あの日から心は落ち着かず
あの部屋を見せたアデル様はただの玩具だっただろうと言った。でも……違う。
機械じかけの白い鳥はガルディン様しか作れないはず。私の国は滅び、ガルディン様の国も地図上から消えている。作れる人はもはやいない。それなのに何故作れるの?それは……一つの答えを導き出す。私の心が落ち着かなくてずっとザワザワしている。
「最近、なんだか変じゃないか?」
アデル様とお茶を飲んでいると、そう私に尋ねてきた。
「えっ!?……そ、そうですか?」
「元気が無いように思う」
「そそそそんなことありませんよ!いつも通り元気いっぱいです!」
私は聞いてみようか?聞かないでおこうか?とずっとあの日から迷っていた。私は何を迷っているのだろう?聞くことでなにかが変わりそうで怖い気もする。
「あの部屋を見た時から変だ。なんだ?なにか聞きたいのだろう?」
鋭い……。私の顔になにか書いてあるのかしら?なぜわかるの!?
聞いてみよう。ウジウジと悩んでいても仕方ないもの。
「アデル様、あの鳥は魔道具の一種ですよね?一見、単純そうに見えますが、とても複雑な構造になっている物です。ご自身で考えて作ったのですか?それとも設計図かなにかあったのでしょうか?」
アデル様は少し答えるまで間があった。
「あれはオレが考えたものじゃない。しかし作り方は知っていた。あの鳥は以前話したお伽噺の男の子が作ったものだ」
夜の闇が少し深くなった気がした。胸がドキドキする。
「以前、話したお伽話の続きをしてやろう」
私は頷いた。あの夜、途中になってしまった話だった。
「あの男の子は黒い箱をあけた。その箱は人の憎しみや悲しみなど負の力を糧にしてどんどん魔物を作り出すものだった。魔物は増え続け、世界へ広がっていった。人の負の感情に終わりはないから止まることなどなかったし、魔物によって人々の苦しみや絶望は益々増えてゆく。その男の子の国も魔物を制御することは叶わず滅びた。魔物を操り、兵器として利用しようとしていたのに皮肉なものだった」
アデル様は男の子は両親や大切な女の子を失って……と、以前、男の子が箱を開ける前に前置きしていた。もしかしてその女の子というのは?私の喉はカラカラになってきた。そして魔物に滅ぼされた?
「人々を苦しめ、傷つけた。いくら贖っても足りないほどの罪を男の子にはある。魔物はいくつもの国を消し、今もなお、こうやって人々を襲い続ける。その男の子というのが、前世のオレだと言ったら信じるか?名を………ガルディンと言う。オレはその罪を背負って生きていかなければならない」
ジッと私を紫の目がみつめた。
「おかしいことを言うやつだと思うか?」
私は息を吸った。
「いいえ。思いません。信じます……っ」
「なぜ泣く?すまない。ニーナの両親も魔物にやられたんだよな。オレのせいだ」
私は次から次へと涙が零れていく。
みつけた。ここにいた。大好きなガルディン様。
「いいえ。アデル様のせいではありません。きっと私にも責任があります」
「ニーナ?なにを?」
――――名乗ってはいけない。
咄嗟に私はそう思った。名乗ればさらにアデル様を苦しめる。ガルディン様は私の推測どおりなら……セレナの国が他国から攻められ滅ぼされた報復をするために、黒い魔物を生み出す箱を開けた。このことをセレナが知ってもいいのだろうか?
自分が狂ってしまい、滅びの道を選んでしまったことを後悔しているからこそ、アデル様はこんなに苦しんでる。自分を閉じ込め、この地を選び、人々を守ろうとしている。
代わりに私は言った。
「私をアデル様の本当の妻にしてくれませんか?」
そう口走っていた。
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