第32話 勇者SIDE それでも旅は続けるしかない
俺達が故郷に帰ろう…そう思った時だ。
いきなり通信水晶が光り出した。
「カイト殿…大変な事が起きたのだ」
相手はローアン大司教か、かなり大変なことだろうが、此処は押し切るしかない。
「すみません、俺達はこれから村に一旦帰る事にしました…なにか大変な事が起きている様なので…罪は後で負います」
ローアン大司教の目が曇った気がした。
「すみません…そのロマーニ前教皇が、命令を下して皆殺しにしてしまった…その…村人は全員殺されてしまわれました」
「冗談ですよね…」
「冗談ではありません…本当にすみませんとしか言えません」
「嘘ですよね…」
ローアン大司教の話では、俺の父親の風評があちこちに広まっていたそうだ…特に京子にしていた仕打ちの酷さは村から村へ広まり、教会でも困る程だったと言う事だ。
「あの、そのなんて言えば良いのか…だがそれと、その皆殺しとどんな関係があるのですか」
確かに問題ではあるが精々がむち打ち刑か、数年の投獄で済むはずだ。
「『村ぐるみ』そこが問題でして勇者パーティの親を含む親類が絡んでいるのが問題でして…」
「確かに俺の親が最低な人間なのは解る…だが殺すなんて酷すぎる」
「あの、カイトの親は兎も角、私の親はそんな事に関わってなかったわ」
「私の親も、そうです」
「私の親だって」
俺の親の罪だって殺されるような罪じゃない。
まして他の人間は無罪だ。
「解りませぬか…失礼を承知で言わせて貰えれば『強姦村』として有名になり少女を家畜の様に…酷い扱いをしていた…これが広まってしまったんです。勇者カイト殿の父親は確実に関わっています…確かに他の皆さまの親は関わってないのかも知れません…ですが三職の親なのですから『止めなかった』それだけで醜聞です…確かに前教皇ロマーニは法には従っていません」
「その通りだ、やり過ぎだ」
「「「そうよ」」」
「確かに彼は悪い事をしました…ですがこのまま放置したら『強姦村出身』『強姦魔の息子の勇者』『強姦を黙認した親の娘の(聖女)(賢者)(剣聖)』有名になった時に…貴方達はそう呼ばれる可能性があります…その事実がロマーニを凶行に走らせたのです」
「そんな…たかがあんな事が…そんな…」
「あんなの他の村でもある事だわ」
「そうよ…」
「…此処迄の事になるなんて」
「たかが?!そう言われますが…自分の身に置き換えて下さい…もし貴方達に同じ事が起きたら、大した事無い。そうは言えないでしょう? 貴方達は勇者パーティだ、皆が注目している…その身内は一般人ではないそう思う必要があります。ロマーニのやった事は犯罪です…ですが、そこ迄の事をさせたのは『強姦村の住民』の凶行。貴方達を醜聞から助ける為の行動なのは間違いありません」
俺の親父が…いや村の皆が馬鹿やったからか…
親を殺したのは許せない…だが、そうしなければ俺達は大きな爆弾を抱える事になる。
もし、京子に俺達の誰かが手を差し伸べれば…無理だな四職でもなかった俺達は只のガキにはどうする事も出来なかった。
「それでロマーニはどうなったんだ?」
「村を滅ぼした証拠を持ち込んだのはリヒト殿でして…そのままリヒト殿に粛正されました」
「「「「リヒトが」」」」
「はい、此処に乗り込んできて、証拠を出して追及しました」
「それで…リヒトは?」
「最初、話を我々が信じなかった為…聖騎士と激突…結果、前教皇ロマーニを斬り殺しましたが…重傷を負いました、あの傷ではもう…冒険者を続ける事も難しいでしょう」
「そうですか…」
最悪だ、故郷は無くなり…リヒトはもう俺達の世話は出来ない。
「旅に戻るぞ」
「「「うん…」」」
これでも俺達は旅を続けるしかない…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます