王都へ向かう道に雪は降る
王都までの道のりは遠く感じた。
「大丈夫か?少し酔ったか?寒くないか?」
退屈そうに馬車の窓の外を眺めていたアデル様が私の憂鬱そうな表情を読んだらしい。
「いいえ。私はこのくらいでは酔いませんし、疲れません。体が丈夫なことが取り柄ですから寒さも大丈夫です」
もしかして心配してくれたのかしら?
「そうか……ならばいいが、もの静かだったからな」
「まぁ!?私がいつもうるさいみたいじゃないですか」
「いや、そういうわけではないんたが、ニーナが来てから屋敷の中が明るく感じている」
「ふふっ……それは嬉しい言葉です」
思わず笑ってしまう。いつも体を動かしているからか、じっと馬車に乗ってるのは退屈と感じていたのに、アデル様が会話を始めてくれたおかげで、気分が紛れた。
王都は大きな街だった。生まれて初めての王都!うっすら雪が積もる石畳の道。並ぶ露店商、行き交う人々の多さ。雪の舞う向こうに見えるのはお城。
「うわぁ………すごいです!」
「時間があれば、街にも寄れるようにしよう」
「えっ!?ほんとに!?いいんですか!?」
ああ……と頷くアデル様。思わずその顔をジッと見る。前と変わらない冷たい無表情の顔なのに、優しくて、どことなく紫の目が柔らかくなってきているのは気の所為?
「何で顔を見てる?」
「なんでもありません。アデル様は良い方ですね」
「は!?」
ふふっとまた笑った私を見て、プイッと馬車の窓の外を眺める。その横顔は不貞腐れたような照れているような顔で、なんだか可愛い。
北の魔王様なんて嘘。本当は普通の人で、北の地を守ることで、たくさんの人を救ってくれている人だと私は知った。
だんだん雪が強くなってきた。降り積もって行く道。こんな雪のように私はアデル様のことを知って気持ちが少しずつ積もっていってる。もし……それがいっぱいになったらどうなるんだろう?
カタカタと揺れる馬車は王城に入った。
「さて……行くぞ」
「はい。アデル様」
始まる。私の奥様の演技が試される時がきた。
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