みたいものをみられないひとみたくないものをみてしまうひ
涼
1 みたいものをみられないひ
空は、曇っていた。
今日は、太陽が見たかった。
私は、何にもない空を見上げて、あぁ、教室の机に座って、授業中にね?それで、ずーっと想ってたんだよ。この空が、今日は晴れたらいいのになって。
だって、今日は、私の誕生日だから。私がね、生まれた時も、曇ってたってさ。猫のナリリが、子どもを産んだ日は、あ、3匹ね。とーっても、晴れてたんだって。
なんでかな…。って思ってるんだよね。いつも。
小学校の時、見たいアニメがあってさ、あ、セーラームー〇ね。
始まる前には帰りたかったのに、いつも塾で見られなかった。あ、これ、お母さんに言いつけたら、
「何言ってるの!アニメなんて、大きくなって、時間できたら見ればいいでしょ!お勉強の方が大事でしょ!」
って言われたんだけど…。それって、どうも違う気がしてさ。
だって、アニメだよ?しかも、セラームー〇だよ?高校生になって、見て、面白いって思えるのかな?その時は、まぁ、そうなのかな、って思ったりもしたんだけど…。幼心に、今、やっぱり、見たかったなって思うよ。
てかさ、高校生になったら、増々、時間に追われてる訳じゃん?あ、こうして、授業中に数式も憶えずちんたらペン回ししながら、曇ってる空に文句言ってるやつに、言う資格はないのかも知れんけど…。
でさ、今日、あ、さっきも言ったけど、私、誕生日な訳。で、授業終わったら、速攻家帰って、撮りだめてたドラマ、一気見しようとしてるの。分かる?このワクワク感。一気見だよ?次の週まで見るの待たなくていい、その爽快感足らずや!!
…と、想ってたんよ。
そしたらさ、家に帰ったんさ、部屋に駆け込んだんさ、ブルーレイが、ぜーんぶ、消えとった…。
理由を聞いたら、この前のテストで、順位、2つ落としたから…だとさ。あ、一応言っとくわ。私、頭いいの、これでも。学年で、5位以内は当たり前だったんださ。それが、7位になってしもて…。それで、母は、腹を立てたと言うらしいの。
あんまりじゃない?セラームー〇も、見れず、撮りだめてたドラマも見れずだよ…。
小学校の時言ってたさないな。『テレビなんて、大きくなったらみたらいい』って。
その言葉は、何処に行ったんさいな…。7位で、自由奪わんといてさ。私、そんなに頑張らなかったかな?そんなに裏切ったかな?7位って、そんなにいかんかね?
涙、でたわ。お母さんに、初めて、物、投げつけました。
「なんでそんなに私の自由奪いたいの!?私、そんな悪いことしてないでしょ!?7位が何よ!!なんで、そんな…ことで…そんな…ことで…………」
それ以上、言葉が出てこなかったヨ。
どうしてだろうね…?恨みつらみは、幾らでもあったのに…。この、17年間、溜めて、溜めて、溜めて…。
それなのに、文章で起こしてみたら、たった、2行ヨ。
この日、私、初めて知ったんヨ。死にたくなる人の気持ち。
ちっぽけなことで、死にたくなるんだな…、人って…って。
ちっぽけなこと…わかってる。ドラマ、レンタルで良いじゃんね?配信映像で良いじゃんね?分かってる。…けど、死にたくなったんヨ。
こんな、自由に、見たいものも見られない…、誕生日に、空が曇るどころか、死にたくなるって…。どうよ?
人間、最近うつの人、多いって言うけど、なぁんか、気持ちが分かった。そんな日。
みたいものをみられないひ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます