第66話 マーガレット視点
~マーガレット視点~
こんな体になって後悔するなんて・・・
バレリオ兄様があれ程口煩くわたくしを注意してくれていたのに聞く耳を持たなかったわたくしが悪いの?
わたくしを甘やかしたお父様が悪いの?
簡単に婚約者を捨ててわたくしに心変わりした彼らは悪くないの?
でも、楽しかったの。
人のものを奪うのが楽しくて仕方がなかったの。
お兄様にどんなに『このままだと将来困るのはお前だ』と何度注意されても止められなかったの。
今までにわたくしが苦しめてきた人達の恨みが、わたくしをこんな姿にしたの?
今のわたくしが出来ることは、出された食事を自分で食べること。
暇だから苦手だけれど刺繍をすること。
本を読むこと。
日記を書くこと。
それぐらいしか出来ることはないの。
排泄すら、アレクシスに連れて行ってもらわなくては出来ない。
一時期はアレクシスに酷い抱かれ方をされていた。
あれも、わたくしへの罰だったの?
今も体を求められるけれど、優しく抱いてくれるようになった。
最近は車椅子という物で小さな庭に出れるようになった。
ここは生い茂る木に囲まれた森の中のようだ。
それが分かったからといって、ここから逃げるつもりはないの。
だって、今のわたくしはアレクシスがいないと生きていけないもの。
こんな体では生きるために働くことも出来ない。
今もまだこれは夢かもしれない。
朝起きたらすべて元通りになっている。
と、毎日願って眠る。
そして毎朝、起きた時の絶望と諦めの繰り返し。
泣かない日はない。
いくら後悔しても足は元に戻らない。
わたくしは毎日、神様に祈っている。
可哀想なわたくしを神様が同情して時を戻してくれると信じて・・・。
戻してくれたら次はもっと上手くやるわ。
・・・違う。こんな考えだから足を失ったのだ。
まだ今のわたくしでは神様も同情してくれないわよね?
もっと綺麗な心になれば、時を戻してくれるでしょう?
そうね。
時が戻ったら、スカーレット姉様から婚約者も専属侍女も奪わないわ。
トライガス王国の男にも手を出さない。
帰る場所がなくなるもの。
まずはカサンドリア王国に行って、ルイス様かリアム様を手に入れるわ。
それまでは純潔を守って、どちらかと既成事実を作れば・・・
ルイス様とリアム様・・・どちらも魅力的だったわ。
欲しい。本当は二人とも欲しいの。
もちろんヴィクトリア嬢とも次は仲良くするつもりよ。
わたくしは彼女の義姉になるのですもの。
・・・まだ神様は時を戻してくれないかしら?
でも、これだけ願っていたらいつか叶うと思うの。
だって、お父様も今までの男たちも、わたくしのお願いをすべて叶えてくれたわ。
神様だって同じでしょう?
わたくしのお願いを叶えてくれるわよね?
毎日書く日記帳もあと数ページしか残っていない。
もう何冊目かしら?
これはアレクシスに頼めば新しい物を持ってきてくれるのかしか?
終わりそうになれば、いつの間にか新しい日記帳があるの。
そんな事を思っていたある日悪魔がやって来た。
「新しい妄想帳を持ってきてやったぜ」
この顔は忘れない!
わたくしの足を奪った悪魔よ!
「返して!わたくしの足を返しなさい!」
「おいおい、切り落とした物はもう二度とくっつかないってことを知らないのか?」
「!!毎日神様にお願いしているわ!」
「知っているよ。まあ、頑張れ」
なぜ悪魔が日記帳の内容を知っているの?
「誰だって、わたくしのお願いを聞いてくれるわ!それは神様だって同じよ!」
「お前な~命があるだけ有り難いと思えよ」
「帰って!二度とここには来ないで!」
「その妄想帳は一冊一年分だ。毎日毎日同じ事をよく書けるな」
嘘・・・もう何冊も書いたわ。
わたくしは今何歳なの?
「アレクシス、あとは頼んだぞ」
「はい」
「それと、そろそろソイツに鏡を見せても構わない」
「分かりました」
「アレクシス!早く!早く鏡を見せなさい!」
「あとで渡す」
「じゃあ俺は帰るわ。ここには二度と来ないから安心しろ」
やっと悪魔が帰る!
「そうそう、お前の姉スカーレットはルイスと結婚して3人の息子に囲まれて幸せそうだぞ」
お姉様がルイス様と?
嘘よ!ルイス様があんな姉を選ぶはずがない!
それに幸せって・・・
「すべてお前が起こした行動の結果だ。今さら後悔しても遅いんだよ!」
気が付いたら悪魔は居なくなっていた。
そしてわたくしの手には鏡が・・・
ああ、、ああああああああぁぁぁ嘘よ!
鏡に映るみすぼらしい老婆のような女は誰?
こんなのわたくしではないわ!
絶対に違う!
神様お願い!
早く時間を戻して!
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