第7話 夜桜沙耶華と盗聴器

夕食会が終わり、余りを冴島さんと月城くんに分けて2人はお礼を言った。玲一郎は


「俺は別にいらないわ。お抱えのあんたより美味しい料理人がいるし!」

と失礼なことを言い、


「あらあ…では今日の料理もつまらなくてごめんなさいね?」

と美月さんは笑いながらなんか怒りを含めていた。まあ、玲一郎が悪いけど。


「沙耶華!こいつに油断すんなよ!荻原さん、あんたも早く自分の部屋に入れよ!沙耶華も鍵かけて寝ろ………あっ!」

と玲一郎は思いついたように


「…まさか」

とかブツブツ言ってる。


「なんなの?」

と聞くと


「お前の寝室…どこだよ!?」

と聞くから怖あ!!と思った!


「か、勘違いすんなよ!さ、最近、ほら!あの!ストーカー被害が近くであったと聞いたんだ!!


だからもしやと思ってるんだ!見せろ!!」

とか要求してきて信じられない!


「見せるわけないでしょ!バカじゃないの!?変態!」

万が一私の隠してあるBL本が見つかったら大変よ!


「乙女の部屋に入ろうとするなんて最低な婚約者様ですねぇ?破談になったらいいのに」

と美月さんはニヤリとする。

月城くんも


「ほんと…それだけはしない方がいいですよ?でも一応、1人になったら探してみるといいですよ?夜桜さん」

とアドバイスされる。冴島さんも


「電気業者の点検を装い、入り込む輩がいますから、コンセントの中や電球のなかリモコン、ベッドの下の内側とかクローゼット、ぬいぐるみとか調べて見てください」

と言う。なんなの?皆。


「し、心配しなくても私が昼間居るし」

と美月さんが言うと玲一郎は


「……世話係…が怪しいケースもあるよな」

と言ってくる。


「失礼ね!そんなこと私はしないわ!!」


「そうか?」

と疑う玲一郎に


「もう、なんなの?玲一郎も皆も私は大丈夫だから!!」


「………沙耶華。何かあったら俺に相談しろよ!!」

と言い、玲一郎は帰って行った。月城くんも冴島さんも頭を下げて、美月さんも


「で、ではお嬢様、お休みなさい!」

と部屋に帰って行く。


私も自分の部屋に帰り、しっかりと鍵を閉めた。

なんとなく気になり寝室に行き静かに冴島さんの言っていたところを探してみた。リモコンやらコンセントやらを分解したりしたけど何もないからホッとした。後は…とぬいぐるみを調べると…中に黒い見慣れない物体が有り、私の背筋は凍った!!


こ、これが!!と、盗聴器!!?

うそっ!?

玲一郎達の言ってたこと本当に!?

ど、どうしよう。冴島さんに言おうか、美月さんに言おうか、友達の月城くんに言おうか悩んだが3人はとても心配しそう!!


悩んだ末に私は俺に相談しろとか言ってた玲一郎にライメチャットした。


直ぐに返信が来た。


(わかった。後日そのぬいぐるみ学校にこっそり持ってこい!!)

と言われ、とりあえず玲一郎と2人で相談になった。



翌朝美月さんはソワソワして紙袋を見つめていたが



「お嬢様…行ってらっしゃい。…お弁当です」

と渡してくれ


「ありがとう美月さん」

と私は言い、学校に向かう。


「もう、お終いかしら…」

と呟きは聞こえなかった。


学校で昼休み、今日はお昼は一緒できないと月城くんに断り私はお弁当とぬいぐるみの袋を持ち、玲一郎と人気のない旧校舎に向かう。玲一郎はぬいぐるみから盗聴器を外して中を開けいじって


「ふう…とりあえず電源は切った。これで大丈夫だ。これいつどこでもらった?」


「そんなの知らないわ。この子実家にいる時からあったの持ってきたの…」


「ふ、ふーん。そんな前から」


「お気に入りよ。美月さんにもらって」


「じゃあそいつが犯人だろ、もうあいつに近づくなよ!」


「犯人なんてそんな簡単に見つからないし、決めつけないでよ!美月さんだって人からもらったかもしれないし!」



「沙耶華…危機感足りてないな!!お前ほんと!」

と玲一郎は怒る。


「玲一郎、美月さんもしかして私を心配してつけたのよ!!ほら、万が一夜中に強盗とか入ってきたら困るじゃない!そうよ!その為よ!」


「んなわけあるか!!」

と玲一郎に言うが、帰りに玲一郎と美月さんに問いただすとあっさり


「流石お嬢様!その通りです!だって昼間は大丈夫だけど夜中は強盗とか入ったら大変だもの!ごめんなさい、本当に…」

と謝るから私は許した。玲一郎は


「嘘だろ?沙耶華…し、信じるのか?」


「は?当たり前よ。美月さんは良い人だもの!玲一郎こそ謝ってよね!」


「は、はああああ!!??」

と玲一郎は信じられないという叫びを上げた。


まあ、美月さんには私のBL本のこと秘密にしてもらってる借りもあるしね。


「うふふ、心配かけてごめんなさいね?婚約者様」

と美月さんは勝ち誇ったような顔をした。


「くっ!!も、もうそんなの取り付けんなよ!!なんかあったら、この俺に言えばいいんだから!!」

と言う玲一郎に


「玲一郎に言うくらいなら近くの美月さんか冴島さんに助けを求めるわよ。部屋隣なんだら」


「はあああああ!!?」

と玲一郎は言うが確かに何かあった時玲一郎が来るのは絶対遅い。こいつ頭回ってないわね。


玲一郎は震えて


「も、もういい!!帰る!!この、バーカ!!沙耶華のバカ女!!」

と悪口を言われ頭に来る。


「何よ、玲一郎の方がバカの癖に!」

と私は言うが無視されて帰った。

全くムカつくわね。さっさと月城くんとくっ付けばいいのに!


しかしその週末に引っ越しのトラックが窓から見えた。そして黒塗りベンツ…。中から玲一郎が顔を出して嫌な予感がした。



「夜桜沙耶華さん?どうも!!上階に越してきた白藤玲一郎と言います!よろしく!!」

と菓子折り渡された!!


「いや…知ってるけど…何で?防犯のことなら隣に頼れば直ぐ駆けつけられるし。上に越してきても無駄よ?」

と言うと


「ふっ、沙耶華?お前バカだろ?いいか?上の階にはな!バルコニーから非常用の下へ降りる階段口がある!それこそお前の寝室と直結の!!」

とふんぞり返って言う玲一郎。


「……そんなのあったわね。どうしよう、ガムテープとかで塞いでこっちに来れないようにしとこうかしら?」

と言うと玲一郎は青ざめ


「いい加減にしろよ?マジで!!」

と頭をグリグリされた。痛い!!


こうして玲一郎が上階にあっさり引っ越して来たのだった。因みにこの日から夕食は私、玲一郎、冴島さん、美月さんになった事は言うまでもなく、たまに月城くんもお呼ばれする羽目になった。


しかも玲一郎の手回しで昼間も私の部屋には世話係の美月さんの他にセキュリティサービスの人が入り、美月さんと仲良く話しているそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る