強者に好かれ弱者に嫌われるスキルをもって転生した少年

三つ眼の荒木

#1 世界の意思 [セカイ]

 何かが顔に当たり俺は目が覚める。薄く目を開けると、目に入ったのは一面の青空と穂のような草だ。どうやら風に揺られ顔に当たったらしい。寝返りをうち今度は顔に当たらないようにし二度寝を決行する。


 そよそよと微風が体に当たり心地よい。


 ん?


 青空?草?風?


 俺は目を見開き体を起こす。周囲を見渡すとそこは平原のど真ん中だった。正確に言うならば平原を貫く道のど真ん中。


「は?」


 おかしい。俺は昨日普通に家で寝たはずだ。明日は初の登校日だったため、遅刻しないよう早めに寝たのをしっかりと覚えている。


「すみませーん。誰かいませんかー」


 俺は大声で誰かに話しかける。

 しかし声は返ってこない。


 『怖い』と思った。


 心臓の音が聞こえる。

 よく分からない場所に一人でいる。という事実が漠然とした不安をかきたてる。幼稚園の頃、モールで両親とはぐれた時に感じたものに似ている。


 少し泣きそうになるが必死に堪える。もう俺も高校生になる。こんなことで泣くなんてダサいという見栄が俺を少し冷静にさせた。


 まぁ、ドッキリだろう。


 常識的に考えて俺がこんなところで寝るわけがない。つまり誰かが俺をここに運んだことになる。俺みたいな一般人をここに運ぼうなんて誰も思わないが、唯一あり得るのはドッキリ番組を行うテレビ局だ。


 少し前に似たようなドッキリをテレビで見たこともある。その時は芸人さんが受けており反応を面白おかしく撮っていたが、今度は一般人にしてみたという企画なんだろう。なぜ俺が選ばれたのかは分からないが、そこは考えてもしょうがない。


 そう、だから大丈夫だ。ちょっと歩けばすぐにカメラが来て事情を説明してくれるはずだ。


 大丈夫、大丈夫。


 俺は深呼吸をする。


「よし!」


 両頬を叩き覚悟を決めた。


「さてまずはどっちに行くかだな」


 俺はどこかに隠されているだろうマイクに声が聞こえるよう独り言を呟きながら、道の先をじっと見つめた。



⭐︎



 初めに彼を知覚したのは世界そのものだった。それ・・はこの世界を創造する存在。神すらも創造するこの世界のシステムのようなものだ。


 もしその存在に人格があった場合、こう思っただろう。


 私の中に何かが生まれた、と。


 初めてのことであり想定外のことだった。自分が創造していないものが創造されることは。


 何の変哲もない道の真ん中に突如創造された彼は人間に近かった。体の構造は紛れもなく人間だ。しかし魂は似て非なるものだった。


 しかし、何が違うのかそれ・・は理解できなかった。


 彼は危険な存在だ。理解できないと世界を制御できない可能性がある。


 しかしそれ・・は彼を排除しなかった。


 理解できないものを理解した時、この世界はより良いものになると信じたからだ。


 その日世界に意思が生まれた。


 紛れもなく彼のスキルの影響であり、混沌への序章であった。

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