25 ナンバー2
フラグ一級建築士の仕事は早い。次の日には早速フラグのひとつを回収し、神の座へ至る道を舗装していた。
それは昼休み。担々麺に舌鼓を打った後、トイレに寄ってから教室へと戻ろうとしたときのことだ。
「お、守純。いたいた」
「おう、長城。どうした?」
丁度トイレから出てきた俺に、長城は手を上げながら近づいてきた。
今日の昼は、永峰と名川の三人で食べた。四天王のひとりをハブったわけではない。長城は他のクラスメイトとの交流を深めるため、教室で一度別れたのだ。
長城は隣に並ぶと、早速要件を切り出してくる。
「朝言ってたことなんだけどさ」
「男子たちで懇親会をやろうってやつか?」
「今日の放課後でいいか?」
「もうみんなに確認取ったのか、早いな」
「みんなって言っても、たった十人だしな。なにより早いに越したことはないだろ」
「違いない」
「よし、みんな問題ないってことで――」
「いや」
長城が話を纏めようとしたところで思い出した。
「悪い、俺は今日無理だ。先約がある」
「マジか。ちなみにそっちの予定をずらせたりは……?」
「難しくはないが……」
先約の相手、みつき先生の顔を思い出す。
昨日に引き続き、みつき先生のお手伝いの約束をしているのだ。クラスの懇親会といえば、みつき先生も気にしないでと笑って送り出してくれるのはわかっている。でも、みつき先生とふたりきりになって親交を深める機会を手放すのは、あまりにも惜しすぎる。
ここは苦渋の決断をした。
「先約は先約だからな。相手を蔑ろにするような真似はしたくないんだ。すまんな」
「いや、相手を蔑ろにしたくないって気持ちは大事にするべきだ。よし、だったら懇親会は明日以降だな。向こう数日は、いつでも大丈夫そうか?」
「ああ、大丈夫だが……いや、いい。俺のことは気にしないで、今日始めちゃってくれ」
「守純ひとり抜きなんて、そんなわけにいかないだろ」
「俺はいいんだ。それよりもほら、まだクラスに馴染めてない奴とかいるだろ?」
数少ない男子同士、入学三日目にもなればすぐコンビやトリオができ始めてはいる。でもひとりだけ――たしか名前は日景といったか――まだポツンとしている奴がいるのだ。好きでそうしているわけではないのは、周りの顔色を伺うような態度から感じ取れる。
ソロプレイヤーの辛さは、この学園で誰よりもわかっているつもりだ。でも俺は人間としてまだまだだ。ソロプレイヤーに自然と近づき、なにをキッカケに話しかけたらいいのかわからない。向こうもまた、同じ気持ちのはずだ。
でも懇親会さえあれば、ソロプレイヤーから脱するのは難しくない。だから彼のためにも懇親会は急務である。
本当だったら俺も懇親会に参加したいが、みつき先生と繋がりたいという強い思いが後ろめたさを生みだした。愚か者の自覚があるだけに、懇親会は遅らせるわけにはいかない。
「機会を必要としている奴を優先してやってくれ」
「守純……おまえはいい奴だな」
長城の口元から笑みが零れだした。
「わかった。悪いけど守純抜きで、放課後早速やらせてもらうわ」
「おう、気にしないでやってくれ」
「ま、それはそれとしさ」
長城がこちらの肩に手を回し、がっしりと組んできた。
「このクラスはこれから、俺たちで盛り上げていこうぜ」
「……ああ!」
掴まれた肩に、熱い友情を感じた。
長城がクラスのナンバーワン男子であるのは、既に誰もが認めることであろう。そんな奴から『俺たち』という言葉が飛び出してきた。
クラスのナンバー2は、俺が指名されたようなものだ。
神は一日にしてならず。かくして昨日、葉那と母ちゃんが不甲斐ないと嘆いていた姿を一切顧みず、俺は
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