王となる少年と王女は出会う
「セレナ王女か!これは噂に違わぬ美しさ!良かったな。ガルディン」
そう言ったのは彼の父だった。まだ存命で、魔道具で世界的にも有名、大国の部類の国の王は後継者である息子のために美しいと評判の王女を手に入れた。
まだ幼さないガルディン様は父王の前ではありがとうございますと丁寧に礼を述べたが、私と二人になると子供っぽい一面を見せた。
「セレナ王女、本当はこんな子供の僕が婚約者となり、嫁ぐなんて……なんではっきり断らないんだ!?嫌だろう」
政略結婚とは、そんなものですと幼いけれど賢い彼を諭すのは簡単だったかもしれないが、私は微笑んで言った。
「嫌ではありません。私にくださった魔道具の鳥、素敵でしたわ。体があまり強くないので、外出はなかなかできませんの。でも鳥を庭園で飛ばして楽しみ、心が慰められました。このような物を私のために作ってくださる方はきっと優しい方と思いましたもの」
え?とガルディン様が思っていた答えとは違ったものだったようで、目を丸くした。私は少し屈んで視線を彼と合わせる。
「これからよろしくお願いします。私の旦那様になるお方」
「えっ……よ、よろしくしてやるよ!あんなもので良いなら、いくつでも!なんでも作ってやる!」
顔を赤らめて、恥ずかしそうに言う彼はとても可愛らしかった。
『美しいが、こんな病弱な王女は嫁として役にたたない。嫁の1人として飾っておくぶんには構わないだろう』
お飾りの妻。そう言われてるのは知っている。体が弱くてなんの役にも立てない私だから、せめて大国に嫁ぎ、自国のためになりたいと思い、この結婚を了承したのだ。そう呼ばれても良いのよと自分に言い聞かせる。
だけど会うたびにセレナ!と嬉しそうに名を呼んで親しく声をかけてくれるガルディン様はとても優しくて可愛らしい方だったし、純粋に私を喜ばせようと楽しい物を作って、その度に笑わせてくれた。私の心を明るくしてくれる。
でもこんな年上の私ではなく、いずれもっと相応しい方と本当の結婚をされると思うと距離が縮まるたびに私の心は痛くなっていく。
「セレナは何がほしい?何でも作るぞ!」
「私はガルディン様が私のために作ってくださることが、とても嬉しいのです。ですから……なんでも……どうしました?」
ジッと私の声を聞いていて、ニコッと無邪気に笑うガルディン様。
「セレナの声……歌声をいつでも聞けたら良いのになって思った。本当に透き通るような綺麗な声だなって思う」
「まあ!ガルディン様が歌ってとおっしゃってくださればいつだって歌いますのに!」
「なんだかもったいない……だろ」
なぜそこは遠慮なさるのでしょう?と可笑しくてクスクス笑った。歳を重ねていけば、私など、いずれいらなくなるし、見抜きもしなくなるでしょう。だけど私はこの瞬間の幸せな時間を心に留めておきます。
大好きですわ。
私の少年の王はいつまでも心に……。
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