#12 仲間の証② [セカイ]
目が覚める。
知らない天井だ。
俺は体を起こし周囲を確認する。
ふかふかのベッドで眠っていたようだ。
ベッドのわきには椅子と机。机の上には果物が置かれてある。
明らかに病室だった。
というか、異世界でもお見舞いに果物もってくるんだ……
すると病室の扉が開く。
そこにいたのは鼻歌を歌う私服姿のリアシーさんだった。
「あ、おはようございま―――「セカイさん!!良かったー!!」
リアシーさんは泣きそうな顔で俺に抱き着いてきた。
というか、すぐに泣き始めた。
「あ、あの――「心配したんですよ!オーガと戦って病院に運ばれたって聞いたときは!」
リアシーさんが俺の胸に顔を押し付けてくる。
すこし息が荒い気がする。それほど心配してくれていたのか。
「ごめんなさい」
「言いましたよね!無理する前に私に相談してって!」
「はい、言ってました」
「じゃあ、何で無理をしたんですか!」
彼女は俺の胸で泣きながら説教してきた。
まるで拗ねた子供のようだった。
「……ごめんなさい」
俺は謝ることしかできなかった。
10分ほど抱き着かれながら説教されると、ようやくリアシーさんは俺から離れる。
そして、真面目な顔になると彼女は頭を下げた。
「この度は誠に申し訳ございませんでした」
彼女は冒険者ギルドの代表者として俺に謝罪をする。
「今回、ニューソードの皆さんとセカイさんが迷い込んだ場所は、本来冒険者ギルドが管理しておくべき場所でした。
あのダンジョンは新人でも安全に探索ができるよう、どこでも帰還用の魔石を使用できるよう改修したものでした。しかし、この度セカイさんが見つけたボス部屋は未発見の部屋で、改修前の仕様となっておりました。
そのため魔石が使用できずセカイさんは怪我を負う結果となってしまいました。
冒険者ギルドを代表し謝罪いたします。申し訳ございませんでした」
なるほど。
本来ボス部屋は帰還用の魔石を使うことができないのか。
それを冒険者ギルドができるようにしていたけど、俺達が見つけたのは未発見の部屋だったから帰還用の魔石が発動しなかった。
その後も、リアシーさんから今後の対応について説明された。
医療費は冒険者ギルドが全て出すこと。
今回の一件は内密に処理したいため、ギルドランクが上がらないこと。
その代わり多額の謝礼金、という名の示談金が支払われること。
ギルドランクが上がらないことには思うところがあったが、そこら辺の話は全てカインさんが仕切ったらしい。
なら俺が出る幕じゃないだろう。
そして何より一番驚いたことは、あの戦いから1週間がたっていたことだ。
「えっ!1週間も寝てたんですか」
「はい。そのため、新人冒険者育成制度の期間は終了しました。
現在、セカイさんはニューソードのメンバーではございません」
「そうですか……」
俺は有言実行できなかったことになる。
最大限努力してできなかったなら諦めも着く。
しかし、1週間眠ったままで何もできなかったとなるとやるせなかった。
そして、その原因も己の慢心が引き起こしたことだ。
悔しさがこみあげてくる。
必死に謝罪するリアシーさんを何とか宥め、彼女に帰ってもらった。
一人になり俺はこれからのことを考えていた。
彼らと会った時、何というべきかだ。
しかし、考える間もなく病室の扉が勢い良く開かれた。
「セカイ!目が覚めたって本当か!」
「あ、リーダー、おはよう。シルドアウトとフレデリカもおはよう」
「おはよう――って体は大丈夫か?」
「うん。どこも痛くないよ。腕も普通に動かせるし」
「良かったー」
3人とも走ってきたのか息が切れた様子だった。
そして、息を整えると3人とも頭を下げる。
「ごめん!あの時俺がボス部屋に入ろうとしなければこんなことにはならなかった」
「セカイじゃなくて本来は俺がするべき役割だった。すまない」
「私もごめん!結局あの時私は何もできなかった」
俺は慌ててフォローする。
「皆が謝ることなんてないよ!
今俺は生きてるし、あの時は俺がタンクをするのがベストだったはずだ。
それに、皆がいなかったらオーガを倒すことはできなかったしね」
そして、俺も彼らに頭を下げる。
「俺こそごめん。
魔石があると慢心してボス部屋に入ったのは俺の責任だと思う。
それに結局宣言通りDD級になれなかった」
俺は目を閉じて彼らの言葉を待つ。
どんな返答も受け止める覚悟をする。
しかし、帰ってきたのは意外な返事だった。
「セカイの責任じゃない。
それに、まだあと俺の誕生日まで1週間あるしな」
「そうだな、俺達はオーガも倒したんだ。ダンジョンボスなんて楽勝だろう」
「むしろ今ダンジョンボス倒したら、私達だけじゃなくてセカイの冒険者ランクも上がるからラッキーじゃない?」
彼らは俺を励ますだけでなく、今後の予定まで話していた。
まるで俺がニューソードの一員かのように。
「それって、つまり、俺はまだこのパーティに居ていいってこと?」
「何言ってんだ、当たり前だよ。だって俺達は『仲間』だろ」
ウルフが手を前に出す。
俺は泣きそうになりながら答えた。
「うん!」
俺はウルフの手をつかみ握手をする。
異世界に来て2カ月。俺は初めての仲間ができた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【ステータス変化】
名前:ウルフ
種族:ヒューマン
レベル:49→52
印象:嫉妬→友情
名前:シルドアウト
種族:ヒューマン
レベル:45→52
印象:侮蔑→友情
名前:フレデリカ
種族:ヒューマン
レベル:42→52
印象:失望→友情
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます