第36話 リアム視点あり
次に目を覚ました時、今度はリアム兄様がベッドの横で椅子に腰かけて本を読んでいた。
「リアム兄様・・・」
「よく眠れたかい?」
「はい」
「もうお昼だよ。昨日から何も食べていないだろ?軽いものを持ってこさせよう」
「あの・・・会話の途中から記憶がないのですが、あの後どうなったのでしょうか?」
「うん、話してあげるから先に何か食べて薬を飲んでからだよ。まだ熱も下がってないんだからね」
確かに頭の痛みは無くなったけれど体はだるい。
それに昨日よりも足首が痛い。
用意されたスープはリアム兄様が食べさせてくれた。
薬を飲んで、ベッドに横になってからリアム兄様が昨日の話し合いの内容を教えてくれた。
あの時点では昨日私を取り囲んだ生徒たちの事情聴取が終わっていなかったため、詳しい詳細が報告された後に学院から処罰が決定すること。
私に頭から水をかけた人もその中に入っており、寒くなってきたこの時期に全身ずぶ濡れになるほどの水を狙ってかけたことは悪意ある行為で処罰も重いものになること。
もちろん足を捻挫する原因になった、私の肩を押した令嬢も暴力行為として、キツい処罰が与えられること。
そして、最も重い処罰は私に木刀を振りおろし、結果ドルチアーノ殿下に怪我を負わせた子息は、いくら学院内のこととはいえ成人していた事もあり、王宮の牢に入れられたこと。
あと、どのようにマーガレット王女が関わっているかも詳しく調べられるそうだ。
・・・なるほど。
あの子達もマーガレット王女に関わらなければ、こんな事にはならなかったのに、と残念としか言えない。
まあ、それでも自分で選んだんだから仕方ないか・・・。
「ヴィーが寝ている間に何度も父上と母上が様子を見に来ていたんだよ。父上なんて腫れた足首を見て泣きそうになっていたよ」
なんか想像ができてしまう。
今は次々くるお詫びの手紙の内容に怒り狂い、あの子達の親の訪問にも断固拒否しているらしい。
「さあ、ヴィーはもう少し寝ようね」
ルイス兄様と同じように、リアム兄様も優しく頭を撫でてくれるから、また睡魔が・・・
~リアム視点~
静かな寝息をたてはじめたヴィーの寝顔を見ているとやっと心が落ち着いてきた。
それまではヴィーをこんな目に遭わせた奴らにどう落とし前をつけさせようかと次々と残忍な方法を頭に浮かべていた。
どうも僕の見た目は、優しくて穏やかに見えるらしい。
実際、僕は滅多なことでは怒ることもないし、怒りを表すこともない。
これは幼い頃からの教育のおかげでもある。
だが、敵対する者、悪意を向けてくる者には容赦する気は1ミリもない。
今回のヴィーに対する仕打ちは、僕の許容範囲を超えたものだった。
僕が知らせを受けた時にはヴィーは冷えた体を温める為に風呂に入っている時だった。
ヴィーの通された客室で兄上に聞いても詳しくはまだ分からないと、詳しく知りたいなら王太子の執務室にいるドルチアーノ殿下に聞いてこいと言われ、ヴィーのことを兄上に任せ執務室に向かった。
中には王太子殿下と頭に包帯を巻いたドルチアーノ殿下がいたが・・・
「・・・ドルチアーノ殿下、腕をどうされましたか?」
「ははっリアム殿にはバレちゃったか」
「リアムは流石だな。俺は気付かなかったぞ」
見れば一目瞭然だろ?
「腕にヒビがはっているそうなんだ」
話を聞くと、ヴィーに木刀を振りおろした場面で腕で阻止したのはよかったが、勢いに負けて頭をかすったそうだ。
ふ~ん、腕にヒビがはいる程の力でヴィーに木刀を振り下ろしたんだ・・・殺してもいいよね?
まあ、ドルチアーノ殿下の犠牲でヴィーが助かったのはありがたいが・・・まだまだだな。
「弱いですね」
「おいおいリアム、少しはドルを労ってやれよ」
「腕が治ったら、僕が直々に指導してあげますよ」
「あ、ありがとう・・・。それで腕のことはヴィクトリア嬢には黙っていて欲しいんだ。腕はちゃんと固定しているし、服の上からだと分からないだろ?」
「僕はすぐに気付きましたが?」
「その・・・優しいヴィクトリア嬢だから・・・何も悪くないのに責任を感じちゃうと思うんだ。・・・そ、それにカッコ悪いだろ?」
・・・・・・。
「二度と・・・僕は二度とヴィクトリア嬢を傷つけたくないんだ」
「・・・分かりました。ヴィーには黙っておきます」
「ありがとうリアム殿」
「ヴィーを庇ってくれたことには感謝しますが、王家にヴィーは渡しませんから!」
ドルチアーノ殿下を見てしっかりと釘をさしておく。
分かっているよ、と寂しそうな顔で苦笑いしているのは、今までのことを後悔しているからだろう。
でも、こればっかりはね。
そこへ兄上に抱かれたヴィーが入室してきた。
足首に巻かれた包帯の上からでも腫れているのが分かる。
僕と兄上の間に座り、何があったのか詳しくセリフ付きで話してくれたがこの寒さの中、頭から水をかけられ、足を捻り、どれだけの痛みと寒さに耐えていたのか・・・
そう思うと怒りで頭が沸騰しそうになったその時、隣にいるヴィーから異常な熱が伝わってきた。
もういいだろう。
話しはここで終わりだ。
抱きかかえようとヴィーを見ると瞳に涙を浮かべて『兄様、ヴィー頭が痛いの』と僕に抱きついて甘えてくる。
はぁ、うちのヴィーが可愛いすぎる!
よしよしと頭を撫でて、『兄様が連れて帰ってあげるよ』とヴィーを抱いて立ち上がると、羨ましそうな顔の兄上と、驚愕した顔の王太子殿下と・・・それから顔を真っ赤にしたドルチアーノ殿下が目に入った。
これ以上可愛いヴィーを見せまいと、さっさと退室した。
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