#8 ギルドマスターの作戦① [セカイ]
カインさんから武器を買ってもらった翌日。
俺は冒険者ギルドに訪れ、初めての依頼についてリアシーさんから説明を受けていた。
「Eランクは基本的に薬草採取クエストしかできません。
北の門から出た先にある森で採取してきてください。
基本的に魔獣は出ないと思いますが警戒はしてくださいね。
念のため最初の依頼は私と一緒に行きましょうか?」
それはちょっと恥ずかしい気がする。
「大丈夫です。
あと薬草の見た目とかを教えてくれませんか?」
リアシーさんは少し残念そうな顔をした。
「薬草の見た目や効果については薬草辞典にのっています。
薬草辞典は2階にある冒険者用資料室にありますので依頼の前に読んでおいてくださいね。
また魔獣の詳細について書かれた本や今後の依頼に関する本もありますので積極的に活用してください」
本?!
本があるのか。
「ありがとうございます!失礼します」
俺は急いで2階へと上がる。
そこには資料室と書かれた部屋があった。
ノックをして資料室に入ると、そこには小さな本棚と机や椅子が置かれてある。
人は誰もいなかった。
本棚には30冊程度の本が置かれてある。
薬草辞典。
魔獣辞典。
魔力操作概論。
魅力的な名前の本が沢山置いてある。
全部読もう。絶対に。
俺はこの世界について知らないことが多すぎる。
一般常識はカインさんから教えてもらったが、地理や魔法については全く知らない。
俺は早速薬草辞典を読み始めた。
その日から俺の生活は少し変わった。
午前中に薬草採取の依頼をこなし、午後からは資料室で本を読むか訓練所で鍛錬をする充実した日々を送っていた。
「あら、セカイさん。奇遇ですね」
彼女以外は。
ポーションの値段を把握するため、訓練所に行く途中道具屋に寄ったのだが
今週で7回目だ。
一日2回のペースで彼女と
勿論冒険者ギルドで会うときはカウントしていない。
最初は少しうれしかった。
綺麗なお姉さんと会えるのだから。
しかし毎日出会うと流石におかしいと気づく。
休日に行く先々で計5回もあった時はついに恐怖が勝った。
そんな彼女はポーションに関するうんちく話を話していた。俺は適当に相槌を打ちながら冷や汗をかく。
話すことが為になる話なのも謎なんだよなぁ。
俺はその後適当に話を切り上げて訓練所に行く。
訓練を終え、家でカインさんに彼女のことについて相談した。
リアシーさんはストーカーかもしれない。
自意識過剰だったら良いのだが。
ちなみに勇者の安らぎ亭は、いつも座る席の隣に彼女が毎回座っているようになったため最近行くのをやめている。
「何が目的なんでしょうか」
「分からないな。けどストーキングされているのは間違いないだろ」
俺はため息をつく。
まさか異世界でストーカーに悩まされるとは思ってもいなかった。
「言うまでもないが気をつけろよ」
「それは彼女がハーフエルフだからですか?
それともストーカーだからですか?」
「それもあるが、元A級冒険者ってのも引っかかる。
A級が化け物だって話はこの前にしたよな」
「はい」
「実力が化け物ってのもそうだがな。
A級は倫理観が少しおかしいんだ」
「倫理観ですか?」
「ああ。A級は戦闘の天才だ。
しかし、決して楽してA級になれたわけじゃない。
常人には耐えられないような鍛錬、修羅場を乗り越えてA級になってるやつがほとんどだ。
どこかぶっとんでる奴しかA級にはなれないんだよ。
だからハーフエルフの嬢ちゃんがセカイをストーキングするのも、彼女にとっては普通のことなのかもしれない」
リアシーさんがカインさんより強いと知った時はすごく驚いた。
全くそうには見えない。
確かに良く見ると筋肉は引き締まっているけど、体格はカインさんの方が大きいし。
そんな彼女も俺が想像もつかないような鍛錬をしていたのだろうか。
「だから気をつけろよ。
悪気はなくてもセカイを傷つける可能性だってある」
カインさんはそう話を締めくくった。
次の日、俺は彼女からご飯に誘われた。
決して悪い人じゃない。
俺を気にかけてくれていることは十分伝わってくる。
しかし、リアシーさんが何をしたいか全く分からない。
俺は彼女を信用しきれないでいる。
それがすごく申し訳ない。
こんな気持ちでご飯はいけなかった。
適当に理由をつけて俺は申し出を断った。
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