第59話
はあ、この国の為にこれだけ動いてくれたカトリーナ様には嘘はつけないよね。
「そうですよ。なぜ分かったのですか?」
「ああ、小説のヴィクトリアは太っていてね、アレクシスの公開プロポーズに舞い上がって奴に依存した。そしてマーガレットの思惑に見事に嵌る馬鹿な子だったんだよ」
マジか!
・・・ドルチアーノ殿下の『ドブス』発言がなければ私は太ったままだったのかもしれない・・・のか?
「それでもヴィクトリアは泣き虫な男と結婚して幸せになったよ。・・・結婚してから痩せて綺麗になってね。でも・・・(夫は殺され、綺麗になったアンタはダイアモア国王への貢ぎ物にされた)」
でも?まだ何か?
そんなことよりもデブスの私が幸せになるですと!
そんな私を選んでくれた人はいったい誰なの?
聞きたい!
「因みに私の旦那様になる人はどなたか教えていただけるのでしょうか?」
「教えないよ。これだけ小説と中身が変わったんだ、その相手と結ばれるかも分からないだろ」
そうかもしれないけど!
そんな広い心の人物なら知りたいじゃない!
「じゃあ最初はドルチアーノ殿下を狙って、次はリアム兄様で最後にベニー副隊長を選んだ理由は?」
これがずっと気になってたんだよね。
「あのさ、前世で40歳まで生きていたんだよ?10代のお子ちゃまなんて興味ないし、ドルチアーノ殿下はヴィクトリアと接点を結ぶためだったし、リアムは・・・あのレベル、あれは反則だね。でも観賞用だよ」
「ではベニー副隊長は?」
「あの男は強いんだよ」
「そりゃあ第三騎士団の副隊長ですからね」
「違うよ、あの子は精神面が強いんだ。最後まで・・・そう、たとえ1人になっても敵に立ち向かう諦めない強さがあるんだ。まあ、それをバカだとも言うけどな。それに見た目もドストライクだし?わたくしが結婚できる歳には働き盛りの30歳ぐらいになっているだろ?」
「・・・女好きですよ?」
「そこは大丈夫さ、本当はわたくしが17歳でベニーと出会う予定だったんだ。その時はベニーの方がわたくしに一目惚れしたからね!・・・でも結局はあの子も戦死したんだけどね・・・」
「それとマーガレットの姉、スカーレットはあのままトライガスに残っていたらマーガレットに恨みを持つ男たちに陵辱され殺されるはずだった・・・」
お姉様が!!
「だから、そうなる前にバレリオ王太子が逃がしたんだ。名目上はマーガレットの仕出かしの責任・・・人質として来たんだ」
でも、ルイス兄様に見初められて今は幸せそうだから、悲惨な死を迎えるよりも絶対こっちがいい。
巻き込まれた他の元貴族の彼らには申し訳ないけど、彼らは自分の行動の責任を負っただけだと思えば確かに自業自得だよね。
「これで話は終わりだ。わたくしからヴィクトリアが転生者だとは誰にも話さないから安心しな。アンタの前世にも興味もないしね」
「私も転生者だと誰にも話すつもりはありませんでした」
「そうかい。それからわたくしの事はカトリーナと呼べばいい。アンタの方が身分も上だし、見た目はわたくしは子供だからね。それと口調も気軽いものでいい」
「・・・そうだよね!私の方がお姉さんだもんね!じゃあこれからもヨロシクね。カトリーナ」
「はいはい。さあ帰りなヴィクトリア様」
ずいぶん長居したようだ。
ソルト伯爵家をお暇する頃にはもう外は夕焼け空が広がっていた。
この小説の内容はお父様やお兄様たちは知っていたのだろうか?
リアム兄様はともかく・・・お父様とルイス兄様は知らされていたかもしれない。
最後までカトリーナの話しに私の家族は出てこなかった。
・・・きっと、疫病か戦争で亡くなったのだろう。
カトリーナは1人でアンドリュー王太子殿下の信用をもぎ取って、未来で起こる戦争のフラグを折ったんだね。
そして、前世の知識で疫病問題も解決できそうだし・・・彼女こそ強い人だ。
彼女の行動で何万、何十万、それ以上かもしれないけれど、沢山の命を救ったんだね。
それにしても、泣き虫な男ね~
私の周りにそんな人いないと思うんだよね。
新しく出会う人・・・なのかな?
デブスの私と結婚するような人だから、きっと泣き虫だけど優しい人なんだろうな。
もうすぐ、アンドリュー王太子殿下とアリアナ様の結婚式が行われる。
その後はルイス兄様とスカーレットお義姉様が続く・・・。
それに、学生生活もあと一年。
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