#13 衛兵の謝罪② [カイン]
俺はセカイとビルキの模擬戦を眺めながら、ナールについて考えていた。
本来、セカイに会わせる気はなかった。
しかし、他の部下のセカイに対する評判を聞きどんな様子か見てみたくなった。
セカイではなく、ナールの様子をだ。
初めてナールがセカイを見た時殴ったのは、間違いなくセカイの呪いのせいだ。ナールは馬鹿だが悪い奴じゃない。初対面の子供を殴るような奴じゃなかった。
そして今日、彼を殴ったことを後悔し謝罪をした。
いつもの彼のように見えた。
セカイの呪いは絶対ではない、ということだ。
ナールだけでなく、セカイの評判は訓練所で良くなっている。
あくまで第一印象が人によって悪くなる呪い、といったところだろうか。
セカイについては分からないことが多い。彼がタンクの訓練をしたいと言った時、事情を聞くと攻撃されそうになると自動で魔法が展開されることを聞いた。
オーガと戦った時も、自身が吐いた血が集まりオーガの右目へ攻撃したらしい。
もしかしたら、セカイには水の精霊がついているのかもしれない。
精霊だと思う理由は、防御魔法が発動するタイミングである。模擬戦では魔法が一度も展開される事はなかった。これは誰かが意図的に魔法を発動する時としない時を区別して出来ることだ。誰にも気づかれずそんな芸当ができるのは、精霊しかいないだろう。
セカイはいったい何者なのだろう。
ナールに殴られた時、魔法が発動しなかったことを考えると、精霊とはおそらくこの街で出会ったのだろう。ヒューマンは精霊の声が聞こえない。魔力を操れない彼では意思疎通は不可能だ。つまり、一方的に精霊達に好かれていることになる。
ありえない話だが、どこか納得する。
セカイは間違いなく人たらしだからだ。
セカイは人に嫌われる呪いを持っているが、同時に人に愛される才を持っている。
人たらしと言っても侮ってはいけない。
かつてとある英雄はその才能を英雄の素質と言ったからだ。
セカイはただの普通の子供ではないと俺は確信していた。
彼の正体が、精霊神と結ばれた勇者の子孫と言われても俺は驚かないだろう。
むしろその可能性は大いにある。
もしそうなら、魔王が彼の才能を脅威に思い呪いをかけ辺境へ転送させた、といった展開だろうか。
殺さなかった理由は分からないが、彼の呪いの強さを考えると魔王が関わっていてもおかしくない。
しかし、この考察には大きな穴がある。
それはセカイの弱さだ。
俺はセカイとビルキの模擬戦を集中してみる。
戦闘訓練を始めて2ヶ月近くたったが、二人の戦力差はなかなか縮まらない。
勿論、成長の『壁』にあたり戦力差がなかなか縮まらない時期はある。しかし、セカイはその『壁』にすら当たっていない。ただただ成長が遅いように感じられた。
基本的に初心者の方が成長しやすい。それに加えオーガを倒したのなら二人の実力はもっと縮まるはずだ。
それでもセカイの体は一向に成長しない。
むしろ弱くなっていると感じてしまう時さえあった。
セカイはビルキとの模擬戦を終える。
今回もセカイはビルキに一撃も入れることはできなかった。
センスは悪くない。ただ体が追い付いていない感じだ。
するとその様子を見ていた、他の衛兵から模擬戦を申し込まれていた。確かあの衛兵は最近入った新人だ。実力が近いから申し込んだのだろう。
模擬戦が始まると予想外の展開になった。思ったよりセカイが彼に食いついている。実力は拮抗どころかセカイがやや有利だった。
どういう事だ?
セカイだけじゃない。訓練相手の新人も俺が思っているより弱いように感じた。
実力を見誤った、俺が。
なぜ?
「……まさか俺達が成長しているのか?」
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【ステータス変化】※ステータス値は省略
名前:ナール
種族:ヒューマン
レベル:40→45
印象:悪印象→中立
備考:始まりの街の衛兵。馬鹿だがいい奴。
名前:訓練所にいる衛兵(平均)
レベル:35→38
印象:悪印象→悪印象・中立
備考:訓練所にいる衛兵は向上心が高く普通の衛兵に比べてレベルが高い。
名前:始まりの街冒険者(平均)
レベル:20→22
印象:悪印象
備考:D~DD級になるとほかの街に拠点を移すことが多いため、他のギルドに比べレベル平均が低い。
名前:カイン
種族:ヒューマン
レベル:99→120
印象:好印象→家族愛(子)
備考:始まりの街の衛兵長。15年前に子と妻を亡くし冒険者を引退した。
名前:ビルキ
種族:ヒューマン
レベル:71→90
印象:中立→家族愛(弟)
備考:始まりの街の衛兵。身長180㎝。Fカップ。セカイとは干支が同じ。
名前:始まりの街の住民(平均)
レベル:5→6
印象:嫌悪~憎悪
備考:魔獣の脅威に晒されないため平和ボケしている。
名前:マイ・リアシー
種族:ハーフエルフ
レベル:162→172
印象:恋慕
備考:始まりの街冒険者ギルドの受付嬢。元A級冒険者。40歳。魔法拳士。
名前:ガイル
種族:ヒューマン
レベル:251→256
印象:興味→執着
備考:始まりの街冒険者ギルドのギルドマスター。元A級冒険者。支援術師。既婚者で愛人が2人いるが誰一人として愛していない。
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