第5話 夜桜沙耶華に嫌われた理由(玲一郎)

俺は白藤玲一郎。白藤財閥の跡取り息子だ。俺には昔から婚約者がいる。


初めて会った時、俺は…、今まで女の子にモテても自分から好きになった事もないガキだった。だから親の決めた婚約者なんてとうでもいいとすら思ってた。


でも…チラッと顔を見て流石にか、可愛い顔をしていた。悟られるのが嫌で俺は…言ってはならないことを言った。


「なーんだ、どんな可愛い奴かと思えばただのブスじゃん!?は?これならクラスの女の子のがマシだったな!」


と。

沙耶華はそれを聞き明らかに不機嫌なオーラで


「あら…そうですか。まあ、将来結婚するとしても愛のない結婚生活になるでしょうし、私のことは気にしないでくださいね?子供も養子を取れば済むことですし」

と小学生ながら先を見据えた最悪の話から始まった。


俺はどうやら失敗した。好感度ゼロだろう。



俺は一応謝ろうとしたが結局言葉が出てこないどころか、プライドが邪魔してどうしても謝れないし、酷い言葉ばかり言い続けた。照れ隠しだった。


結局俺は沙耶華に嫌われた。正月とかに両家で顔を合わすことがあったけどその時も沙耶華が綺麗な振袖を着ていても


「君ほど着物が似合わない子はいないな!可哀想にな、着物も!」

とか言っちゃってた!!


それでも沙耶華は中学まで女子校だから男の影はあまり心配してなかったが


高校は何故か一人暮らししてでも共学校に行くことを選んだから、俺は変な虫がつかない様監視目的で同じ高校を選んだ!!


クラス別れたけど!!

沙耶華の方から声かけてこないかちょっとだけ期待していたけど1週間…全然俺のクラスにさえ顔を出さなかった。隣のクラスなのに!!


隠れて様子を見てると、なんか、顔が女みたいな男といつも昼に屋上に行ってるみたいだ!!まさか…付き合ってるんじゃないだろうな!?


痺れを切らし俺は屋上に乗り込んだら沙耶華は友達と言ったけど…。


月城昇!!俺は知ってるぞ!沙耶華がちょっと目を離した隙に腹黒い笑みで俺のこと嘲笑ってるの!!

絶対沙耶華を狙ってやがる!!あのあざとく可愛い感じを出して沙耶華の気を引いているのが丸わかりだ!


こいつ嫌いだ!!友達にしたくないタイプNo. 1なのに純粋な沙耶華は騙されている!!


数日後に今度は朝、歩いてなんか年上の男と並んで歩いてるのを発見して運転手に並走してもらい、窓を開けて声を掛けたら今度はマンションの隣の男と言う!!交流を深めたいとか何考えてるんだ沙耶華!!


き、危険すぎる!男なんて本性出したら怖いのに!何の危機感とかも持ってない!更に昼に問いただすとあの男はもちろん、世話係が実はオカマらしいがそんなの都合良すぎだろ?と思う。


俺が男なら沙耶華の為に女装し近づき、警戒心を解き接近する…。計画的とも言える。き、危険じゃねぇか!!月城のやつも察知はしたようだ。

結局月城も交えて夕食会に行くことにした。沙耶華は俺は来なくていいみたいな感じだったが絶対に行く!!


俺は沙耶華に嫌われていることは充分にわかっている…。わかりすぎてる。全部俺のせいだ。今更素直にもなれないが……沙耶華のことは…誰にも渡したくないくらいには……好きだ。


でも言えない。俺からは。きっと。だから全力で他の男共を潰してやる!!例え沙耶華に嫌われ続けても…。

俺と沙耶華は婚約者で結婚はもう決まってる。いずれ結婚する。


沙耶華は愛のない結婚と言ったけど…俺は…沙耶華を幸せにしたいし、あ、愛してもいる!いつか一度だっていいから俺の方を…向いてくれる日が来てくれるといいな……。


昼休みが終わり教室に帰る瞬間が嫌だった。俺と沙耶華は別のクラスだからいつも月城と一緒の教室に入ってく姿を見送る形になる。俺は不器用だし変なプライドもあるし素直になれないからどうしていいかわからない。


放課後になり運転手に断りを入れて久々歩いて沙耶華や月城…途中で今朝の冴島とか言う予備校生とマンションへ向かった。

予備校生はよく見ると前髪に隠れた顔は中々だった。俺の方をなんか気にしていた。明らかに俺の態度で察知したみたいだ。意外と気を使ってくる。

案外いい奴なのかもしれないがこういう地味なのも油断させると一気に距離詰められるから怪しい。


沙耶華に気があるのはわかる。だってこんな美少女女子高生が隣に住んでるとかこいつには夢みたいな話だからな!夢で終わればいいが、沙耶華は何考えてんだ!!


クソ!俺だけ不利なことが多い!

冴島が


「…こ、婚約者って初めて聞いたよ…。す、凄いね」

とおどおどして聞いてきた。


「…何か文句でも?沙耶華の言う通り親が勝手に決めたけど……」


「ああ…し、白藤くんは夜桜さんが好きなんだよね?見てればわかるよ…」

とコソッと沙耶華に聞こえない感じで言う。


ジロッと睨むとビクッとした。


「見りゃわかるだろ!?同情してるのか?俺が嫌われてること!」

と言うと


「そ、そんなつもりは…」

と黙った。気が弱い男だ。すると前を歩いてた沙耶華がいきなりこっちに来た。


「玲一郎……ダメよ!?あんまり冴島さんと仲良くしちゃ!」


「え!?……は!?」

ど、どう言う意味だ!?まさか、俺のことを嫉妬!?え!いや、沙耶華に限ってそんな!!


でもちょっと嬉しいと赤くなると


「あー、ダメダメ!その組み合わせはダメなの!!月城くんも話に入れてあげて!


冴島さん!今度は私とお話ししましょう!」

と沙耶華は冴島の手を普通に取って冴島が今度は赤くなり沙耶華と前を歩いた。残された俺と月城は青ざめた。

どう言うことだよ!!


やっぱり年上が好きなのか沙耶華!?

マンションに着くとどう見ても女性にしか見えん美人が顔を出したが何となく骨格から男だとわかる。


「おかえりなさい!沙耶華お嬢様♡」

といきなり沙耶華に抱きついた!

沙耶華も慣れており


「ただいま美月さん」

とハグし返して俺は我慢できず割って入ると美月とか言う女装オネェは


「……世話係の荻原美月です。ウフフ、末永くよろしくお願いしますわ…」

と余裕で鋭い目つきになった。こ、こいつ、一番危険かもしれないと俺の直感が言っていた。

冴島はおどおどしているし、月城も察知したようだ。この男女は強敵だ!!


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