第3話 癒やしの大福モッチさん

「はぁ……はぁ……無駄に走っちゃった……」

 

 学校前から自分の家まで全力疾走。

 弓弦のせいで、なんだかぐったりしてしまった。

 あ~庭先に咲いたパンジーをゆっくり眺めるつもりだったのに忘れてたぁ。

 仕方ない……制服から家着に着替えて、麦茶を飲む。


 このお家は弓弦の隣だったマンションを引っ越して建てたお家。

 白い壁が素敵で私も大好き。

 庭の花壇はお花がいっぱいで、ブランコに座って詩を書く時間はとても素敵な時間。


「はぁー」

 

 でも今日は庭に出る時間はないな。

 弟の勇気がボール蹴ってたし。


 私はリビングにあるお父さんのノートパソコンを自分の部屋へ持っていく。

 部屋で使う許可はもらってあるし、子供用に設定もしっかりしてある。

 まあ両親からの信頼は抜群だから、ある程度自由にはできるのだ。


 やってる事といえば、詩を投稿サイトに投稿することくらいだしね。


 地味……でもいいんだもん!


「あ……! 感想! きてる!!」


 当然、投稿サイトでも埋もれている存在の私。

 でも最近、感想をくれる人が現れたのだ。


「『今回のスイートアメジストさんの詩もめちゃくちゃ心に響きます。あなたは神です!』 だって! うわぁ~ん! 嬉しいよー!」


 スイートアメジストは私の詩人ネーム。

 紫色のアメジストが大好きなんだ。

 

「大福モッチさん、あなたこそ私にとっての神ですよ……」


 感想どころか見に来てくれる人なんかほとんどいない底辺の私。

 でも三ヶ月前から、この大福モッチさんが感想をくれるようになったの。


『感動しました!』


 って感想がきた時には私はもう驚きと嬉しさで胸がいっぱいになった。

 

 嬉しくて泣いちゃった!


 詩を書くのは好きだけど、やっぱり華々しいランキングとか書籍化しました!とかそういうのが目につく投稿サイトはもうやめようかなって思ってた時。


 誰に読んでもらえなくても気にしない! っていうのは強がりだった。

 誰かに読んでほしかったんだ……。


 だから嬉しくて『感想ありがとうございます。もうやめようかと思っていましたが続けてみようかと思います』ってお返事した。

 それから大福モッチさんは一言どころじゃない感想をくれるようになったの。


 もう私の創作意欲はめちゃくちゃ爆発した!


 大福モッチさんの感想は私の心の支え、宝物。


 今日の新作はどうかな?

 気に入ってくれるかな?


 そう思って頑張っている。

 頑張れている!

 楽しく創作ができている……!


「ふふ……大福モッチさんって名前が可愛い。どんな女の子なんだろう」


 会える事なんて絶対にないんだろうけど、私は妄想してみる。

 私の詩を気に入ってくれるんだから控え目な女の子かな?

 二人で大福を食べてお茶を飲みながら、どんな恋をしたいか? とか話してみたいな。


 でも、もしかしたらすごく年上のお姉さんかもしれない!


 実は、恋の詩を書いてるくせに……恋は、まだしたことがない。

 私の王子様いつか出逢えるよね?


 私は色んな妄想をしながら、新作の詩を投稿した。


 

 

 

 

 

 

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