郎にそれができると言うの?」


「美術は得意だぞ?」

と言うから


「なら美術部に入れば?」

と言うとわなわな震えて


「いちいちうるさいな!!俺もお前の指図は受けない!!俺は漫画部に入り、は、背景を手伝う!!」

と言い出した!!


な、は、背景ですって!?

そ、それはつまり背景担当アシスタント!?

月城くんの描いた漫画に玲一郎が徹夜で寄り添い背景を入れる!!?


思わず想像して鼻血拭きそうになる。


「わかったわ、採用よ」

と私は親指を立て歓迎した。


「いや、待て、何故お前が決める。決めるのは漫画部の部長さんだろ?」

とブツクサ言いつつも私達は漫画部に入部届を出しに行った。

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