苦い薬も甘くしてあげましょう
お医者様に診てもらったところ、疲労と風邪であると言われる。必要なのは薬を飲み、睡眠をとるということだった。
「お薬を飲んで、ゆっくりお休みください。お部屋は寒くないですか?」
「暑いくらいだ。薬はいらない」
「ダメです。ちゃんと飲んでください。果物とか食べれますか?」
「いらない!」
私は半眼になり、ちょっと怒り顔をしてみせる。
「泣きますよ?」
その一言にアデル様は微かに顔をひきつらせた。
「薬は苦手だ……苦い」
「わかりました。じゃあ甘くします。しばらく寝ててくださいね。汗をかいたら着替えてください。お水、飲めますか?飲ませましょうか?」
「子ども扱いするな!できる!」
その反応にクスクス笑ってしまう。なんだか似てるわ。あのガルディン様もこうやってムキになると子ども扱いするなって怒ってたわ。可愛らしい少年の王は……。
「泣いたり笑ったり忙しいやつだな」
「なんとでも仰ってください。また来ます。寝ててくださいね」
私はそう言い残して台所へ行く。孤児院の小さな子も薬の苦味が苦手だった。
苦い薬が嫌いだなんて、勇敢に戦うアデル様が?フフッとまた笑ってしまう。……でも彼の前では笑わないように気をつけよう。へそを曲げて薬を飲まないと言われても゙困るし。
部屋に入るとアデル様は大人しく寝ていた。そっと近づいたはずなのに、長い睫毛をパッと見開く。
「起こしてしまいましたか?」
「いや……大丈夫だ。起きてはいた」
熱が高そうだから、寝苦しいのかもしれない。
「薬を甘くしたので、大丈夫です。ハイ」
スプーンにのせたものを差し出す。
「なんだこれ?」
「ゼリーを作ったので、一緒に薬もパクっといっちゃってください。子どもたちもこれならお薬飲めたので、アデル様も絶対大丈夫です!」
「こっ、子ども扱いするな!お前のほうが年下だろう!?」
「あら?アデル様はいくつですか?」
そういえば、年齢聞いてなかった。
「二十……一歳になる。おまえは確か……」
「私は十七に今年なりますから……えーと、四歳差なんですね。そんな歳なんてどうでもいいので、ハイッ!お薬飲んでください」
ちょうど反対だわと……私はガルディン様のことをふと思い出した。私が彼の元に嫁いだのは18歳の頃で、彼は14歳だった。
「1人で飲める!貸せ!」
私の手からスプーンを取り上げて、自分で口に入れる。小さな皿を差し出すと、残りの薬入りゼリーも食べてしまう。
「大丈夫だったでしょう?」
私はそう言うと、空の皿とスプーンをもらい、アデル様にそっと暖かい毛布をかけた。
「後はゆっくり寝て、体を休めてください」
彼は無言だった。ただ、はぁ……とため息をついて腕を自分の目に当てた。しんどいのかしら?
私はもう眠りそうな彼の゙様子を見て、静かに部屋を出る。
まったく。孤児院の子より手がかかるわ。そう思った……でも、放っておけと言われても゙放っておけない。なぜかアデル様が気になってしまう。1人で苦しまないでほしいと思ってしまう。
私はアデル様の部屋のドアの方を見て、振り返り足を止めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます